Happy Holidays
帰宅するとポストに赤い封筒。LAのりえこさんからカード!暖かいところのペンギンは陽気な感じね。来年はペンギンもCinema Studio 28 Tokyoに登場してもらいます。
読んでいないけれどBRUTUSが最近「いまさら観てないとは言えない映画。」特集を発売していたけれど、
https://magazineworld.jp/brutus/brutus-859/
私はクリスマス映画の名作と呼ばれる、「素晴らしき哉、人生!」を観たことがありません。タイトルからして心温まる物語なのかな…と妄想して、勝手に敬遠している。毎年、街がイルミネーションで煌めき始めると、今年こそは観るぞ…と一瞬思うけれど、「軽蔑」などを観ているうちに見逃してしまう。縁がないのだと思う。
何かの映画を観てないってことは、その間、何か別の映画を観てるってことだから、それこそが私と映画の縁なのだろうな。縁なのだから、無理することはないの。
どの街の皆さまも、素敵なホリデーシーズンをお過ごしください。
軽蔑
早稲田松竹で観た「軽蔑」について。
公式より、あらすじ。
http://mermaidfilms.co.jp/keibetsu/
劇作家ポールは、映画プロデューサーのプロコシュに、大作映画『オデュッセイア』の脚本の手直しを命じられる。そんな夫を、女優である妻カミーユは軽蔑の眼差しで見つめていた。映画のロケのため、カプリ島にあるプロコシュの別荘に招かれたポールとカミーユ。ふたりの間に漂う倦怠感は、やがて夫婦関係の破綻を導き、思いがけない悲劇を生む……。夫婦の愛憎劇と映画製作の裏話を交差させながら描く、美しいほどに残酷な愛の終焉。
映画製作ものでもある。フリッツ・ラングがフリッツ・ラングとして登場していること。ジャック・パランス演じるアメリカ人プロデューサーが金と権力にものを言わせる典型として描かれ、ラッシュを観ながら全裸の女が登場すると悦びで奇声を発すること(すごくアホっぽく描かれてる)。撮影中の「オデュッセイア」がどう考えても駄作だろうってこと。彼のフィルモグラフィの中で最も色気のあるミッシェル・ピコリ。怪訝な表情は演技というより、アンナ・カリーナの真似事をさせられることへの不満なのではないか、と疑わしいブリジット・バルドー。は?あたし誰かわかってんの?BBやで?なんなんこのカツラ?という叫びが聞こえてくるようである。夫婦のファッションはそのまま今年のagnes.bの新作でも不思議ではないタイムレス感があること。彼らを包み込む海辺の崖に建つ名建築マラパルテ邸。見所は目白押しで、ゴダールの中でもかなり分かりやすい1本と思う。
妻が不機嫌になる瞬間とその理由は私にはよく理解できたけれど、私が女だからなのかしらね。バルドーのきつく跳ね上がったアイラインが、軽蔑!の表情を効果的に強調していた。ジョルジュ・ドルデューの音楽は美しいけれど、バルドーが登場するたびに流れるのが吉本新喜劇の出オチのギャグみたいで、次第に可笑しくなってくる。
久しぶりに「軽蔑」を最後まで観てみると、ゴダールってどの映画を観ても女の扱いが雑で、触り方も乱暴だし、意思疎通がうまくいかないとひっぱたき、挙げ句の果てに拳銃を持ち出して騒ぐ。子供か、と思いますね。
写真はパリ、シネマテークの本屋で買った原作本。2ユーロとは安い。
夢か現か
夏、ピアニストの友人と映画の話をしていたら、武満徹の映画音楽の話になり、友人が読んだ武満映画本が面白かった、とのことで、!!!と思っていたけれど何もアクションせずにいたら、本日送られてきた。ありがたや…。
映画随想 夢の引用/1985年/岩波書店。章ごとのタイトルの巧さといい勉強になるぅ!お見事!そしてパラパラして思うことに、鈴木清順、デヴィッド・リンチ、ファズビンダー、フェリーニ、「日曜日の人々」…武満徹の映画の好み、私の好みそのまんまで、ファズビンダーだと「ローラ」はいまいちで、俄然「マリア・ブラウンの結婚」でしょう?と細部に至るまで頷くことばかり。思わず送ってくれた友人に「もう今すぐにでも武満徹と飲み明かしたい」って送ったら「その飲み会、私も呼んで」って返事が届いた。みんなであの世で待ち合わせである。
