Nancy Tuckerman Style
目下の悩みは、着るものがないこと。モノをたくさん所有するのが苦手なので、ごく少数の服を着回し、傷んできたら潔く手放すのが好きだけれど、ことごとく傷んできて、クローゼットがスカスカなんである。買い物を億劫がるほうなので、ファッションは好きだけれど、洋服を買いに行くのは面倒…。
映画はいつだってファッションの教科書(写真と違って動いてるから後ろ姿も横のシルエットも見えるし、みんながみんなニコール・キッドマンのような体型でもないから、この体型のこのキャラには、こういうファッションよね、と納得度も高い)だけれど、昨年観た中で、自分でも着てみたいなと思った選手権第1位は、「ジャッキー」の、ジャッキーを演じたナタリー・ポートマン…ではなく、ジャッキーの秘書を演じたグレタ・ガーウィグのファッションだった。
実話を元にした映画だから、秘書ももちろん実在の女性で、ナンシー・タッカーマンという、ジャッキーの秘書かつ、結婚式ではブライドメイドをつとめたという親友。ジャッキーと距離は近いけれど、ベタベタしたところのない凛とした印象の女性で、画面に映るとグレタ演じるナンシー・タッカーマンばかり目で追ってしまった。
ジャッキーはシャネルの衣装提供も受け、ジャッキーらしいスタイルが映画でも再現されていたけれど、華やかなジャッキーより、秘書として黒子に徹したナンシー・タッカーマン・スタイル、単に私の好みではあるけれど、仕事の時にもふさわしい、動きやすそうで、きちんと見えるファッションで素敵だった。ウェストに共布ベルトのあるグレーのタイトフィットのワンピース、ニットとスカート…。2018年春はあんな服を着てみたい。
こちらに少し写真あり
http://realsound.jp/movie/2017/03/post-4244.html
現実のナンシー・タッカーマン女史も素敵。研究研究。
https://en.wikipedia.org/wiki/Nancy_Tuckerman
memo: 昨日、日記をお休みした分もさっき書きました。外で、美味しい和食を食べてたせいです。お刺身、美味しかったな。
Phantom Thread Booklet
土曜の午後、長い手紙を書き、たくさん切手を貼ってポストに投函。家に戻ってポストを開けると手紙が届いていた。手紙めいた日。
LA支部のりえこさんから。PTA(ポール・トーマス・アンダーソン監督)最新作「ファントム・スレッド」がLAで70mmフィルム上映された際のパンフレットらしい。アメリカの上映でパンフレットが作られること自体が稀では。そして情報は最終ページにあるクレジットのみ、あとは写真やイメージのみの絵本のようなつくりにうっとり。
PTAの映画、あまり衣装に言及されることがないように思うけれど、「ザ・マスター」も衣装、素晴らしかったよなぁ。衣装デザイナーはマーク・ブリッジス。「ファントム・スレッド」でも衣装を担当するようなので、ますます期待が高まる。
東京では5/26公開。70mmで観られるLAが羨ましい!
