東博の椅子
東博の本館1階奥、庭に面した一角にある椅子を見に行った。以前ここに置かれたハンス J.ウェグナーのシェルチェアが「空間と椅子」の関係として私の中で満点だった記憶があった。
引越してもうすぐ5年ながら部屋がガラガラで、家具を増やそうか、選ぶなら椅子かな、とあれこれ見ている。
いざ行ってみると、あれ…思ってたんと違う。ブラウンの柔らかそうなレザーのベンチ。東博で椅子の大移動があったのだろうか。今度スタッフの方にシェルチェアがどこに移ったのか聞いてみようかな…と、過去の写真を探してみると、
床も壁も違う!違う場所だった。本館2階にあるらしいシェルチェアを1階で探して勝手にがっかりしただけだった。テーブルを囲むブラックのシェルチェア、生物群みたいな躍動感がある。天井にある照明とのバランスも良かったので、次また東博に行ったら写真を撮る。
龍飛鳳舞
もうすぐ旧正月。
1月、東博で正月恒例「博物館に初もうで」、去年の兎年にちなんだ美術品のチョイスは可愛すぎた、辰年は雄々しいものばかりだろう…楽しめるかな…と展示室に入ったら、
最初にドドーンと康熙帝の書が展示されており、威風堂々っぷりに一撃で圧倒された。
巨大なキラキラした紙に、太めの筆で書かれた龍飛鳳舞。きっと故宮で書いたのだろう。こんな道具を準備されるのも、これほどおおらかに書けるのも、中国の皇帝以外に誰がいましょうか。些末なことがどうでもよくなった。
https://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=past_dtl&cid=5&id=10980
Weekly28/ジョニー・トー監督/映画か東京
秋からずっと緊張度の高い忙しさで、ジョニー・トー特集は横目でスルーする予定だったけれど、直前に監督来日の知らせを読み、さすがにこれは!とチケットを買った。
ジョニー・トー漢の絆セレクション、上映は4作。東京はシネマート新宿が会場。『エレクション 死の報復』上映前に監督の挨拶がある回に行った。
ジョニー・トー作品、DVDや配信で観られるものはほとんど観たけれど、スクリーンで観たのは数本で、私にとっても貴重な上映。去年『福田村事件』を観た時、音楽・鈴木慶一の素晴らしさに震え、北野武『アウトレイジ』『アウトレイジ ビヨンド』をDVDで観て、黒社会映画の気分になり勢いでジョニー・トー『エレクション』も観たものの、続編『エレクション 死の報復』に辿り着くには時間切れしたので、ちょうど観たかった。
さて、ジョニー・トー監督….!!映画祭や舞台挨拶で監督や俳優をたくさん見るので、存命の映画人で生で誰を見たら嬉しいかな?もう見たい人はだいたい見たかも?とクールな態度でいたけれど、ジョニー・トーを忘れていた。そして生ジョニー・トー、これまでの誰よりも嬉しかったです。過去の写真のイメージから、眼鏡をかけた中華圏に3000万人いそうなおじさんをイメージしていたけれど、生ジョニー・トーは本人が俳優としてジョニー・トー作品に出演していても不思議じゃないくらい背が高く精悍で引き締まって、けれどユーモアも気さくさもある想像以上に素敵な印象の人物であった。香港の面粥屋でこんな人に遭遇したら、きっと見惚れるだろう。話しかけてしまうかもしれない。なんというか…存在の美しさに。あまりにも作品と本人の佇まいが一致していた。
監督曰く、白内障の手術により眼鏡が不要になった。最近は週3ぐらいでサッカーしている、とのことで老廃物の溜まってなさそうなつやんつやんの肌であった。68歳、長生きして変わりゆく香港の物語をずっと見せてほしい…!そして『エレクション』の製作準備のエピソードも聞け貴重な舞台挨拶だった。
『エレクション 死の報復』(2006)は前作『エレクション 黒社会』(2005)の続編で、いずれも1997年香港返還後が黒社会にも影響を及ぼすさまを、星の数ほどある組織のうち伝統を重んじる最大派閥「和連勝会」の2年に1度の選挙を通じて描く物語。
続編『エレクション 死の報復』は前作より時間が経過し、黒社会の生存戦略が狭い香港での覇権争いだけではなく、返還により中国大陸といかに連携を築くかに視点がシフトし、中国公安も登場し、言語も登場人物によって広東語と普通話が入り混じる。黒社会から足を洗い真っ当な家庭を築きたいジミー(ルイス・クー)は新たな人生のため、俺は周りのオールドファッションなヤクザどもと違うんだ!と経済や普通話を学ぶインテリヤクザだが、本人の願いと裏腹に周りから見ればただの一介のヤクザに過ぎず巨大な中国公安に翻弄されていく…という筋書きで、私が面白いと思うのがジミーが普通話を習得しようと奮闘するシーンがちらほらあること。
公安との会話は問題なくともレストランでメニューの読む時、読解はもちろんできるが普通話での発音がわからず一生懸命注文するが、店員がくすくす笑いながら流暢な普通話発音で修正される。このシーンが面白いのは懐かしさがあるからで、1997年香港返還時、私は日本でニュース映像を見て、その後しばらく北京に暮らし、いったん日本に戻った後、また何カ月か香港や北京で過ごしたのが2000年頃までの数年。『恋する惑星』で見るビルのすぐ上を飛行機が飛ぶ時代の香港でも、返還後の香港でも過ごし友達もいた。