ブルーの付箋を貼ったのは、鈴木清順に触れているくだりの注釈で、鈴木清順の著書に「夢と祈祷師」という一冊があり、「これを読むと『ツイゴイネルワイゼン』での挿話が、どのようにして生まれたものであるかが解って、興味深い。」と書かれており、「夢と祈祷師」ってタイトルだけでもう読みたいわ。武満本を読み終わったら、清順本だな、と思った次第。
夢といえば、今年、やたら夢に登場する実在の人物がいる。夢の中では親密だけれど、現実での距離は特に縮まるわけではない。夢って何なのかしら…というパラレルな日常。そのあたりも武満さんと飲んだ際には議案として取り上げたい。
本棚
りえこさんからいただいた、LAでの台湾ニューシネマ特集のポストカードサイズのチラシが素敵で、本棚の中華圏ゾーンに飾る。北京や台北で買った本もいくつか。台湾ニューシネマのビジュアル、どの国、どの言語でもセピアがかったノスタルジックなデザインになる傾向にあるのが面白い。
ついでに、映画本が増えたので並べ替え。本好きの人には、本だけは治外法権的に増殖することを諦めまじりに許可する、という人も多いけれど、私は収容場所の上限をあらかじめ決め、溢れるものは処分していくタイプである。ごく稀に後悔するけれど、それよりも自分にとってフレッシュなものだけ選んで所有することの気持ち良さが勝る。
夏から続けている持ち物の整理、このところ気分が加速し、段ボール数箱単位で毎週部屋から物が消えてゆく。いま6合目あたり。年内には終わらないので、旧正月までに10合目に到達したいところ。
memorandom.tokyo新連載スタート
webマガジン memorandom.tokyoで新連載スタートしました。タイトルは「One book, One movie」。
映画関連本も原作本も登場しない、映画と本のお話。意外な映画と意外な本が手を繋ぐこともあるかもしれません。
あれ?と思われた28読者の皆さま、そうです。Cinema Studio 28 Tokyoで小栗誠史さんに連載いただいている「One movie, One book」と切り口が同じ。
映画も本も広く深い海のようにざぶざぶとしたもので、飛び込んでどんな貝殻を拾ってくるかは潜る人次第。2つのサイトの2つの連載、どちらもお楽しみいただければ嬉しいです。
小栗さんの第1回はこちら。私の第1回とは映画がどちらもアメリカのドキュメンタリーという点だけ共通していました。
https://cinemastudio28.tokyo/onemovieonebook_001
そして小栗さんのお店、鎌倉にある古書ウサギノフクシュウ、10/29、今週日曜に残念ながら閉店してしまいます。ウサギファンの皆さまも、ウサギ未踏の皆さまも、あの場所がなくなる前にどうぞお出かけくださいませ。
One book/One movie、タイトルを反転させるアイディアは、ふと思いついたようで、振り返ってみるとホン・サンス「今は正しくあの時は間違い」から影響を受けているのではないかしら。
http://2015.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=155
この映画、前半と後半、同じ設定、同じ登場人物の物語が反復するけれど、些細なズレによって違う結末に至るのです。それぞれの冒頭に差し込まれるタイトルが「今は正しくあの時は間違い」「あの時は正しく今は間違い」ってハングルで書かれているらしく。
と、いろんな映画の話をしてしまったけれど(映画祭期間中だし!)、ふたつの連載、お楽しみいただければと思います。
ベッドの上のビートたけし、渋谷のワイズマン。
焼失・映画館
東京はグッと気温が下がり冬のよう。衣替えも済んでいなくて、秋の服装にクローゼットで目についたカシミヤのカーディガンをひっかけ家を出る。軽くて薄いのにぬるま湯に浸かるような暖かさで、山羊さん…ありがとう…。昨日、長い小説をひとつ読み終えたので、他に借りてあった文庫本を鞄に入れた。
山形で最後に観た映画は、山形県酒田市にかつてあり、焼失したグリーンハウスという映画館についての証言集。会場となった山形美術館のロビーでは、在りし日のグリーンハウスで配布されていた「GREEN YEARS」というリーフレットが宝物のように展示されていた。
