RIVER
空気は冷たいけれど、光に春が混じりはじめている。など思いながら皇居のお濠あたりを歩いていると、イヤフォンからtofubeats『RIVER』が流れてきた。
Spotifyによると2018年、私がよく聴いた曲ランキング第3位は『RIVER』らしいけれど、映画『寝ても覚めても』の主題歌に決まった、と公開前に情報が流れてきた後、映画を楽しみに確かに何度も聴いたけれど、映画を観てからはあまり聴いていない。
『寝ても覚めても』の本編が終わり暗転した後、すぐに『RIVER』が流れてくると、私による私のための私だけの余韻に私の気の済むまで浸っていたいのに、隣にいるシュッとしたメガネ男子(架空)が観たばかりの映画の主旨・戦略・要点・自論を理路整然と語り始めてしまって興ざめするような、ちょっと黙っててくれないかなぁって気分になりませんか。って誰に話しかけてるのかわからないけれど、私は少しそんな気分になった。
こちらのインタビューを教えてもらって読んでみたところ、
https://www.pola.co.jp/we/digital/tofubeats01/
ああ、「国語の問題は文章の中に絶対答えが書いてあるねんから、絶対100点とれるんや」思想で作られた主題歌に、「それはあなたの答えであって、私のではない」って抵抗したくなるよね、と少し腑に落ちた。
しかし年明けにテアトル新宿で3度目の『寝ても覚めても』を観ると、これまでより『RIVER』への抵抗が薄れていたのは、それまでヒロイン・朝子さんの気持ちで観ていたけれど、3度目ともなると俯瞰で物語を捉えるようになって、朝子の行動も周囲の反応も、♪きっと目に映るすべてのことはメッセージ〜♪って思えたからかもしれない。同じ映画を何度観るのは楽しいこと。自分も変化するから。
テアトル新宿
東京での映画初めはテアトル新宿の2018邦画大忘年会という上映会で。昨年公開された濱口竜介監督『寝ても覚めても』を。上映後に監督と主演の東出昌大さんが登壇されて長めのトークがあった。
映画は3度目の鑑賞。あまりうまく感想をまとめられていないので追って書くとして、この日のトークについて。監督からも東出くんからも、七草粥も食べないうちからありがとうございます。新年あけましておめでとうございます。と客席に言っていただいたので、今年は良い年になる気がします(単純)。
映画の解釈を監督に問いかける質問(あの場面、私はこういう意味だと思ったのですが、合ってますか?…といった内容)に、監督は解釈は観た人の数だけあるので正解も不正解もない、という答えだったけれど、それを聞いた東出さんが「監督は絶対にあれはそういう意味なんですよ、と解釈を言わない人なんです。俳優陣も自分が出演していない場面について質問したりしたけれど、教えてくれないんです。例えば…」と、質問した人ががっかりしないよう華麗なフォローをされていた。七草粥も食べぬうちに、好青年of the year 2019、もう決定か。
東出さんは質問への受け答えも当意即妙で、豊かな語彙の海にざぶんと飛び込み、最適の表現を拾って答えられる、きっと読書家なのだろう、話した内容を文字起こしするだけでそのまま記事になりそうな、日本語文法も完璧の印象の人なのだけれど、徐々に、まるで台詞を暗記してその場にいるみたい、「主演映画のQ&Aに登壇し答える東出昌大」の役を演じているみたい、そんなはずないのに、という不気味な気持ちが増してくる人でもあって、まったく、『寝ても覚めても』の麦/亮平の二役をどちらも演じられるのは、きっとこの人だけだっただろう、と思った。
昨日テアトル新宿 @theatreshinjuku で行われた『#寝ても覚めても』#濱口竜介 監督& #東出昌大 さんのティーチインイベントの様子です。新年早々100名以上の方にご覧いただき、昨日は満席立ち見!初めての方ももう何度もご覧下さった方も2人にたくさんの質問を頂きました!寝ても覚めても感謝✨ pic.twitter.com/3yRUWPz0w3
— 映画『寝ても覚めても』 (@netesame_movie) 2019年1月7日
この日は三つ揃えのスーツを着ていらして、写真では写っていないけれど、ジャケットの裏地が凝っていた。衣装なのか自前なのか不明だけれど、どこのブランドだったのかな。
