Cinema memo : 6月
GW最終日から喉痛と微熱があり、最近身近でインフルエンザに罹った人と似た症状だから戦々恐々として内科で検査してもらったら、インフルエンザでもコロナでもなく、風邪だった。医師曰く「最近どれも症状が似てるんですよね…」とのこと。確実にどちらかだろうと思っていたので拍子抜けして「え!では…普通に生活していいってことですか…?」と聞いたら、「はい!」とのことで、マスクをして普通に生活している。ロキソニン60mgをもらい、微熱はほぼ平熱に落ち着き、時々派手な咳が出る感じ。喉はやくなんとかしたい。
ちょっと先の映画の公開情報って、記憶も流れていってしまうから私はここにCinema memoとして書き留めて時々見返してるのだけれど、diaryを読んでいる人にも参考になっていると知って嬉しい。
おっ!と思ったのは6/8(土)〜6/14(金) 下高井戸シネマで、日替り上映『夜明けのすべて』公開記念 三宅唱監督特集。ラインナップ大充実!滅多に上映されず配信もない作品多し。私の推しの『THE COCKPIT』も観てほしい。下高井戸、東京東側の住人としては、かなり東京を横断する移動になるので行けるかどうか微妙だけれど…
http://www.shimotakaidocinema.com/schedule/schedule.html
『やくたたず』 ※同時上映
『NAGAHAMA』/『八月八日』※
『Playback』
『THE COCKPIT』
『密使と番人』
『ケイコ 目を澄ませて』
『ワイルドツアー』
『きみの鳥はうたえる』
三宅唱監督、何かのインタビューで北京含む中国の数カ所で特集上映されたと話されていて、あんな娯楽の限られた埃っぽい北京で(埃っぽいは関係ないが)?三宅唱作品が上映されるなんて…と感慨に耽ったけれど、監督いわく「ニッチな趣味を持つ人がいくら人口比率からは少数派だとしても、中国は人口が桁違いに多いので、けっこうな母集団になる」的な(意訳)ことを言っており、なるほど!と腑に落ちた。あんな埃っぽい北京で不意に三宅唱作品を知ってしまうと、カラカラに乾いた心身に(乾燥してるから)潤いが染み渡る気持ちになるだろうなぁ。
映写室
ピアノ&シネマ2024上映後、会場である横浜シネマジャック&ベティの映写室見学に参加しました。スクリーンのある2階?からさらに謎めいた階段を上がった3階にある。
入ってみると意外と広い!「ジャック」「ベティ」と2つのスクリーンに1つの上映室から投影できるよう、機材が2セット、反対方向を向いて設置してある。靴を脱いで入る必要があり、撮影は可能だがスクリーンに投影している映画が写らないよう配慮を、ということでした。
この右の機械がデジタル上映用、左のはフィルム上映用映写機。デジタルのほうは1日分の上映データを朝にセットしておけば良いらしく「朝にセットし忘れなければ1日触らずに上映できる」そうです。フィルム上映のカタカタカタカタ音も聴けて嬉しかった。だいぶ昔、通っていた京都のアングラ映画館が、映写機が客席の後ろにむき出しに置いてあったので(今考えるとすごい)、あの音にノスタルジーを感じる。
フィルム上映用のリール。バックヤードのかっこよさ。ジャック&ベティの3階、映写室に至るまでの狭い通路の両脇の壁が、懐かしいポスターやチラシが貼ってあったり、サイン色紙やDVD、映画本などが無造作に積まれていて、ひとつひとつ時間をかけて見てみたい魅惑の場所です。
直近の上映スケジュールが貼ってあった。映写技師の連絡用のノートが置いてあったりも。
映写室の壁のチラシのチョイスは、スタッフの皆さんの好きな映画なのかな、と思った。
ジャック&ベティでは時々映写室見学をやっているようなので、そのタイミングに合わせて映画スケジュールを決めるのも楽しいと思います。見学ツアーありがとうございました!
