平成最後の
平成最後の、という言葉を各所で目にする平成最後の1月。年が明けたら始めよう、と去年から決めていた身辺のモノの整理に盛大にとりかかっている。ほろ苦い記憶が宿るモノも、好きで所持し続けたモノも、私の平成を、平成のうちに可能な限り処分しようと思っている。
若尾文子映画祭の前売りを買ったらいただいたポストカード、可愛らしい和装の1枚を年始の挨拶がてら異国の映画好きの友人に送ってみたら、アヤコ・ワカオ!ミゾグチ!ジョンバヤシ(祇園囃子)!と喜んでもらえたようなので、好きで持っていたモノも、そんな感じで私の元から羽ばたいていくといいな。
角川から封筒が届き、次のリバイバル上映は京マチ子映画祭らしい。京マチ子さんが存命という事実を時折忘れそうになる。
2/23〜 角川シネマ有楽町にて。
http://cinemakadokawa.jp/kyomachi-70/
ラインナップにある『夜の素顔』という映画、びっくりするぐらい情報量の多い珍品なので是非観てほしい。京マチ子VS浪花千栄子の濃いキャットファイトも楽しめます。
リヒター|クールベ
1/20で終わる美術展に駆け込みシリーズ。ムンクとは別の日に、改めて上野へ。国立西洋美術館の常設内での展示「リヒター|クールベ」が目当て。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018richter.html
ゲルハルト・リヒターの自宅のダイニング・ルームには、クールベの風景画が飾られていて、それと隣りあう部屋に、リヒターの自作《シルス・マリア》がある――。
かたや、19世紀なかばに「生きている芸術(アール・ヴィヴァン)」を標榜してレアリスムを創始し、近代絵画史のとば口を切り拓いたギュスターヴ・クールベ(1819-1877年)。またかたや、1960年代に資本主義リアリズムの旗手のひとりとして頭角を現して以降、つねに現代美術の最前線に立ちつづけてきたゲルハルト・リヒター(1932年-)。まったく無関係かにも思える、それら新旧ふたりの画家の絵画を、後者の自宅の様子を模すようにして、美術館のなかで出逢わせてみます。
近代絵画史の「はじまり」に立っていたクールベと、その「終わり」に立ってきたリヒター。後者は前者の絵画を、どのように見つめてきたでしょうか。現代画家のまなざしを介して、国立西洋美術館が所蔵する過去の絵画を、すこし違ったふうに見つめ直すきっかけとなったら幸いです。
クールベは風景画、リヒターの「シルス・マリア」はピントの合わない写真のようなリヒターらしい画風の風景画、もう1点は抽象画。クールベとリヒター、同じ時代に生きていたなら気が合ったんじゃないかなぁ。それとも同じ時代に生きていたとしてもやっぱり、ダイニングに絵を飾るぐらいの距離感が望ましいのだろうか。展示はクールベ1点、リヒター2点、合計3点のみ。けれどこれが、なんとも味わい深い展示で、常設のちいさな一角でしばらく痺れて動けなかった。3点だけれど過不足なく、余白も香る編集力。
この展示を観たかったのは、オリヴィエ・アサイヤスの映画(こちら。邦題は『アクトレス〜女たちの舞台〜』)を観て以来、シルス・マリアという場所に興味を抱いたから。行ってみたい。
3点だけ鑑賞してさっと帰ってもよかったけれど、西洋美術館の常設を観るのが初めてだったので、ぐるっと回遊してみることに。美術に興味を持って勉強していた時期があったけれど(博物館学芸員免許も保有)、当時の興味は写真や現代美術にあったので、西洋美術館の存在は長らくスルーしていた。こんな豪華なコレクションを散歩がてら行ける距離で、ル・コルビュジエの建築で、500円で観られるなんて、お金の意味がよくわからないな。
映画好きとしては、父ルノワール(ピエール=オーギュスト・ルノワール)の「木かげ」という作品は、そのまま子ルノワール(映画監督ジャン・ルノワール)の『ピクニック』の舞台になりそうな木かげっぷりで、父と子、血は争えぬ…!とニヤニヤする楽しみもあった。
父ルノワールの「木かげ」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0183.html
ホン・サンス監督はアメリカで美術の勉強をしていた人と記憶しているけれど、以前、監督の講義を聴講した際、セザンヌに影響を受けたという言葉があり、以来セザンヌの絵を観るたびに反射的にホン・サンスのことを考える。
こちらの講義
「シカゴの大学に美術館があり、そこで初めてセザンヌの絵を観たときに衝撃を受けました。“もうこれだけあればいい、ほかに何も要らない”、そういうふうに思ったんです」
http://unzip.jp/pickup/jiyugaoka2/
西洋美術館の常設、週末は時間延長、無料観覧日も毎月あると知った。夕食後の散歩がてら通い詰めそう。
http://www.nmwa.go.jp/jp/visit/index.html
ムンク展
1/20で終了になる美術展が多く、心が慌ただしい。スケジュールの隙間を確認しながら、映画の予定をバチバチ決めていくのも判断力を要するけれど、美術展は開館時間と混雑度とのせめぎ合いで、映画とは別の要確認要素がある。
東京都美術館、ムンク展へ。
入場は30分待ちだったけれど、無事に入ってみるとさほど混雑も気にならず、案外ゆったり鑑賞できた。展示構成のシンプルさ、作品のサイズ、展示室の規模によるものだろうか。
なんとなく「叫び」の画風から神経質で気難しい人なのでは、と思っていたけれど、50代を超えたあたりで田舎の土地を手に入れ隠遁生活に入るものの、それまでの人生で出会った人たちを描いた絵を家のあちこちに大切に飾るなんて、なんだか可愛らしい人だな、と思った。創作生活のために孤独であるべし、と生涯独身だったそうで、ムンクのことを好きだった女性たちは大変だっただろうけれど(実際、事件も発生)、数年に一度アトリエを訪ねてのんびり話すような距離感の友達でいるぶんには、面白い人だったのでは…と勝手な妄想。
「叫び」は名作を観られた達成度はあったけれど、好きだったのは、北欧の夏の海辺を描いた作品群。
「夏の夜、人魚」
https://munch2018.jp/gallery/#&gid=1&pid=10
my bestは「二人、孤独な人たち」
https://munch2018.jp/gallery/#&gid=1&pid=19
ふたりなのに孤独、男女の間には距離があって、けれど同じ方向を見ている、その背中を描く。
私の北欧イメージは一度だけ行ったフィンランドの夏、ベルイマン(スウェーデン)の映画群、ムンク(ノルウェー)でつくられており、それぞれの国はよく知ると違いがあるのでしょうが、寒く涼しい場所の色数の少ない景色と人々、どれもどこか共通項があるように思う。いつか真冬の北欧、オスロのムンク美術館に行ってみたい。
*ベルイマンにまつわるエピソードで好きなのは、『ある結婚の風景』、私は再編集された映画版を観たけれど、もともとはスウェーデンの国営放送で放映されたテレビドラマで、視聴率が非常に高く、放映時間には街から人が消え、放映後に離婚率が上昇したらしいというもの。夫婦ドロドロ修羅場作品なので、あれをこぞって熱心に観るスウェーデンの人々って…と思った。
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