返還から数年経過した2000年初頭の香港。市政府勤務の友人は、管理職は普通話を覚えるようお達しがあったとのことで教育を受けており、私との会話(普通話)がスムーズだった。別の友人と電話で話していると後ろから笑い声が聞こえ「後ろでお姉ちゃんが爆笑してる。普通話で話してるのが珍しくて面白いって」と説明してくれた。中華系デパートの踊り場で、普通話教材がデモンストレーション付きで販売されており、香港の人はどうやって普通話を学ぶんだろう?と興味が湧き眺めていたら、売り場のお姉さんに話しかけられたりした。読み書きは同じでも発音が違うから、外国人が習得するのとはまた別の難しさがあるのかな、と。
友人と街を歩いていて、ふと「返還後の香港は変わったと思う?」と聞かれ、「たまに来る私からすると変化はあまり感じない。空港が変わったから別の街に来た感じはちょっとしたけど」と答えると「変化は実際は大きい。どんどん香港の良さがなくなっている」と嘆きが返ってきた。あまりに時間が経過し、もう連絡先も失くしたけれど元気でいてくれたらいいな、と願っている。
レストランで普通話発音での注文に苦戦して修正される、ジミーの頑張り屋で可愛いところが現れるシーン。裏では非情なヤクザしぐさに手を染めても、生き残るための変化対応に、彼は彼で必死なんである。『エレクション』シリーズ、「黒社会組織の定例選挙」という設定だけで十二分に興味深いところ、裏側に「ジョニー・トーの描く香港返還」がビシッと張り付いており、私自身の「あの頃」とも重なって大切な映画。初めてスクリーンで観られて感無量だった。
ジョニー・トーはその後2008年、古き良き香港に愛を捧げる最高にロマンティックな映画『スリ』を撮るので、この世のすべての人にセットで観てほしいです。いつか『スリ』も映画館で観たいし、旧正月明けには新作にとりかかるという監督が現在の香港をどう描くかも楽しみ。
<最近のこと>
2月に入ってから「映画か東京」について写真1枚、文字数行で書く日記をこのdiaryページで書いています。
きっかけは年明け、タブレットを新調して古いPCやタブレットを処分し、勢いでiPhoneも新調する?と検討して、不満がカメラの性能しかないので、眠っていたコンパクトデジタルカメラを活用するのはどうかな、と久しぶりに持ち歩き始めたから。
以前たくさん存在していた気がする、写真と文字数行で淡々と綴られる静かな日記を静かに読むのが好きでした。今はSNSがそれに代替しているけれど、何か書こうとSNSを開くと目に入るノイズが強すぎて、結局デザインやフォントも好きに設計したdiaryページで淡々と記録するのが良いと思いました。
あちこち行ったり見たり、まとめて書こうと思ううちに時間が経ち、記憶力が良いばかりにずっと脳内にはあるので良いメモになるかも。「映画」か「東京」についてで、映画を観なくてもほぼ東京におり、東京にいなくてもどこかの街で映画を観ているので、現在と過去が混じったりして、何かしら書くことがあるはず。
毎日、短くても何かしらdiaryを更新します。
ふと映画や東京について思い出すことがあれば、ぜひ遊びにきてください。
立春
節目を感じるのが好きで節分に恵方巻を食べ、立春には暦の上では春!と切り替えるものの、東京は雪が降る直前の寒さ。極寒だけど春だから!と二十四節気に凍える心身を宥められている。
日比谷で『哀れなるものたち』を観て素晴らしい!→寒い!→素晴らしかった…→寒すぎるやろ..(怒)!を繰り返し近所を歩くと、立春もちつき大会が盛況。
古くからの住人が多そうな界隈、街の歴史とともに高齢化まっしぐら…と思っていたら、もちつきに子供たちが大集結していたので、君たちは普段どこにいるの…?と狐につままれた気持ちになった。
手書きアルファベット
山の上ホテル、前身「佐藤新興生活館」の設計図が展示されていた。
1930年代の設計図、手書きアルファベットはアールデコ調で、サイレント映画の中間字幕の飾り文字みたい。
さっぱりと書いても意味は通じるところ、あえてこう書く心意気。
京都の料亭で食事した際、飾り障子の話題で女将さんが言った
「最近の職人さんは余計なことしはらへん。余計なことするのが職人やのに」って言葉を思い出した。
https://www.yamanoue-hotel.co.jp/concept/
プリンアラモード
間もなく休館する山の上ホテルで、プリンアラモード。
白鳥のシュークリームが優雅で、いつかと願っていた。
座席争奪戦は苛烈を極め、9時に行列に並び10時半に整理券を獲得、15時着席。
休息のための喫茶にこんな労力をかけるなんて、ロジックエラーを感じる。
不忍池
「映画か東京」日記は写真1枚、文字数行。
3年前の不忍池。
古くからの歓楽街はどこもそうだが、上野は時折ぞっとするほど死の香りがして冬は特に濃い。
と、アリ・アスター監督来日日記の不忍池を見て確認する。
彼が撮るとどこも黄泉の国に見えて面白い。
https://www.fashionsnap.com/article/ariaster-photodiary/
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