師走
気づけば12月も半ば。うちの界隈は銀杏のメッカで、地面に落ちた銀杏が風で竜巻のように舞い踊り通行の邪魔をする銀杏テロリズムを警戒する季節。
昨夜、大河ドラマ『いだてん』完走し、感無量。歴史の授業であまり教えてくれない近現代史やスポーツ史がしっかり描かれ、同時に東京の物語でもあって、1年間夢中で観た。オフィスの窓から新国立競技場が徐々に出来上がっていくのを眺めながら、こんなに近所だと来年の大会中はきっと通勤に影響甚大だろうけれど、都はまだ何も指針を出していないよね…とじりじりしていたけれど、前の東京オリンピックにあわせて開通した新幹線も首都高も、完成したのは開会式のたった10日前だったと予想外のバタバタぶりを『いだてん』で知り、きっと今回もまーちゃんみたいな情熱ある人々が寝食忘れて準備しているのだろうから、直前まで何も知らされなくても都民としては静かに受け止めようと心に誓った。真夏の断水は避けてほしいところだけれど。
オリンピックが近づくと映画館にかかるだろうと思っていた市川崑『東京オリンピック』、国立映画アーカイブの特集でかかるようで、観にいくつもり。次の日曜だから『いだてん』延長戦みたい。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/olympic201910/#section1-1
しばらく書くことをお休みしていたけれど、徐々にまた書いていこうと思います。毎日は難しいかもしれないけれど、日記も更新します。何か書いてるかな?と28を覗きに来ていただけると嬉しいです。
木村威夫展
週末、会期ギリギリ、国立映画アーカイブの木村威夫展へ。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/takeokimura/
鈴木清順監督とのコンビで有名な映画美術監督。未見の映画であっても、この方の名前があるだけで観てみたいな、と長らく思ってきた。映画館が本籍地の男の子(恵比寿帝國館という映画館を家族?親戚?が経営…だったかな)が、まず舞台美術を志し、映画産業の盛り上がりと歩調を合わせ美術監督として成長していく、上質な青春映画のような展示だった。
豊田四郎監督『雁』を、原作を好きなあまり観る勇気が出ないまま時間が経過しており、しかし数々の写真で映画の一場面はいくつも見ており、物語の舞台が近所なので散歩のたびに、この石塀は映画の中のあの?と妄想したりしていたけれど、石塀も不忍池も、すべてセットと知って驚愕した。なんだか靄が晴れた気がしたので、そのうち『雁』を観てみようと思う。高峰秀子がお玉を演じるってイメージと違って敬遠していたけれど、美術:木村威夫とあらば観なければ。
膨大な作品群の中でも、やはり鈴木清順監督とは相性抜群だったのだろう。展示にはなかったけれど、おふたりのコンビで最も興奮したのは『河内カルメン』で妾として売られたヒロイン(野川由美子)がお色気映画に出演させられそうになる危機に陥り、ふすまを開けると映画の撮影現場のような強いライトがピカッと突如出現するシュールなセット。こんな仕掛けを思いつくなんて頭おかしい!って最高の褒め言葉を献上したいです。展示では『ツィゴイネルワイゼン』の脚本は木村威夫さんのコメント入りでそのまま出版してほしいし、ポスターも復刻発売してほしい素敵さ。
その人柄の魅力にについて触れたキャプションも多く、タイプの違う監督から熱望され続け、長くキャリアを積まれたのは、時代や相手に合わせて無限の引き出しからアイディアを出せる柔軟さがあった人なのだろうな。自分をフレッシュに保ちながら年を重ねてゆくには?と考えていたところ、たいへんタイムリーな刺激でした。
夏の日の歌
土曜の東京は風がつめたくて、ずっと外にいたら凍えてしまったけれど、新しい季節のために軽やかな素材のワンピースを手に入れたら、次の季節は春と信じられ、その次は大好きな夏と思い至るとSpotifyを立ち上げ『夏の日の歌』を聴いた。
広場でのお祭りで赤いスパンコールのドレスを着た双子姉妹が歌い踊るこのシャンソンは、歌詞も素晴らしい(こちら)。踊るような気分でiPhoneを眺めていると、ミシェル・ルグランの訃報が流れてきて驚く。
生で聴くチャンスを逃し続けてしまった。機会はたくさんあったはず。会いたい誰かにはさっさと会いに行かなければ。これから先もずっと人生に寄り添ってくれるであろう素敵な音楽をありがとうございました。
【本日更新】One movie, One book 第4回 お早よう、世の中
本日更新しました。
原作本も映画関連本も登場しない、映画と本のお話。小栗誠史さん連載「One movie, One book」第4回は「お早よう、世の中」。小津映画の中でもとりわけ人気の高い1本から展開する思考。
東京の住人にはお馴染みのピンクの壁の建物も、文中に登場する建築家によるもの。この写真、どうやって撮ったんだろう?と不思議に思った人は、いつか小栗さんに質問してみてください。あらためてピンクを眺めてみると、早春気分が高揚しました。
オリンピック準備モード高まる東京。消えゆく景色を憂う人も、まだ見ぬ未来を心待ちにする人も、遠くの街のあなたも。お楽しみいただければ幸いです。
人々の生活と風景
大手町駅定点観測。東京ってほんと、永遠に完成しない街だな。
月曜シネサロンのテーマが「東京150年 人々の生活と風景」で、最後の1本『佃島』を観ながら、この時代の佃島界隈、映画で観たことがあるぞ…と記憶を辿っていた。
若尾文子主演『やっちゃ場の女』は築地界隈が舞台だけれど、お父さんが妾と暮らすのが佃島で、映画に登場していた。1962年の映画。