さらば夏の光
日曜午後の映画。ユーロスペースで、毎年この季節に開催される北欧映画の映画祭「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル」、1週間と会期が短く、いつも逃してしまうので今回初めて行った。北欧映画だけではなく、毎年1本、北欧に関連する日本映画を上映することにしているらしく、今年は「さらば夏の光」がかかった。1968年、吉田喜重監督。
http://tnlf.jp/movie#saraba_natsu
日本航空がヨーロッパ10都市ほどに同時就航した年で、その記念映画として撮られた1本。当時、映画の予算は通常4〜5000万円のところ、1000万円の低予算で撮る必要があり、キャストは4名、セリフは全部アフレコで、ロケは1週間。主演は岡田茉莉子。衣装は森英恵のオートクチュールだけれど、脚本が事前に出来上がっていないので、訪問するヨーロッパの街のイメージで仕立ててもらい、ヘアメイクも衣装担当も同行しないため、岡田茉莉子自身がアイロンをかけて準備し、髪結いは東京で習ったのを自分で再現、メイクも自分で。即興的に脚本が出来上がり、毎晩、翌日の撮影分がキャストに渡され、すぐ覚えては撮られ…を繰り返す過酷な日々だったとのこと。
文系研究者がパリに渡り、偶然、女と知り合う。女は人妻で、その後ヨーロッパの各地で出会い、ともに時間を過ごしながら、男が探し求めるカテドラルについての会話を交わす。やがて、女は長崎で終戦を迎え、何もかも捨ててヨーロッパに渡ったことが明らかになる。岡田茉莉子がよろめきながらも自立した女を演じる。経済的にはどう自立しているのか不明だけれど、家具のバイヤーという設定なので、それで生活を成立させているのだろうか。吉田喜重作品らしく観念的なセリフ、モノローグが続き、途中しばし意識が飛んだ。吉田喜重と侯孝賢は私にとって睡眠薬のような映画を撮る人で、必ず眠ってしまう。絵画のような構図は他の日本の監督であまりお目にかからないトーンで、ヨーロッパの香りがしたのは、ヨーロッパで撮られたという単純な理由だけではないと思う。観ると必ず眠るし、退屈もするけれど、それでも観てしまう魅力はある。
森英恵の衣装をくるくる着替える岡田茉莉子。撮られ方のせいか、一部の衣装のシルエットのせいか、少し身体がずんぐりして見えたけれど、美しい。シュミーズの上にコートだけ羽織って街を歩く、よろめいた末に奇行に走ったかと観ているこちらが緊張する場面もある。
吉田喜重&岡田茉莉子夫妻によるトークが上映後にあった。古い日本映画の女優陣、若尾文子、岸恵子、浅丘ルリ子…いろんな人のトークを聞くチャンスがあったけれど、もうじゅうぶん贅沢な時間を味わいせいせいした気分になりつつ、他に誰かお話を聞いてみたい人って、まだいるかしら?と考えた時、岡田茉莉子がいるではないか!と気づき、機会を伺っていた。
「さらば夏の光」は50年前の映画。目の前にいた現在の岡田茉莉子は85歳。背筋がすっと伸びて凛として、キリッとした特徴的なフェイスラインもそのまま。美しさとは若さのことではないのだな、と思いました。場内は満席、立ち見も出ていて、半世紀前の映画を観にきてくださってありがとうございました、と言った後に少し涙ぐんでおられた。モンサンミッシェルの場面では、女の薬指のダイヤの指輪がキラリと光っていたけれど、その指輪を別の街で紛失したことに気づき、結局見つからなかったらしい。ラストはイタリアで、街中でタクシーに向かって手をあげる岡田茉莉子のショットで終わるけれど、離れた位置にある望遠カメラで撮られていたため、映画の撮影とは気づかない通行人が多く、イタリア男たちに声をかけられまくり撮影が難航したとか。
吉田喜重監督は、自身の映画はテーマ性が強く、フィルモグラフィも3つの時代に区分される。まず松竹の監督時代は青春映画を撮った。次に女性を描く映画を撮った。その後は政治の映画を撮った。「さらば夏の光」は女性を描く映画期に撮ったもので、上の世代の映画監督は男尊女卑思想が強かったけれど、それに対する反発があり、とにかく女性を強く、自立した存在として描こうと思ったとのこと。「さらば夏の光」でも、女は自らの意思で日本を離れ、帰るつもりはない。男と出会い、夫と分かれるが、やがて男とも別れる。男に依存する人生ではなく、男がいないと生きられない女ではない。女はすべてを自分で決めていた。
