ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

土曜日、イメージフォーラムで。
フレデリック・ワイズマン監督、2015年の作品『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』。
通りを歩けば英語以外の言葉がたくさん聞こえる。世界中からの移民とその子孫が暮らし、167もの言語が話され、マイノリティが集まり、エスニックな味と多様な音楽があふれる町、ジャクソンハイツ。「ここがニューヨーク?」と聞きたくなるけれど、実はニューヨークがニューヨークであるために、なくてはならない町だ。その理由は?そして今、その町のアイデンティティーが危機に瀕しているとしたら?
何年か前の東京国際映画祭で上映されたのを見逃し、ロードショーでは観られないだろうと思っていた1本が公開された。長い間、待ちわびていたわりには映画が始まると、静かな室内から外の景色を見るような気持ちでスクリーンを眺めた。ニューヨークで撮られていながらほとんど英語が登場しないという状況は、東京に暮らしながらもコンビニに入ると異国語しか聞こえてこないことも珍しくはない昨今、世界中どの街でもさほど珍しくはない、と思えたからかもしれない。とはいえ、ジャクソンハイツはとりわけカラフルだったけれど。
ラスト近くに登場した様々なルーツを持つ人々にタクシー運転手になるための知識を教える講座のシーンに魅了され、映画全体の印象が上書きされた。街の多様性を下支えするホスピタリティ溢れる、あの先生。人種も年齢も入り乱れる生徒たちの顔を一様に学ぶ喜びで輝かせていた、あの先生こそジャクソンハイツのヒーローだったと思う。
ワイズマンの映画、編集でシニカルなオチをつけるものが多い印象で、どうやって終わるんだろう?と思いながらいつも観ていたけれど、『エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館』(2017年/来年、日本で公開されるとのこと)も、この『ジャクソンハイツ』も、それまでの映画の時間を優しく抱擁するような音楽で物語が閉じたのは、御年88歳のワイズマンの心境の変化なのだろうか。
イメージフォーラムでの上映は12/14(金)まで。
http://child-film.com/jackson/
東京フィルメックス/Ash Is Purest White

東京フィルメックスで観た映画について。ジャ・ジャンクー最新作『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』。ポスターを写真に撮ったつもりが、撮り忘れていたので、チケット購入時に役立ちそうな有楽町朝日ホールの座席図を。私のベスト座席はG22です(メモ)。
ヤクザな稼業で金を稼いでいるビンと、その愛人チャオ。裏社会に生きる男女の18年間にわたる関係を山西省、長江流域、さらに新疆にまで至る壮大なスケールで描いた作品。これまでのジャ・ジャンクー作品の集大成とも言える傑作。
https://filmex.jp/2018/program/specialscreenings
ジャ・ジャンクー自身の出身である山西や、『長江哀歌』の舞台になった三峡ダムなど、過去作に登場した土地を巡礼し未知なる土地(新疆)に向かってゆく、集大成のような映画。ヒロインはもちろん公私ともにパートナーであるチャオ・タオ、急成長する中国、戸惑いながらも逞しく生き抜く人々、歌謡曲、ジャ・ジャンクー映画を成立させている要素が親切に盛り込まれている。
だからということか、どの場面にも展開にも既視感があり、開始20分でジャ・ジャンクー映画にすっかり飽きている自分を発見した。監督の名前を闇雲に信頼して、惰性で映画を選ぶのもよろしくない。フィルモグラフィーを改めて眺めてみれば、時系列に追いかける中で鑑賞後の興奮がピークに達したのは『長江哀歌』で、その次の『四川のうた』では巧みさがやや鼻につきはじめていたように思う。
中国という国とノスタルジアは私にとっても不可分だけれど、あっという間に驚異の近代化を遂げてしまった現在の中国を撮った映画で気持ちよく呆気にとられたい。去年のフィルメックスで観た『とんぼの眼』のような。もっと見知らぬ監督の映画を観てみよう、と心に誓ったのであった…。
https://filmex.jp/2017/program/competition/fc06
白夜

ブレッソン『白夜』35mmフィルムでの日本最終上映とのこと、いそいそとユーロスペースへ。
http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000305
長らく日本で公開されていなかった『白夜』、留学先のパリでこの映画を観て忘れられなかった方が、配給会社を立ち上げて公開にこぎつけてくださったロマンティックなエピソードに痺れながら観たのは2012年。あれから6年経って、映画が始まるとすぐにバチバチとフィルム特有の音が鳴り、次に「字幕:寺尾次郎」とお名前が映され、6年の月日、あっけないようで案外長いのだった。
夜のセーヌ河を渡る船で演奏される印象的な音楽以外にも随所に音楽が溢れ、私の記憶の中の『白夜』はストイックな物語だったけれど、久しぶりに目にするそれは、伸びやかな音楽に溢れた、ずいぶん若い映画だった。ジャックとマルトの4つの夜も、ひりひりした気持ちで観ていたけれど、今観ると、どんな結末になろうとも、まるごと可愛らしい、小動物の戯れのように思われた。
最近ようやくヴィスコンティ版『白夜』を観て、美しい映画ではあったけれど、主演のマストロヤンニの若い頃の映画、という以上の印象は持たなかった。ブレッソン版を断然指支持するのは、主演の2人を他の映画で見かけたことがないからかもしれない。彼/彼女がジャック/マルトのまま、『白夜』に閉じ込められたまま記憶に残り続ける、という種類の贅沢。
ブルーレイが出たことは知りながら、手を出す気には今のところなっていない。ユーロスペースで観た時間ごと真空パックにして時折、引き出しから引っ張り出しては、ああ、また観たいなぁって焦がれるのが似合う映画だと思う。配給してくださった方も、長くそんな気持ちだったのかな。
ユーロスペースで、12/5(水)まで。
Cinema memo : 12月