ピアノ&シネマ2024
サイレント映画ピアニスト・柳下美恵さんのGW恒例企画「ピアノ&シネマ2024」に伺いました。私が観たのはEプログラム。キッズプログラムとして、短編を組み合わせたり、映像に手拍子でみんなで音をつけたり、途中でそもそも映画とは?の楽しい説明があったり、上映後には8mmフィルム映写機で実際に映写したり、ジャック&ベティの映写室見学があったり、の盛りだくさんなお楽しみプログラム。鑑賞メモです。
■奇怪な泥棒(1909年/フランス/4分/フェルディナン・ゼッカ監督)
室内にあるモノが人がいないのに無重力で動くミステリーを楽しむ4分。黒い服を着て撮影し、黒の部分が消えることで透明人間がモノを動かしているように見える…という当時の撮影テクニックの解説があった。
■茶釜音頭(1934年/日本/10分/政岡憲三監督)
狸が化けてお寺に忍び込んだけれど捕まった…このままだと狸汁にされちゃう!きゃあどうしよ!なアニメーション。蓄音機から音符が出てきて和尚さんも小僧も踊る。狸たちも東京音頭を踊る。どうしようかな?を「あのてこのて箱」開けて考える。とにかく可愛い。めちゃ可愛い。狸も可愛いし、踊る音符も雲も、何もかもが可愛い。なんて可愛いのー!!政岡憲三は日本のアニメーションの父と呼ばれる人で、ああ、ここから手塚治虫やジブリへアニメーションの歴史が紡がれていったんだなぁ…と感無量。とにかく狸が…狸が可愛い!
■モダン怪談100,000,000円(1929年/日本/15分/斎藤寅次郎監督)
駆け落ち同然で山に心中にきたカップルが、その山に埋蔵金が埋まっている噂を知って…という物語。山でキャンプみたいなことをしてるけど、男がいかにも頼りない風情でキャンプもおままごとみたいに見える。カップルに悲壮感がなく、どこかカラッとしているのがモダンだな、と思いました。
■キテレツ発明家(1923年/日本/11分/ヒュー・フェイ監督)
タイトル通りキテレツ発明家のドタバタ劇。部屋の中にたくさん紐が吊るしてあって、ベッドから引っ張るだけで調理された朝食が食べられ、身支度も順番に紐を引っ張ると整えられる。いや、その紐を仕込む暇があるなら、普通に身支度したほうが早いね?と思ってしまうけれど、そう思わないのが発明家脳なのだろう。当時の車が鉄でできていた事実を利用した巨大磁石で車にくっついて移動するのは賢いアイディア。でもあんな強力な磁石、周囲の様々なモノの正確な稼働に影響を与えてしまいそう。主演ハリー・スナップ・ポラードはチャップリンを薄めたような顔の俳優で、表情は動かず、スンッとした表情でおかしなことをしでかすのが面白いタイプの喜劇俳優だな、と思った。
ピアノ&シネマ2024は5/10(金)まで連日開催中です。
https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3455/
新緑
GW後半は夏みたい。新緑がもっさもさしてる。近所の大学こと東京大学本郷キャンパスを、我が広い庭のような気持ちで活用して暮らしているのだけれど、桜が散り躑躅が枯れはじめ、ものすごい緑。『悪は存在しない』みたい〜と撮った1枚。
室内にいるのがもったいない気候なので、家ですることを外に持ち出すことにして、本郷キャンパスのテーブルと椅子が置いてあるテラス席で日記を書いているのだけれど、隣のテーブルが2組の中国人家庭で、おそらく両親とその子供が2セット。観光客ではなく暮らしている雰囲気で、会話は標準語に近い中国語が95%、5%は簡単な日本語の単語が混じる。話題も「先生が〜」と学校生活のことで学友なのかも。隣から聴こえてくるのでヒアリングがてら聴いてしまってすみません。
で、最近読んだニュースを思い出した。中国からわざわざここ文京区の小学校入学のため移住してくる家族が増えており、文京区の中でも名門小学校と名高い公立の学区を指定して不動産を探している、と。隣のテーブルの家族、おそらくこういう方々ではないか。ニュースで見た人々が隣に!私も「異国に暮らす外国人」の経験があってネガティブな気持ちは特になく、世相は刻々と変わっていくので、教育現場も変化が求められているんだろうな、と思った。
本郷キャンパス、1年を通じて5月が一番美しいので、混んでおらず静かで緑あふれる場所を求めている方におすすめです。
「学力高い」都内の中国人、文京区の小学校に“爆入学” 中国SNSで“3S1K”が話題に
https://news.yahoo.co.jp/articles/56f52f0cc05712f4a8cad500ca7ae203194c1838
ヤンヤン 夏の想い出
早稲田松竹で観た『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年/エドワード・ヤン監督)、35mmフィルム上映。過去に観た映画と再会して、傷の入ったフィルムのバチバチ音を聴くと、ずいぶん生きたなぁ自分もと思う。思いませんか。
http://wasedashochiku.co.jp/archives/schedule/40690