映画の裏話で面白かったのは、原作では登場人物たちの周囲にあるテレビの画面に何が映されているかが描写されており、例えば同時多発テロのニュースなど、が登場人物の生きる時代をあらわす道具として有効に使われていたけれど、映画撮影においてテレビ画面を表現するとなると、映される番組そのものを作る必要があり製作上大がかりになってしまう。そのため、映画ではラジオ音声にその役割を担わせている。ラジオ音声は『ハッピーアワー』に出演している男性の音声(関西で番組を持っているパーソナリティの人…と言っていたような…うろ覚え)、『ハッピーアワー』と『 寝ても覚めても』どちらにも出ている唯一のキャスト、とのこと。以上、メモ。
新連載 CINEMATIC,COSMETIC 第1回「まだ見ぬ宝物のためのネイル」
Cinema Studio 28 Tokyoの新年は、華やかな(当館比)新連載からスタート。
「CINEMATIC,COSMETIC」は映画とコスメ、ふたつの成分を配合し綴られるリレー連載。第1回はグラフィックデザイナーのayaさんに登場いただきます。
ayaさんから映画のお話を伺うと、「あの映画のこんなビジュアルを目にしたから、○○を準備して公開を待っていた」、というフレーズがたびたびあって、ayaさんならではの映画への待機姿勢があることが興味深いのです。
映画を観る時間はもちろん、情報のかけらを拾って待つ時間も、余韻をひきずる時間も、何年もあとに不意にヒロインの横顔を思い出す時間も、「映画の時間」ってきっと、その全部の合計なのでしょう。
CINEMATIC,COSMETIC 第1回「まだ見ぬ宝物のためのネイル」、どうぞお楽しみください。
ロケ地
年末の不忍池シリーズ。スカイツリーと、スワンボートのお尻。
昨夜、帰宅して録画しておいた大河ドラマ『いだてん』初回を観てみたら滅法面白く、1年間完走できそうな気になった。オープニングに山口晃さんの絵が使われているなど、隅々まで豪華。日本橋に浅草、羽田、馴染みのある場所が登場するのも楽しい。東京の街並みがどんどん変わっていく経緯も観られるんだろうな。
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
天狗倶楽部の面々、呆気にとられながらも大変キュートであるな、と思ったけれど、彼らが初登場する場面で映っているクラシカルな洋館、どこかで見覚えが…と思い出してみたら、パク・チャヌク『お嬢さん』に登場した三重県桑名市の六華苑だった!
こちらの記事がとても詳しい
https://www.naka.tokyo/rokkaen-kuwana-mie/
桑名市、映画撮影に協力的
和洋折衷の館、時折出会って中に入るととても落ち着くので(例:谷中にある朝倉彫塑館など)、何かしら私の嗜好を満たす要素があるのだろう。数多の映画ドラマの舞台となったとならば、六華苑にも帰省の折にでも行ってみたい。メモ。
search/サーチ
冬の不忍池、枯れた蓮。足を踏み入れてはいけない場所に来てしまった感を味わえる、あちらとこちらの境目のようなところ。
映画初めに出町座で観た『search/サーチ』、全編PC画面上で物語が進行し、facebookやinstagram、youtubeなどSNSが主役のように登場する映画ということで、楽しみにしていた。パソコン通信を題材にした1996年の映画『(ハル)』が、現在観るとノスタルジーに溢れているように、こういう題材の映画は公開時にビシッと観ておくのが正解だと思う。映画館でそれなりに大勢の人と一緒に観たけれど、しばらくして配信される頃、PC画面で観るのも臨場感ありそう。
母親が亡くなり、父ひとり娘ひとりになったアメリカに暮らす韓国系の家族。娘と連絡がとれなくなり、父親は血眼で娘を探し始める。家族共用で使っていたPCを娘のアカウントでログインし、鍵のかかったSNSアカウントにも次々にログインすると、知らなかった娘の一面が明るみになり…という物語。
題材は現代のものだけれど、謎めいた手がかりをもとに娘の行方を追う展開はクラシカルなミステリー、というバランスが見事で最後まで一気に引き込まれた。監督は元Google勤務、マイケル・ナイト・シャラマンに影響を受けたインド系の20代というプロフィールも面白い。次にどんな映画を撮るのかな。