東京国際映画祭で観た映画をメモし終わる前に、フィルメックスが始まってしまった。映画の記憶にさらに映画の記憶が重なり脳内でミルフィーユ状態ですが、徐々にメモしてまいります。
今週、心乱れることが多々あったので、心の平安を求め、すみだ水族館へ。友人知人同僚のみなさんから、なんか今、ペンギンの選挙やってるよ?と多々お知らせいただいていた「LOVE推しペン超選挙」の投票に行ってまいりました。
今日で終わってしまったけれど、サイトがめちゃくちゃ可愛いので永久に残してほしい…。
https://www.sumida-aquarium.com/oshipen/
規模は小さいけれど熱いペンギン愛を感じるすみだ水族館、毎年のようにペンギンの赤ちゃんが生まれてる。来るのは3回目。40羽以上いるペンギンの個体差を見分け名前をつけてキャラクターや好物を把握する飼育員さん、すごい。
水槽を眺め、どの子がどの子がいまいち見分けられなかったので、選挙ポスター?にあるキャラ紹介をしっかり読み、「きりこ」くん(オス/1歳)に投票。最年少というのと、礼儀正しく順番を守るタイプというのが良いな、と思って。

投票結果発表をハラハラ見守ることとします。

久しぶりにすみだ水族館に行ってみて、驚いたのは、ペンギンの鳴き声、大きいな!ということ。こんなに鳴きまくるイメージはなかった。鳴き声に驚いて短い動画を撮ったのでよろしければどうぞ⇩
さて、フィルメックスが終わればもう12月。突然、ブレッソン『白夜』上映のニュースが。
11月24日(土)~12月5日(水)@ユーロスペース
https://www.facebook.com/byakuya35mm/
35mm上映は最後になるだろう、とのこと。今年ヴィスコンティ版『白夜』をDVDで観たけれど、ブレッソン版のほうが俄然好みだったな。
早稲田松竹では、ホン・サンス4本を1週間日替わりで上映。夏の記憶がもはや薄いので、もう一度全部観たいなぁ。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/hongsangsoo.html
フィルメックスでも新作2本上映され、今年は東京でホン・サンスを6本も観られる濃厚で贅沢な1年だった。
それからフレデリック・ワイズマン上映はアテネ・フランセでPart2が12月〜来年2月までかかるもよう。
http://www.athenee.net/culturalcenter/
観る前に気合注入が必要な『臨死』358分もかかる!
アテネ・フランセ文化センター、その場でチケットを買うしかなく整理番号順なので、私は早めに行ってチケット確保し、エレベーターで地下まで降り、カフェテリアで読書などして待つことが多いです。カフェテリア、勉強している人が多いから静かに集中できて良い。文化センターの会場内は傾斜が少ないので、混まなさそうなら前方通路側、混みそうなら後方通路側、あと両サイドに補助席のような椅子(パイプ椅子よりは座りやすい)が並んでいて、案外観やすい。常連の方は、サイド椅子を目がけて席確保する感じもあって、人気の席なのかもしれない。
とりとめもなく、12月のメモ。今年の東京はまだ暖かく、コートの要らない気温が続いているので、もうすぐ12月だなんて、ちょっと信じられない。
病院

フレデリック・ワイズマン特集にて。アテネフランセ、平日の夜というのに、半分以上客席は埋まっており、ワイズマンは人気だな。
http://www.athenee.net/culturalcenter/program/wi/wiseman_part1_2018.html
『病院』(1969年/84分)を鑑賞。
ニューヨーク市、ハーレムにある大きな都市病院、メトロポリタン病院の活動を緊急棟と外来患者診療所に焦点を当てて記録した作品。都市病院に運びこまれる様々な患者とその処置をする職員とのやりとりを通して都市が抱える多くの問題を浮き上がらせる。
今年の半分は予期せぬ病院通いが続いたため、私にとって身近な被写体として『病院』を観ることにした。自分に施された先端医療、改築したばかりのピカピカの病棟に圧倒されたばかりだったから、1969年の病院の医師や患者たちのワイルドな表情、まさに前時代的な設備や治療法、現在とのギャップに、50年かけて医療が格段に進歩してくれたことに感謝した。手術のシーンもあるけれど、モノクロだからか生々しさをさほど感じない。カラーだったら目を背けるはずで、血の赤って鮮烈な色なのだな。
「公園で渡された謎の薬を飲んだ」というアートスクールに通う若者が、薬と大量の水を摂取し、盛大に嘔吐する。あんな嘔吐はフィクションでは撮れない。フィクションが嫉妬するあまりにも映画的な嘔吐だった。しきりに死への恐怖を口にする若者→いなす医師→嘔吐する若者の無限ループ。死をそんなに恐れるならば「公園で渡された謎の薬」なんて飲んではいけない。そして、ただでさえ辛いのに、50年後の観客に人生最悪かもしれない一夜をいつまでも再生され目撃される若者が不憫。意識朦朧としたところをつぶさに撮られるなんて私なら拒否するし、もし勝手に撮られて公開されたら訴訟沙汰にするだろう。
ワイズマンの映画は被写体を遠くから俯瞰するショットで終わるものが時折あるけれど、『病院』も然りだった。あらゆるドラマが詰まった病院の前を、そんなことなど露知らず往来する車たち。私が入院した病院は近所で、しょっちゅうその前を通っていたけれど、病院に出入りする人はみんなドラマを抱えている、患者だけでなく、医師も、付き添いの人々もみんな、って、病院に入って出るまで想像していなかった。ラストシーン、素知らぬ顔で走り去る車のように。
親密さ