このお話を隣で聞いていらっしゃる岡田茉莉子さんの佇まい、マオカラーのジャケットの監督、岡田茉莉子さんは黒ずくめで、お好きだというヨウジヤマモトかしら、という装い。同い年のお二人は、同志のような結びつきで長い時間を過ごしてきたのかな、と想像した。大女優と監督というより、本郷や御茶ノ水、神保町あたりでデートしてそうな雰囲気なの。
ずいぶん前、吉田喜重監督のトークは聞いたことがあり、その時に買ったと思われるパンフレット。2008年だったのかな。「エロス+虐殺」がパリで上映された時、ポスターの前で撮られた写真が表紙。上映されたと思わしき映画館LA PAGODEは、ボンマルシェの近くにある、東洋寺院を改装したエキゾチックな映画館。「エロス+虐殺」、LA PAGODEでかかるのが似合う。
その時にいただいたサイン。岡田茉莉子さんのページの余白に書いていただいたの、今見ると良い記念だった。
【本日更新】Cinema Tote Project Serial No.000(for Mariko)
本日更新しました。
Cinema Studio 28 Tokyo執筆陣、スタッフのために1人ずつhPark 古川博規さんにトートバッグを仕立てていただくCinema Tote Project。製作の流れを掴むために、まずサンプルとして私自身のトートを仕立てていただくことに。
素材選び、デザイン検討、サンプルチェック、映画の要素を加えるために東京下町を奔走。自分の嗜好や生活をじっくり考え、理想のCinema Toteを作るために、多くのステップを踏み、その都度、何が好き?何故?と自分への質問を繰り返すこととなりました。
そして完成した私のためのCinema Tote、既製品への細かな不満をクリアした理想の仕上がり!身体にぴったり合うものって、使っていてストレスもなく、とにかく気持ちいいのです。
Cinema Tote Project、我ながら素敵なアイディア!これから生まれる様々なCinema Toteも楽しみに、まずは私のケースをお楽しみください。
Cinema Tote Projectって?を説明したIntroductionはこちら
https://cinemastudio28.tokyo/cinematoteproject_introduction
仕立ててくださる古川博規さんのブランドhParkはこちら
黒蜥蜴
週末のこと。日生劇場で「黒蜥蜴」を観劇。演出はデヴィッド・ルヴォー、中谷美紀が黒蜥蜴を演じる。以前、京都で観た中谷さんの一人芝居「猟銃」が素晴らしく、これから彼女のお芝居は必ず観る、と心に決めていた。
http://www.umegei.com/kurotokage/
乱歩の小説を三島が戯曲化した「黒蜥蜴」。何度か映画化されており、10代の頃、京都・四条大宮にあったスペース・ベンゲットというアングラ度の高い映画館…(「石狩」という居酒屋の2階にあり、まず「石狩」の暖簾をくぐり、「いらっしゃい」などと声をかけられ、あのすみません…映画なんです…と申し訳ない表情を返して傍にあるエレベーターに乗らないと辿り着けない不思議な映画館だった)…で、何かの特集上映で「黒蜥蜴」を観た記憶。映画のことも何も覚えていないけれど、井上梅次が監督だった気がして、調べてみたら大映映画。1962年。京マチ子が黒蜥蜴を演じたようだけれど、どうして何も覚えていないのだろう。そして雨宮を川口浩が演じている…!当時、私の浩センサーはまだ発達していなかった。脚本・新藤兼人だし、再見してみたいものです。
さて、今回の舞台「黒蜥蜴」。休憩を挟み堂々3時間。小道具大道具をスムーズに動かしほぼ暗転なしで進行。バンドが傍に控え生演奏で音楽を奏で、照明も、衣裳も、俳優のルックスも身体のフォルムも、すべてが麗しい。そして何より麗しいのが言葉で、脚本は戯曲に忠実なのではなかろうか。戯曲といえども、三島の書き言葉そのもの。リアリティ?自然体?それって果して美しいのかしら?と嘲笑うかのごとく書物の中でしか昨今お目にかからない装飾過剰・絢爛豪華な日本語を、淀みなく発していく中谷美紀。前回の「猟銃」は一人芝居だったし、いったいどうやってあの分量の台詞を覚えるのかしらね。
