桜2018

昨夜の桜。谷中霊園。
週末は混むのだろうけれど、宴会禁止だからか平日夜はひっそりしている。墓地で桜を眺めることの情緒も、夜はさらに増す。
映画の中で最も好きな桜は、『ツィゴイネルワイゼン』の電話のシーン。窓の外を舞う桜吹雪がどんどん尋常じゃない量になってゆく。
Cinema memo : 春はルビッチ

去年の夜桜と、夜桜のようなワンピース。足の血管の浮き出っぷりが鳥類のようで、去年の私の栄養状態がいまさら心配。
春はルビッチ。去年の春はシネマヴェーラでルビッチ・タッチⅡに通ったよなぁ…と、天国のような日々を思い出していたら、メゾンエルメスからメールが届き、le studioの4月のプログラム、ルビッチ「生きるべきか死ぬべきか」!やっぱり東京の春はルビッチ!
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/703706/
あらすじを読んでルビッチ記憶を召喚してみたけれど、これも妻が不倫する系の物語なのに、ヘイズコード施行後のアメリカでOKだったのは何故だろう。ナチスをコケにするっぷりの洒脱さに気をとられて、不倫設定が目に入らなかったのかしらん。まさかね?
この映画、後にメル・ブルックスがリメイクしており(「メル・ブルックスの大脱走(1983年)」という邦題)、そちらも観たけれど、さっぱり面白くなかった。何故かメル・ブルックスの映画を薦められがちだけれど、何が面白いのかさっぱりわからない。それに、この物語はアメリカに渡った後、ナチスによってドイツ市民権が剥奪されたベルリン生まれのルビッチが撮ってこそ、笑いの裏にある反骨精神と切実さが胸に迫るというもの。
ルビッチ派として、断固オリジナルの「生きるべきか死ぬべきか」を推していきますよ。春はルビッチ!
さよなら日劇:ゴジラ(1984年)

さよなら日劇ラストショウについて、続き。
木曜あたりにのんびり東宝のサイトを眺めていたら、まだいくつか選択肢はあったものの、のんびりしているうちにあれよあれよと満席になり、選択肢が減った。「シン・ゴジラ」はチケットがあったけれど何度も観たからパスしたい。「ゴジラ(1954年)」は宝田明さん登壇もあり早々にソールドアウト。そうなると意地でもゴジラを観なければならない気になって消去法的に「ゴジラ(1984年)」を選択。観たことないけれど、どんな映画かな。

ロビーにはシン・ゴジラ氏。あなたのことはよく知ってるわよ…と語りかけながら場内へ。
ゴジラ(1984年)は田中健主演、夏木陽介、宅麻伸、沢口靖子などが出演。武田鉄矢も出てくる。首相役は小林桂樹。会議室のシーンが多いのはシン・ゴジラに共通するけれど、内閣総辞職ビームで全滅することもなく、首相はゴジラ鎮圧まで見届けていた。シン・ゴジラを見慣れた目には、1984年の特撮はとてもチープに思えたけれど、特撮について何も知らないので、公開当時には大変な技術だったのだろう。頻繁に登場するスーパーxが、古いSFに登場するUFOのような可愛さ。そしてシン・ゴジラに比べ、1984年のゴジラは、人間のエゴが生み出したゴジラによって人間が苦しめられ、ゴジラを倒すのも人間である、という苦々しいパラドクスに苦悩の表情を浮かべる登場人物が多くエモーショナルであった。核を巡って米ソの間に立たされるのも80年代っぽい。
そして沢口靖子。当時18歳の沢口靖子、可愛い!東宝の姫!お肌ピカピカ!だけれども、それ以上に表情のバリエーションが「緊迫した沢口靖子」「微笑む沢口靖子」「無表情な沢口靖子」の3パターンしかないことがもたらす沢口靖子の不気味な存在感が、ゴジラのそれより際立ってしまっている。その証拠に一晩寝て起きた現在、沢口靖子のことしか覚えていない。1984年のゴジラ、シン・ゴジラに比べお顔が普通というか、目がちょっと動物の子供みたいなつぶらさで迫力に欠けたせいもあったけれど、それにつけても沢口靖子。三原山の火口に落ちてゆくゴジラをヘリコプターから眺め、うっすら微笑みを浮かべる沢口靖子…で映画が終わってしまったせいか、なんだか昨日から沢口靖子のことばかり考えている。本人は右も左もわからず一生懸命なのでしょうが、30年以上経過すると怪演と呼ぶしかない演技だった。