台北の文教エリアに暮らす一家の、結婚式で始まり葬式で終わるひと夏の群像劇。圓山大飯店で結婚式を挙げ、NJ(父親)は企業の共同創業者のひとりのようだから裕福な家庭なのだろう。娘は名門と呼ばれる学校に通い、一見何の不自由もなさそう。
そんな家庭と周辺にも日々ざわめきは生じ、怪しげな宗教にハマったり、恋愛がもつれて殺傷沙汰に巻き込まれたり。エドワード・ヤンらしい都市生活者の孤独が描かれる。
何度も観ており、かつては学生たちに近い年齢だったのが、いつの間にか父親母親と同年代かやや下?という年齢に差し掛かり、今回思ったのはNJ(父親)の素晴らしさ。善良なる存在であることを自らに課し、行動規範として人生の半ばまで遵守してきた人物の、さりげなくも地に足のついた存在感。何が起きても一家の軸が大きくは揺らがないのはNJが中心にいるからであろう。NJの真意ははっきりとは見えないが、再会した美しい初恋の相手を、今も昔も選ばなかったのは、ある種のエキセントリックさを周到に回避するNJなりの防衛本能なのかもしれない。
そんなNJの本心が垣間見えるのは、日本のクリエイター大田との会話においてで、彼らの交わす簡単な単語を繋げた英語の、流暢すぎないからこそ詩のようなやりとりが一言一句美しい。大田を演じるイッセー尾形が天使みたい。でも、こういう天使みたいな人って人生で時々出会って、自分も思わず誰にも話ししたことないような「いきなり本題」みたいなことを打ち明けてしまうよね。
NJ役の呉念真(ウー・ニ゙エンジェン)、エドワード・ヤンが亡くなった後に東京国際映画祭で追悼特集があり『ヤンヤン 夏の想い出』の後だったかに登壇した記憶があって、本人のお話も実直な言葉でとてもわかりやすかったことを覚えている。
御徒町で降りて吉池
5月3日、横浜シネマジャック&ベティへ。サイレント映画ピアニスト柳下美恵さんの「ピアノ&シネマ2024」のEプログラムを観た。個別の映画の感想は別に書くので、Cinema Studio 28 Tokyoアシスタントペンギン(AP)のリポートをinstagramに載せたのでまずは参照されたし。
https://www.instagram.com/p/C6h9_f-vzqU/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
快晴でこの上なくちょうど良い気温の横浜をぶらぶらし、JR関内駅から乗ったのが多少時間はかかるものの直通で上野に停まる電車で、「わぁ!御徒町で降りて吉池に寄って帰ろうかな!」って最高帰り道プランを披露したら、隣にいた見知らぬご婦人が、ふふっと声に出してお笑いになった。?とご婦人のほうを見ると「私もまったく同じことを考えてました」とおっしゃったので、あまりの偶然にわぁ!と和やな車内の空気感の醸成に寄与することに。
その電車は途中、線路に人が入りそのままお散歩したことによる停車(どういうこと?)や、ぼんやり御徒町を通り過ぎてしまい慌てて上野で降りるなど不意の事案が発生したものの、吉池には寄った。
吉池は御徒町駅すぐにある新潟系のスーパーマーケット。水族館か市場か?と見紛う新鮮な魚介、越後の地酒などがずらりと並ぶ。どの売場も圧巻で、地下1階エレベーター降りてすぐの海鮮お惣菜が並ぶ棚と地下2階のワンカップ酒が並ぶ棚が特に好き。少量ずつ買えるし、選ぶのも楽しい。
昨日は魚沼の「雪男」という地酒を買った。雪男がスキーしてるカップデザイン可愛い!
東京はどこも外国人観光客でごった返しているけれど、吉池はまだ平和な雰囲気。観光地化した築地より安くローカル感もあって楽しいはず、でも混んでほしくないので大きな声では言いたくない。
https://www.yoshiike-group.co.jp/
想起
早稲田松竹エドワード・ヤン特集、すでに何度も観ているので『エドワード・ヤンの恋愛時代』は今回パスしたけれど、4Kリマスタバージョンが最初に公開されたのが2022年の東京国際映画祭で、私にとっても久しぶりの鑑賞だった。
で、濱口竜介監督の『PASSION』のラストの展開のこと、今ひとつ理解できている気がしなくて、胸の中にずっとあれってどういう意味なんだろうな…と残り続けており、『恋愛時代』のラストの展開を改めて観たら、あ!『PASSION』のラストってこれかも!とブチッと2本の映画が繋がる感覚があった。ウディ・アレン的な都会の群像劇と謳われがちだけれど、扉/エレベーターの開閉を多用したすべてを見せない演出はエルンスト・ルビッチ的でもあって、自分の嗜好の点と点がスッと線で繋がるようだった。
この時の上映、濱口監督がトークで登壇し、エドワード・ヤンを語る時間があり、原題『獨立時代』の意味にも触れているので、どちらの映画も好きな方に是非Youtube観ていただきたいです。動画の中で語られる「東京国際映画祭が京都で開催された年があって、エドワード・ヤンの『獨立時代』が上映された」エピソード、私はその会場にいて、エドワード・ヤンのトークを聴いた。
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