十分に気を配って生きていても、他者から自分に寄せられる好意も悪意もコントロールできない、という事実の再確認を含め映画は存分に楽しんだけれど、この物語の場合は父親がITリテラシーの高い人物であることが事前に描かれていたので、娘のSNSパスワードを鮮やかに解読していく場面も違和感なく受け入れられたけれど、あの手法を使えば誰かに私のパスワードもあっけなく解読されるだろうことを目の当たりにして薄ら恐ろしい。
それから、あっけなく自分がいなくなってしまった後、金融機関への手続きなどは家族が担ってくれるのだろうけれど、私の不在を私を知る人々にどうやって誰が伝えるのだろう、私の周りにおいては私しか話さない言語でのみ繋がっている長い友人もいるのに、と不意に考えてしまった。先回りして身の周りを整えるべし、と気を引き締められた点においては案外、年初に観るのに相応しい1本だったのかもしれない。
映画初め
1月3日。映画初めは京都・出町座。
前身の立誠シネマ閉館は残念だったけれど、出町柳界隈に映画館ができるの、便利でありがたいと思う人は多いのでは。高校時代、毎日出町柳で乗り換えていたので、あの頃にあったなら放課後に通い詰めていたと思う。
元町映画館(神戸)に行った時も商店街の中にあるのがいいな、と思ったけれど、出町座も出町商店街の中にあって、生活感漂うのが良い。豆餅で有名な「ふたば」からも徒歩2分。
中は広くはないけれど映画館は地下と2階、1階はカフェと本屋。映画本が充実していた。勝新の対談集、買おうとしてやめたけれど、未読本を読み終えたら読もう。
映画初めは、見逃していた『search/サーチ』を観た。
ボヘミアン・ラプソディ
12月30日、快晴と日比谷公園。TOHOシネマズ納め。クリスマスを過ぎてからお正月に向かうまでの数日が、クリスマスよりお正月より好き。風は冷たいけれど光に白さが混じって、次の季節は春だな、と思う。いろんなものの間にある数日。
噂の『ボヘミアン・ラプソディ』、日比谷のIMAXで観てきた。IMAXで観るために新宿まで行かずに済むようになったのは今年の良いこと。IMAXって上映前にやたらIMAXの魅力を語る映像が流れるのが、ちょっと不思議というか、すでにIMAXで観る気満々で500円余計に払ってるのに、いまさらIMAXの宣伝をされましても…?という気分になる。
QUEENについては何一つ詳しくなく、何の予習もせず行ったけれど、私のような門外漢でもメンバーの名前も、フレディの死因も、代表曲のメロディも知ってるあたり、全世界的知名度とはこのことか。物語はあっさりした音楽伝記もの、という感じで、初心者の私にも親切なつくりで、熱心なQUEENファンなら知ってるよ!って感じなんでしょうかね。『カメラを止めるな!』にしても『ボヘミアン・ラプソディ』にしてもヒットする映画って、普段そういう映画を観ない層にも親切丁寧なつくりをしていて、誰も対象外にしない間口の広さがあるな、と思った。好きか嫌いかは別として。
映画は最後のLIVE AIDの20分でクライマックスを迎え、あっさり終わるけれど、LIVE AIDの熱狂を生むために、それまで名曲が生まれる瞬間は描くけれど、その都度フルコーラスで聴かせない、え、そんなドラマティックに生まれたなら丸ごと聴かせてよ?という欲求不満を抱かせつづけ、LIVE AIDで一気に不満を解消させる作戦が功を奏しており見事だった。
日比谷を出たあたりではQUEEN熱にそれなりにうかされていたけれど、しばらく経つと弁護士からマネージャーになるマイアミさん(ジム・ビーチ)最高だったのでは…?理知的だけどここぞのところで情に厚く誰よりQUEENのファンでお茶目な英国紳士、最高のキャラでは…?『ボヘミアン・ラプソディ』は一度でいいけど、マイアミさんのスピンオフなら観たい!
日比谷では”胸アツ”応援上映という回もあるらしく、どんなテンションなのか怖いもの見たさで覗いてみたいけれど、私が参加するならキャー!マイアミー!!って黄色い声で叫びたいです。
http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/
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