【本日更新】One movie, One book 第2回

本日更新しました。
小栗誠史さんによる連載「One movie, One book」は、原作本も映画関連本も登場しない映画と本のお話。第2回は、リチャード・リンクレイターの初期作が、ある本と紐付けて綴られます。
小栗さんの登場は夏以来。ウサギファンのみなさま、長らくお待たせいたしました!真冬の読み物、どうぞお楽しみください!
トリコロール 青の愛

早稲田松竹にて。クシシュトフ・キェシロフスキ「トリコロール 青の愛」。トリコロールシリーズはフランス政府から依頼を受けたキェシロフスキが、フランス国旗の色が象徴する「自由・平等・博愛」をテーマに撮った3部作。「青の愛」はジュリエット・ビノシュをヒロインに迎え、テーマは自由。
ビノシュ演じるジュリーが、夫と娘と同乗する車が事故に遭い、ふたりは即死、ジュリーだけが生き残る。作曲家の夫が未完のまま遺した、欧州統合記念に依頼された交響曲のメロディーを、一度は捨てようとするのだが…。
みなみ会館だったか、朝日シネマだったか、公開当時に3部作をすべて観た。「何色ですか、あなたの愛…」という思わせぶりなナレーションの予告篇を覚えているけれど、「青の愛」について私の記憶に残っていたのは、ビノシュがカフェでオーダーするアイスクリームとエスプレッソ、反復して登場する青いプールで夜に泳ぐこと。
あらすじもすっかり忘れた状態で観ると、何もかも失った女が、何もかも捨てようとする物語で、とても私好みだった。この世に執着はない、とばかりに財産売却の手続きを事務的に済ませ、売却利益の受け取りも拒否。光を反射して部屋に青い模様を飛ばすガラスのオブジェだけ抱え、新しい部屋でひとり暮らしはじめる。この部屋が私好みの素敵さで、備え付けの家具は多少あるものの、すべて捨ててきた女はとても身軽。物が増える気配もないガラガラの部屋に、過去から連れてきたオブジェが青い光を散りばめるだけ。何もないけれど窓が大きく、目の前の通りはやや騒がしく、階下に人の気配も感じられる。
引っ越し当初は生気を失っていたジュリーが、距離をおきたくても否応なしに少しずつ他者に踏み込まれ、一度手放したはずの過去をふたたび手繰り寄せ、新たな現在を再構築してゆく。捨てることに一生懸命なのは潔く見えるけれど実は過去への執着の強さのあらわれで、周囲の人物や物がいくら入れ替わろうと、現在も未来も過去の延長にしかない。物語の最後までたどり着くと、ジュリーの知らないところで亡くなった夫が語っていたという「彼女は寛大で、頼りになる」という言葉そのものの女性だ、と思った。
ジュリーの新生活に絡んでゆく階下に住む女性、どこかで観たことある…と記憶のアーカイブを調べてみると、ロメール「冬物語」の主人公フェリシーを演じた女優(シャルロット・ヴェリ)だった。「冬物語」以外で観たことがなかったので、思わぬ再会、という気分。「冬物語」のフェリシーって、これまでに観たあらゆる映画の数多のヒロインの中で、もっとも私自身に似ている女なのだけれど、シャルロット・ヴェリが「青の愛」で演じた役も、フェリシーにどことなく似た、己の欲望に忠実で周りを気にしない、正直な女だった。
そしてジュリーが借りる部屋、パリのムフタール通り(Rue Moufftard)にある。アイスクリームとエスプレッソをオーダーするカフェは、ル・ムフタール。ムフタール通り、マルシェや各国料理のレストラン、カフェがひしめく有名なグルメストリート。生気を失った彼女がひっそり閉じこもるには、あまりに食の歓びに満ちた場所すぎて、ジュリー、死にそうな表情をしていたけれど、ムフタールを選ぶなんて、生きる気満々では?と勝手な深読みを楽しんだ。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/kieslowski2018.html
affogato

仕事がずっと立て込んでいるけれど、しばらく続くから慣れるしかないとして、金曜は無理矢理気味に冬休みをとり、免許更新など所用を片付ける。早起きの素晴らしいことに、神田の免許センターが開くのと同時に入り(8:30)、手続き・講習の後に移動して、家の中で紛失したメガネ(こんなに何もない部屋に住んでいるのに…)を新調すべく眼鏡屋の開店(10:00)と同時に入り、秒でメガネを選び視力測定までして支払いを済ませ、早稲田松竹の朝イチの上映(10:40)に間に合った。一日で一番好きなのが午前中になりつつある。人が多い東京は、出遅れると混みがちなので、待ち状態が苦手な私は朝こそ動くべし、と心得た。
無事にキェシロフスキも2本立てで観られて満悦。「トリコロール 青の愛」「ふたりのベロニカ」を続けて観ると、久々にどっぷりTHEヨーロッパ映画を観た!という気分に。良くも悪くも私の中のヨーロッパのイメージ、20歳までに観た映画によって形成されている。
表情をなくしたジュリエット・ビノシュがカフェでいつもの、と頼んで出てくる、ガラスの器に盛られたダブルのヴァニラアイス、カップ&ソーサーで出てくるエスプレッソ。慣れた手つきで熱いエスプレッソを一息にアイスクリームにかける。どの国、どの街でもカフェでアイスを頼むたび、ビノシュのあの手つきを思い出す。
写真はずいぶん前。渋谷、VIRONの2階。あらゆる種類のアイスを愛しているけれど、特にこんな、うやうやしく盛られたアイスに目がない。
鹿と眠り