ただ座っているだけでも映画鑑賞は体力消耗するものなので、『親密さ』255分、完走できるか不安だったけれど、杞憂だった。没入している、ということだろうけれど、濱口映画の長さと体感時間の短さの反比例は毎度、不思議。
『親密さ』を観るのは3度目。(これまでが麻酔でリセットされてしまったせいか)初々しい気持ちで、過去最高に集中した。後篇の演劇は劇中劇としてではなく、ひとつの演劇として鑑賞したら、私は面白いと思うかしら。脚本の読み合わせ、手紙を読むこと、「書き言葉を読み上げる」場面がいくつかあるためか『親密さ』を観るたび、とてもそんなことは人前では発せません、本心、本音、本意、そんな禍々しいものなんて、という言葉も案外、書き言葉では綴ることができる。話し言葉の奥ゆかしさにひきかえ、書き言葉の図々しさったら、と思う。
この映画は私の中ではナチュラルに、青春映画に分類される。制服も流れる汗も登場しないけれど。私が観たこれまで映画の中で、最高の青春映画かもしれない。
年に1度行くか行かないかのキネカ大森には、京浜東北線に乗って行く。滅多に乗らないから、途中どの駅に停車するかほとんど把握していない。帰りの電車に乗り、路線図を眺め、田町に停車することを知った。田町駅のホームに停車した車両から、向かいは山手線、確かに、と思った。
『親密さ』を最後まで見届けたことがある人には、私が何を言いたいのかは、わかってもらえると思う。この映画を観た後に、京浜東北線に乗って田町を通過する私は、世界でもっとも幸せな観客だ、と思ったことも。ベルが鳴ってドアが閉まり電車が動くと、交わって離れてゆく電車はどこから撮ったのだろう、と、ふと考えた。「言葉は想像力を運ぶ電車です。日本中どこまでも想像力を運ぶ、 私たちという路線図。」
http://netemosametemo.jp/hamaguchi/
2重螺旋の恋人

有楽町で『2重螺旋の恋人』を観た。
https://nijurasen-koibito.com/
フランソワ・オゾン、器用な監督で何でも撮れそうだけれど、だからこそ私にとって当たり外れが大きい。『しあわせの雨傘』なんて本当につまらなくてオゾンが撮る必要あるのかな?とすら思った。『8人の女たち』より『まぼろし』より初期の『焼け石に水』が一番好きだったかもしれない私には、『2重螺旋の恋人』は久々の当たりだった。
主演マリーヌ・ヴァクトは『17歳』のヒロインだった女優で、なんだか植物のように触れれば散りそうな脆さだった『17歳』から数年、華奢な身体はそのままに、みっしり肉も骨も詰まった動物に化けていた。フランス女優らしく惜しみなく脱ぎ、次は脱がない映画に出ないと、そろそろマリーヌ・ヴァクトが登場して脱ぐだけで、また脱いでるよ(笑)って失笑を買うかもしれない。マリーヌ・ヴァクトの見た目やラフな装いが好きで、時々画像検索して見惚れているけれど、自分の美しさに無頓着な美しい人っていいなぁ。シルクなどのとろみある素材のクタッとしたシャツやブラウスが世界で一番似合う。
双子をキーワードに出生の謎が解き明かされてゆくミステリー。染色体の関係で三毛猫はだいたい雌、雄の三毛猫は極めて珍しいという事実をこの映画で知った。中盤まで真顔で観ていたけれど、実はコメディなのでは?と思い始めてから初期オゾンを彷彿とさせるグロテスクなシーンが散りばめられていることに気づき、俄然楽しくなる。
終盤、強烈な存在感を放つ老婦人に驚き、誰かと思えばジャクリーン・ビセットだったのでさらに驚いた。トリュフォー『アメリカの夜』ヒロインのあの美しい人。老いが重くのしかかったジャクリーン・ビセットを、オゾンが美しく撮ろうとしていないせいか、ジャクリーン・ビセットの登場するシーンだけデヴィッド・リンチ映画のような趣があった。
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