入場時に記念にいただいたのは、ゴジラ(1984年)のフィルム。せっかくの機会に、まったく物語がわからなくてポカーンとしちゃうともったいないので、あらすじを簡単に予習して行った。ゴジラが数寄屋橋から有楽町マリオン(日劇が入っているビル)前を歩き、新幹線を弄んだ後、永田町を経由して新宿に向かう、と書かれていたので、まさに日劇ご当地映画、これを選んでよかった!と思っていたらフィルム、ちょうどその場面のもので記念度が増して嬉しい。スクリーンに映る1984年の数寄屋橋界隈は、東芝の電飾、NECの看板、2018年に観ると、東芝は息も絶え絶え、NECはリストラ、日劇は閉館するよ…万物流転、諸行無常なんである。

上映は35mmフィルム。途中、映写トラブルで一瞬ブラックアウトするフィルム上映ならではの体験。その間、場内がどよめいて拍手が起こっていたのが面白かった。バチバチ音のするフィルムで、日劇で最後にゴジラを観られたこと、きっと忘れません。
映画の中で、ゴジラは有楽町マリオンの壁を爪先で引っ掻いてガラスをいくつか割っていた。もっと破壊するのかな、と思えばそのまま通過して、JRの高架の前で停止し、新幹線をおもちゃのように弄んだ。

エンドロールの最後に万雷の拍手。興奮して外に出ると、有楽町マリオンは無傷、私も無事で、2月の空は青かった。有楽町マリオン、ゴジラと同じ、1984年にできた建物らしい。新築を破壊するのは忍びないって、窓ガラス程度の破壊にとどめ、さすがにゴジラも遠慮したのかな。
さよなら日劇ラストショウ

2月4日、85年の歴史を持つ日劇の閉館日。「さよなら日劇ラストショウ」と名付けられた閉館記念上映で、何か1本観られたら…程度の欲望だったのが、ことごとく時間が合わず、閉館日のプログラムを予約する結果に。ずいぶん気合の入った観客みたい。

有楽町マリオン、11階に日劇1、9階に日劇2、日劇3。11階に歴史解説のパネルが。

熱心な映画館通いを始めたのは京都だったので、東京で封切られた映画が京都に届くのが遅かったり、そもそも上映されなかったり、映画雑誌や本を読んでは、たくさんの映画がすぐに観られて、映画祭や舞台挨拶など華やかな東京の映画環境に憧れ、姿も形も知らない映画館の名前をいくつも覚え、溜息をついていた。上京してしばらくは多忙すぎて映画館に行く気力がなく、何年かの後にようやく行けるようになった時は、平静を装いながらも、わぁ!わぁ!わぁ!と大興奮。日劇で最初に観た映画が何だったかは覚えていないけれど、日本劇場、日本にこれだけたくさんある映画館の中でも、王様級の風格が漂う威風堂々としたその名前にうっとり。家から近い大劇場ということや、大作がかかるので友達を誘いやすいことも好きだったけれど、何が好きって、日劇という名前が好きだった。
消去法的に選んだ最後の1本は「ゴジラ」1984年版。何も知らずに観たけれど、日劇で観るのに相応しい映画だったのだな、と観終わって実感。映画については後日。パンフレット、映画の前に無事買えたけれど、映画の後に覗いてみると完売していた。間一髪。
トランプと湯たんぽ

金曜夜にジャズコンサートから帰った後は、ひたすら部屋に籠って片付けたり、家まわりの連絡をしたり(設備に不具合があり不動産屋に連絡)、28に関する連絡メールを何通も送る等、部屋着のような格好で地味にto do listを消してゆく週末を過ごした。
特に今年に入ってから加速していることに、部屋じゅうのモノが壊れる。材質的にも強度的にも壊れようがないだろう、と思っていた金属製の湯たんぽですら壊れた。小さな穴があいた)。薄ら怖くなって「モノ 壊れる 同時 意味」などgoogleに尋ねてみたら、大きな変化の前の予兆、吉兆と書かれていることが多く、買い替えで発生する面倒気分を期待で制御しようとしておる。
ロメール「緑の光線」では、浮かない表情で街とヴァカンス先を往復するデルフィーヌが、あちこちで偶然、トランプのカードを拾うという不思議エピソードが度々挿入され、彼女に訪れる変化の予兆をさりげなく示していた。デルフィーヌのトランプ、私の湯たんぽ。
シナリオ採録つきのパンフレットを取り出し、ついでにMONKEY映画特集号も。西川美和監督による「我が心のデルフィーヌ」という、「緑の光線」のデルフィーヌに触れた短篇が収録されている。この号は「永い言い訳」公開と同じ頃に発売され、この短篇はどう読んでも「永い言い訳」を連想するものだった。
終わるときは終わるし、壊れるときは壊れる。そういうものよ。壊れてもいいから、私も観たいわ、緑の光線。明日は雪らしいけれど。
海に浮かぶ映画館