映画を観て興味を持ち、「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」という本を読み始めた。
私が映画だけではなく、どこで観たか、映画館についてもなるべく記録するようにしているのは、そこに通うことが私の日常の一部で、けれど失われやすい場所だと知っているからです。
女が身ひとつになるシリーズ
部屋の片付けに弾みがついてきて、片付けハイの状態にある。あっさり手放せるものとそうじゃないものの境界線はどこにあるのか、まだ説明はうまくつかない。映画に関するものも、賞味期限が過ぎたものは手放しているけれど、本も資料も何年ぶりかに触ってみると、それを大事に手に入れた時の自分も同時に思い出し、懐かしくも面倒。そういう種類の湿り気、苦手なのよね。
「スタージェス祭」のパンフレットは捨てない組。1994年に渋谷で特集上映(と言っても3本)された時のパンフレットで、3本分のシナリオも採録されて豪華。もちろん上映には行っておらず(そもそも東京に住んでいない時期)、古本屋かオークションで手に入れたもの。このクラシック上映は監督別にシリーズ化していたようで、大切にしているルビッチのものもこのシリーズ。パンフレットのデザインがいいね、と思ったらコズフィッシュが手がけていた。
プレストン・スタージェスはハリウッドのコメディ監督。スクリューボールコメディの名手と呼ばれている人。ルビッチほどでないにせよ大好きな監督で、シネマヴェーラなどでクラシック特集があった際は、ラインナップにまずスタージェスの名前を探す感じ。このパンフレット、片付け祭の合間に手に取るにふさわしく、3本のうち1本「パームビーチストーリー」は、女が身ひとつになるシリーズの系譜なんである。
「パームビーチストーリー」はいくつか邦題がある映画で「結婚5年目」と呼ばれていたりもする。名の通り、結婚5年目の夫婦が倦怠期に陥り、もうイヤ!と妻が身ひとつで家を飛び出し、やがてまた戻るまでの珍道中。この映画の清々しいところは、まさしく身ひとつである点で、お金も持たずにとりあえず駅に向かって走り、改札では周囲のおじさま方に色目を使って入場、そのまま電車に乗っちゃう。銃を乱射する過激なおじさま集団と触れ合ったり(電車と銃はスタージェスの常連アイテム)、御曹司に見初められ贅沢三昧を味わったり、片付け本によくある、新しい何かに出会いたければ、何かを捨てなければならないのです的セオリーを王道でいく展開だけれど、この妻は美貌と愛嬌で難事をくぐりぬけながらも、モノにはさっぱり執着なさそうなのが最高。スタージェスの女たち、みんなカラッと陽性でかっこいいの。
片付けの息抜きにパラパラ開いてみたら、中野翠さんのエッセイがあり、スタージェスの魅力がしっかり書かれていて同意しきり。
プレストン・スタージェスのどこが一番凄いかというと、タメを利かせないところである。ものすごく凝ったセリフや卓抜なギャグがギッシリと詰まっているのだが、セリフとセリフの間の余白や空白はギリギリに切り詰められているし、”思い入れたっぷり”みたいな場面は極力排除されている。タメを利かさずに、ひたすら先を急ぐ。しんみりしたり、ほのぼのしたり、うっとりしたりしているヒマもなく、どんどんどんどん先へ進んでしまう。(中略)こういうタメを利かさないコメディというのは、嫌いな人は嫌いだし、好きな人は好きである(当たり前のようだけど)。私は、こういうコメディのほうが、何か、下世話な道徳性とスッパリ手を切っているようで、爽快痛快に感じてしまう。コメディというのはテンプラのようなもので、カラッとしているほど上等だと思う。説教や人生訓といった不純物の多い油で揚げちゃあ、ダメなのよ。
そうなのよ!あー、言いたいこと書いてくれててスッキリした。そして明日のお昼は、会社の人たちとテンプラ食べに行く約束なの思い出した。初めて行く店だけれど、カラッと上等なテンプラならいいなぁ。
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