3時間、あっという間に時間は過ぎた。未見ながら美輪明宏の印象が強いせいか、小柄で線の細い中谷美紀の黒蜥蜴はグロテスクさに欠けるような気もしたけれど、その分、黒蜥蜴の持つ可憐さ儚さが垣間見えて、美に執着する妖怪的存在というより、ただただ綺麗なものが好き。好きだから矛盾をはらんでいてもしかたがない。恋も綺麗だから素敵。歓びと憎しみは一対のものでしょう。と、不意に出くわしてしまった恋に身悶えるマイペースで可愛らしい女のような黒蜥蜴だった。そんな中谷版黒蜥蜴も、もっと年を重ねるとグロテスクさがどんどん出てくるかもしれず、当たり役として定期的に演じてくれるなら、定点観測のように観続けたい。
衣裳がどれも素晴らしく、後半に進むにつれ徐々に衣裳度が増していき、最後は「マレフィセント」のようだったけれど、布の分量が増える前の衣裳、冒頭、緑川夫人に扮する黒蜥蜴のシルバーグレーのドレスや、黒い別珍のドレスがとりわけ素敵。
日比谷駅から映画館に行く時、日生劇場前をよく歩く。貝殻モチーフのモザイクタイルを踏みながら、いつか中に入ってお芝居を観てみたい、と願っていた。曲線が印象的な内装に、シンプルながら華やかな「黒蜥蜴」の世界はぴったり。
建築物としての日生劇場。1963年竣工、村野藤吾設計。
http://www.nissaytheatre.or.jp/hallguide/theater.html
黒蜥蜴っぽく、黒い妖しい装いで、とクローゼットを眺めたけれど、私の洋服はだいたい黒く妖しいので、たくさんの中から迷うこととなった。新春だし、いち早く手に入れた2018年春夏のmameのワンピースで。刺繍の施されたシルクオーガンジーのカフスは、アンティークのハンカチからの着想だそうで、黒蜥蜴で描かれた時代にもぴったりだったかな。
Cinemetal T-shirts collection
L.A.から出張で日本にいらしていたりえこさんからいただいたCinemetal T-shirts、もはや恒例、いつもありがとうございます。
ブニュエル!イギリスのロックバンドBauhausオマージュ。デザインはブニュエル「アンダルシアの犬」へも目配せが効いていて。今年、私が目の手術をした時に「アンダルシアの犬」を思い出して怯える…と日記に書いていたのを読んでのチョイスだそう。色味が少なくて、私にはこのデザインが一番着こなしやすそう!
Cinemetal T-shirts
https://www.cinemetaltshirts.com/collections/all
過去にいただいたのは…増殖するコレクション
https://cinemastudio28.tokyo/2017/05/07/
ブニュエルといえば、12/23からイメージフォーラムで3本上映あり。このTシャツ着て通おうっと。
http://www.ivc-tokyo.co.jp/bunuelangel/
近未来
土曜、フィルメックスでシルヴィア・チャンの映画を観たので、最後に彼女を映画で観たのは何だったっけ?と考え、おそらくジャ・ジャンクー「山河ノスタルジア」ではなかったかしら。話は逸れるけれどジャ・ジャンクーの映画は中国語の原題は良いけれど邦題が残念なことが多いな…ノスタルジアとか、哀歌(エレジー)とか、湿っぽくて。
「山河ノスタルジア」、変な映画だな…と思ったけれど、その感想の理由は、最後のパートが2025年という中途半端に近めの未来で、ジャ・ジャンクーがまさかのSFを頑張って撮ったからかもしれない。ジャ・ジャンクーの考える2025年の生活、現在の延長線上にある、ずいぶん地に足のついた未来表現で、「やたらタブレットが大きくて透明」とか「デリバリーのバイクのデザインがちょっと未来風」とか、ゴリゴリのSF映画にありがちな、奇抜な未来に一足飛び!という高揚は皆無で、チープですらあった。
など、今日、ZOZOSUITのサイトを見て、あぁ未来って案外すぐ来るんだな、と思いつつ、あの映画を思い出したのだった。こういうの、すぐ試してみる方なのでZOZOSUIT、ろくに説明も読まず注文しておいた。楽しみだな、未来。
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