『やっちゃ場の女』と同時期に若尾文子映画祭で観た『東京おにぎり娘』、「私の家は新橋駅から2~3分…」のナレーションから始まる、1961年当時の東京がカラーで映される楽しい映画。
1961年の東京といえば、岡田茉莉子主演『河口』も、銀座界隈が映されている。水辺といえば『女経』の若尾文子パートは、水上生活を送る女性の物語だった。あれは1960年の隅田川。思い出すのは60年代前半の東京が撮られた映画ばかり。オリンピックに向け活気がありながら、映された景色のほとんどは現存しない不思議さもある。
記録映画『佃島』を観ながら、古い貴重な記録映像と親切なナレーションがあるだけで、こんなに興味深く観られるのだから、ロケで撮られたこれらの映画って、古い街並みの記録でもあり、華やかな女優さんが当時の東京を馳けまわるフィクションでもあり、図らずしてずいぶん贅沢な体験を重ねていたのだな、としみじみ思った。
月曜シネサロン&トーク
東京国際フォーラムにて。月曜シネサロン&トークというイベント、以前から気になりつつ逃していたけれど、デザイナーあずささんが申し込んだ!と教えてくださったので今回は逃さなかった。
「月曜シネサロン&トーク」は国立映画アーカイブ(旧 東京国立近代美術館フィルムセンター)所蔵の貴重な文化記録映画を 講師の解説付きで上映する映画会です。2018年(平成30年)は東京府開設から150年の節目を記念し江戸から近現代に向かう都市や 人々の生活風景を通じて東京の魅力再発見につながる作品を全4回に渡って上映します。
今回は第3回。上映されたのは『オリンピックの街』(1964年/荻野茂二)、『日本橋』(1964年/荻野茂二)、『佃島』(1964年/浮田遊兒)の3本。1964年は東京オリンピックの年。北京がオリンピックでがらりと顔を変えたように、1964年を目がけて大工事が施され、江戸から遠く離れて、という景色に変貌しつつある東京の記録。
『オリンピックの街』はオリンピック開会式の1週間前に、開会式・閉会式のリハーサルを、高校生が各国選手役を代わりに演じて行った日が記録されている。そんな日があったことを今まで知らなかったけれど、考えてみればあれだけ大掛かりなイベント、当たり前にリハーサルするよね。ランナーによる聖火点灯もリハーサルしたため、本番の点灯は2度目だったとか。市川崑の記録映画で美しいシーンとして記録に残っている、風船飛ばしもリハーサルがなされていた。この映画は最初から最後まで同じトーンの和風の音楽が淡々と流れており、気がふれそうになり、映像に適切な音楽が選ばれることの重要性を逆説的に考えた。
『日本橋』はサイレント・モノクロ映像。日本橋に高速道路を建設する途中が映されていた。何かをぼたぼた水に落としながら進む工事のワイルドさに驚き。60年代前半のご婦人の服装、キュッとヒールを履いてハンドバッグを持って、クラシカルで素敵。
『佃島』はナレーションがつき、音楽も工夫されていて3本の中で最もストレスなく鑑賞。映像はそのままでも多くを語るけれど、あれは何?と生じた疑問を、ナレーションが適切にガイドしてくれることの安心感よ。
資料が最初に配られ、スクリーンに資料を投影してのトーク→上映→トーク→上映の形式でのイベントで、トークは都市形成史家の岡本哲志さん。資料もトークも独特の雰囲気があり(映像の作家性にはまったく興味がない様子で、あくまで都市の変遷にフォーカスした内容)、後から調べてみれば『ブラタモリ』に何度も登場されたらしい。資料は編集者が見れば校正したくてウズウズするトーンで纏められていたけれど、あえてあのまま、というのが味のようにも思われた。
2020年オリンピックのピンバッジをお土産にいただいて、500円。大充実!
オリムピック
大河ドラマ『いだてん』、楽しみでGoogleカレンダー、毎週日曜20時に「いだてん観る」って繰り返し設定。
志ん生パートで映る東京、日本橋に浅草、落語と東京東側の住人としてはご当地ものとして楽しい。タイトル映像で使われている東京の街並みの絵を描かれている山口晃さん、近所にお住まいのようで、私が時々行くケーキ屋がお気に入りらしい(記事)。
写真は去年11月頃、体調が回復したのが嬉しくて、仕事帰りに新宿まで歩いて映画を観に行った時。建設中のオリンピックスタジアムの脇を通過。
1週間の作業予定表。
『いだてん』タイトルバック、市川崑監督『東京オリンピック』の未使用映像が使われているらしい。
#いだてん のタイトルバックでは市川崑監督による公式記録映画『東京オリンピック』のために撮影されたフィルムのうち、映画本編では使用されなかった部分を今回初めて4K化して使用しています。中盤「1964 TOKYO」とテロップされている部分と、終盤の東京大会の開会式の部分がそれにあたります。
— 大河ドラマ「いだてん」 (@nhk_td_idaten) 2019年1月10日
風船を空に放つ映像、きっとこれだな、と思いながら観た。
公式サイトの、
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
時系列入り混じる構成を説明する目的だろうけれど、年表ページが素晴らしくて興奮。歴史映画の公式サイトも、すべからくこんな年表をつけてほしい。パンフレットも誰かが書いたコラムをひとつ省くかわりに、年表があったら買うかもしれない。歴史映画を観ていまいち理解できなかった場合、メモ書き程度の簡単な自作年表を作って後から整理することもある。私は年表を欲するタイプです。
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/history/
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