眠そうな鹿。お正月、奈良公園。
ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。
オスカー外国語映画賞にもノミネートされていたハンガリー映画「心と体と」、あらすじを読んでいたら、どうにも私好みで俄然楽しみに。この、同じ夢というのが「鹿の夢」らしくって、ビジュアルを眺めていると、鹿のモチーフが使われている。
http://www.senlis.co.jp/kokoroto-karadato/
以上、これから観る映画メモ。
明日は冬休みを1日消化。運転免許更新の手続きをさっと済ませられれば、キェシロフスキを観に行くつもり。クシシュトフ・キェシロフスキ。早口言葉のような名前。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/kieslowski2018.html
あ、この間、この上映についてお話したのだけれど、私ずっとキシェロフスキって言っていたし、名前を長らくずっと勘違いして覚えていた。謹んで訂正いたします、あの時のあなた。キェシロフスキ、キェシロフスキ、キェシロフスキ。
映画の誕生日

ようやく仕事納め。なぜか上司がくれた小さな200ユーロ札はチョコレート。こども銀行的な。歳末臨時ボーナスかな?先日行ったPostalcoで買った和紙でできたカードケースは用途を限定しないつくりでお財布として活用中。来年もよく働いてよく遊ぶぞ!
昨日、12/28の映画の誕生日はお祝いに?下北沢トリウッドで、リチャード・リンクレイターの初期先「スラッカー」を観に行った。小栗誠史さんの連載One movie,one book第2回は絶賛編集中で、取り上げられる映画は「スラッカー」です。未見だし、ソフト化もされておらず、権利の関係でこの先もされないという噂で聞いたので映画館で観ることに。
自分の現実と映画の境目が曖昧になるようなユニークなつくりで、初期作にその監督のすべてがあると巷では言うけれど、リンクレイターは時間の概念そのものと、それを記録することに執着がずっとある人なんだなぁ、と思った。
小栗さんのOne movie,one book、更新は1月後半の予定。どうぞお楽しみに。「スラッカー」、いつかまた映画館がかかることがあれば是非どうぞ。サイトによると「上映館募集中!個人の方歓迎!」って書いてあるんだけれど、幾らで借りられるんだろう。Cinema Studio 28 Tokyo主催で上映してみるのも良いかもね。来年の構想の1つにしようっと。
明日から冬休み。明日も、大晦日も映画を観る予定。大掃除は映画の隙間に。
アザーショット

昨日のカラスのアザーショット。今日も遊びに来ないかなぁって期待したけれど、来なかった。当たり前だけれど、カラスとは待ち合わせできない。人間なんて、両思いだろうが片思いだろうが、勇気さえ出せば待ち合わせはできるかもしれないってだけで、希望度が高いように思えた。
で、同僚に、見て見て、可愛いカラスって写真を見せたら、露骨に嫌な顔をされ、なんでも中学生の頃、カラスに追いかけられ、それを見かけた同級生が大笑いの後に、彼の家の前にカラスの置物を置くという手の込んだいたずらを仕掛けた結果、置物に反応して驚いたのは彼の母親だったという思い出話&オチ…を披露してもらい、男子中学生のヒマさとマメさにキュンときた。カラスから派生して、可愛い話を聞いた。
眺めの良いオフィスを大変気に入っているのだけれど、映画を観ていても、私の好きな部屋は、つくづく眺めの良い部屋だな、と思う。どれだけ豪華な家具があっても眺めの悪い部屋より、質素でも窓がどーんと大きくて眺めの良い部屋への憧れが募る。
先日観た「つぐみ」で、つぐみの住む部屋は、まさに理想。特にタイトルロールの出る瞬間が絶妙で、あんな部屋にいつか住んでみたいなと思う。身体の弱く横になりがちなつぐみのために、家の中でもとりわけ眺めの良い部屋が与えられたのかな、と妄想したりもする。
エモーション

昨日、市川準監督特集で観た「大阪物語」は、ヒロイン(池脇千鶴!)の両親を沢田研二、田中裕子が演じていて職業は漫才師という物語だから、「親の仕事場」としてのなんばグランド花月が映る。いかにも舞台裏という名前が似合うあの雑多な舞台裏も、なんばグランド花月でロケしたんだろうか。ミヤコ蝶々も登場し、大阪の魅力はよくわからんへんけど、まぁ、うどんがおいしいことだけは確かやな。ってセリフがあって、大阪のこってりしたエリア出身だった祖母を自動的に思い出す。祖母は年越しに蕎麦を食べるのを嫌がり、一人だけ年越しうどんを食べる程度に大阪の女であった。
そんなエモーションを引きずったまま夜、M-1を観ていると、ジャルジャルの登場から退場までの一連の流れがどうしようもなく映画的で、「お前…よう今ボケれんなぁ」のひとことなんて、テレビをつけたつもりだったけれど、あれは犬童一心の書いたセリフで、これは市川準の映画かしらと思うほどに、「大阪物語」の続きだった。優勝できなかったけれど、明日、関西じゅうの学校の休み時間、みんなあのネタの真似、盛大にすると思う。
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