今朝は、横浜へ。横浜の”どこか”にひっそり浮かぶ、海に浮かぶ映画館。今年で第5回だそう。一昨年、発見して初参加。去年はサイトの準備で身動きとれず、2年ぶり。ある駅の改札でスタッフの方と待ち合わせして、しばらく歩き、船の中へ。船内、石油ストーブが稼働しているにせよ、12月の海の上は冷えるので、全身ヒートテックで防寒して臨んだ。
海に浮かぶ映画館
https://umi-theater.jimdo.com/
私の撮った写真はピンボケ(涙)、海に浮かぶ映画館instagramにあれこれ写真あり
https://www.instagram.com/film_theater_in_the_sea/
場の物珍しさ、非日常感だけでなく、プログラミングも素晴らしく、一昨年、それしか予定が合わなかったという理由で観たのが五十嵐耕平監督「夜来風雨の声」で、初めて観る監督の映画だったけれど、とても引っかかるものがあり、その後「息を殺して」をアップリンクで観て、新作準備の往復書簡連載もしっかり読み、共同監督のダミアン・マニヴェル監督特集は神戸の元町映画館に終日篭って制覇し、今年のフィルメックスで「泳ぎすぎた夜」を観て、大感激…という一連の流れのきっかけを作ってくれた上映イベントでもある。これだけ情報がたくさんある中、たまたま時間が合って、場所が面白そうだから、という軽い理由で観た映画に導かれ、新しく好きになる監督や映画に出会うなんて、懐かしくも新鮮だった。
今年は大好きなフレデリック・ワイズマン監督「ミサイル」がかかると発表された時から、手帳にメモ。16mm上映で、フィルムチェンジが途中3回もある!という、今時とても珍しい上映形態。そんな経験、これまでしたかどうかも思い出せないから、ノスタルジアを感じることもないけれど、映画上映の歴史の本など読んでいると、フィルムチェンジに触れられている箇所もあり、本で読んだあれを私もついに体験!という興奮。
1987年の映画ながら、なにしろ2017年まさかそんな単語を聞いたり使ったり慣れたりするとは思いもよらなかったランキング上位の「ミサイル」を主題にした映画を、年末にタイムリーに観られ、幸せな映画ではないながら、この上なく贅沢な時間を過ごした。
山形で観たワイズマン新作「エクス・リブリス」についても何も所感をメモしていないので、「ミサイル」と合わせて何かしらメモせねば。
来年もまた海の上で映画を観られますように。
台湾シンクロ

映画祭が始まるので?身だしなみを整えるべく、仕事帰りに美容院へ。渡された雑誌をずっと読み、ふと顔を上げると、鏡に窓の外の夜空とネオンが写っていた。あ、視界が「台北ストーリー」みたい。1985年の台北では富士フィルムの、2017年の銀座ではHaierのネオンが夜空に。やがてみんなフィルムで映画も写真も撮らなくなるって、中国の家電メーカーのネオンが銀座に輝く日が来るって、1985年には誰も思いもよらなかっただろう。
ネオンのシーンを確認するために、買ったまま積んであった「台北ストーリー」のパンフレットをめくったら、最後に主演の侯孝賢と、共同脚本の朱天文の対談が掲載されており、台湾ニューシネマの始まりの頃、(エドワード・ヤンも含め)いつも一緒にいては映画の話をしたという侯孝賢の言葉の次に、朱天文が、私たちはよく”明星珈琲館”というカフェでいろんな映画の話や企画の話をしました。そしてヤンさんの家で多くの外国映画を観ました。と語っていた。
明星珈琲館、台北の老舗ロシアカフェ。昨日の日記に書いたばかりという台湾シンクロ。エドワード・ヤン的スポットでもあったらしい。珈琲とお菓子をオーダーしただけなので、次に行ったら食事しようと思う。
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