共生できない
『女王陛下のお気に入り』、楽しんだけれど、ヨルゴス・ランティモス映画だとやっぱり『ロブスター』が一番好きだな、と考えていたら、Netflixにあったので久々に観るの図。
家庭を持ち、子孫を残すことが義務付けられた近未来。妻に捨てられてしまった男デイヴィッドは街のルールに従い、はずれにあるホテルへと送られる。そこでは45日以内に自分の配偶者となる人を見つけなければならず、見つけられなかった場合は動物に姿を変えられてしまうという運命が待っていた。
こんな荒唐無稽で絶望的な設定を、丁寧に解説する冒頭部分が好き。コリン・ファレル演じる主人公は姿を変えるとしたら、ロブスターを希望するけれど、私はペンギンだな…鏡に自分の姿を写して、今日も可愛い♡ってうっとりしたいと思っていたら、ピシャッと「オオカミとペンギンはダメ」と拒否され、その理由が、
共生できないから、と。マイペースな振る舞いだからだろうか。同じ理由でラクダとカバもダメらしい。こんな設定なのに、最後まで観ると、愛って…と考えさせられてしまう監督の力業よ。
http://www.finefilms.co.jp/lobster/
ギンレイホール
春めいた目黒のフルーツパーラー。
どう考えても日記を毎日書くのは無理だなぁ。時間が足りない。あの映画もあの映画も観ながら書いていないけれど、しばらく日記は不定期更新です。7月中旬まで予定がみちみちに詰まってしまった。
ギンレイホール、今週は東出くん特集。瀬々敬久監督『菊とギロチン』、濱口竜介監督『寝ても覚めても』の豪華2本立て。キネマ旬報ベストテンを参考に映画を観る人にもお得な番組。
http://www.ginreihall.com/schedule/schedule_190309.html
主宰(=私)が共感というものにあまり興味がないほうなので(わかるわ〜とか言い合ってもな、と思う)、このサイトの執筆陣の映画の好みは見事にバラバラなのですが、Golden Penguin Award 2018では濱口監督の映画が3人から選ばれたのが感慨深かった。
『菊とギロチン』、見逃し続け、ようやく今朝ギンレイで観ることに成功。あのエネルギーの映画を3時間以上じっと観た後、さすがに『寝ても覚めても』用の気力体力は残っていなかった。通しで観る人すごい。が、東京でもっとも熱い2本立て。金曜まで。おすすめです。そして今日のギンレイ、朝から満席立ち見の盛況だった。私は着席できたけれど、立ち見であの映画を観る人の体力もすごい。
来週は『孤狼の血』と『寝ても覚めても』の組み合わせになるらしく、『孤狼の血』を見逃し続けた私はギンレイで捕まえる予定です。
http://www.ginreihall.com/schedule/schedule_190316.html
女王陛下のお気に入り
2月某日、『女王陛下のお気に入り』をシャンテで。ミッドタウン日比谷ができたとはいえ、相変わらずシャンテが好きだな。
http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/
ヨルゴス・ランティモス監督の新作を心待ちにしていたものの、オスカー10部門ノミネートなどずいぶんメジャー感ある華々しいニュースばかり耳に届き、耳を疑った。ヨルゴス・ランティモスが?それは私の知っているヨルゴス・ランティモスではないのではなかろうか。過去の作品もオスカーに絡んだことがあるとはいえ、私にとってのヨルゴス・ランティモス映画といえば、屋根裏部屋で膝を抱えて発禁本を愉しむような、薄暗い背徳感とセットだったのだから。そんな大手を振って表通りを闊歩するような賞賛なんて、そんなそんな。
しかし蓋を開けてみると、なんのことはない、ヨルゴス・ランティモス映画だった。ヨルゴス・ランティモスは世界に一人だ。痛風を患い、多くの子供を産んでは失い、うさぎに囲まれ、何でも手に入るのに何も手に入れていない情緒不安定で可愛らしい女王陛下。彼女の寵愛は裏の権力を手に入れることとイコールのように思えるから、ふたりの小賢しい女が頑張るけれど、女王陛下はシンプルなようでシンプルな女ではないから、ふたりに翻弄されながらも、おもちゃのように手玉にとって暇つぶしする。ふたりの女がそれぞれの方法で愛を示すけれど、女王陛下の底なし沼の孤独は、どんな愛の方法にも満足しない。
女たちがキリキリと宮廷政治を争う傍で、男たちは奇妙な化粧で顔を汚し、裸でキャッキャッと果物をぶつけあう趣味の悪い遊びに興じている、まったく男の立派さが描かれないところがヨルゴス・ランティモスらしい。女たちの衣装も、ソフィア・コッポラ的マカロンカラーでもなく、甘さのない無彩色で、時代考証など無視してデニム生地など使われていたのもモダーンで見事。
3人の女たちが抜群。最後まで女王陛下を嫌いになることがなかったのは、オリヴィア・コールマン本人の可愛らしさによるところだろうか。レイチェル・ワイズは相変わらず美しいけれど、ヨルゴス・ランティモス映画においては己の美しさに無頓着な女として登場するのも面白い。
私の前の列に、シャンテの観客層らしいといえばらしいことに、文化村が似合うような妙齢の上品なマダム3人組がいらして、「英国アカデミー賞でもたくさん賞をとったらしいの」「英国版大奥らしいわよ」「衣装が豪華で…」などCMなどで仕入れたと思われる映画にまつわる断片をキャッキャッと上映前におしゃべりされていたので、この方々にはヨルゴス・ランティモス映画への免疫はあるのだろうか…と軽く心配になったところ、上映後はエンドロールも終わらぬうちに速やかにだだだっと退場された。ヨルゴス・ランティモス洗礼。私ならヨルゴス・ランティモス映画に上品なお友達は誘わない。宣伝文句は何ひとつ間違っていないけれど、ヨルゴス・ランティモスの特徴は何も伝わっていない。映画の宣伝は難しい。
麻酔あれこれ
中野に向かう道すがら、路地で見つけた住宅のシャッター。これは…在りし日のワールド・トレード・センターでは。この住宅、911前からあるのでしょうが、この写真をシャッターに使うセンスとは一体。
私にとって面白い会話とは、その時々で興味を抱きながらも、ふわっとした疑問も多いトピックについて、その世界に詳しい人が教えてくれるという種類のもので、去年の手術以来、麻酔への興味は尽きず、ふわっとした疑問も日々募るばかり、麻酔医とお話してみたいけれど、私の社交範囲においてはさすがにお会いしませんね。
「せん妄」にまつわるこのニュース、
https://www.asahi.com/articles/ASM2N4RX3M2NUTIL01R.html
私は目覚めた時、人生最高の眠りから目覚めてしまった、今すぐにでもあの眠りに戻りたいという気分だったのだけれど、麻酔から目覚める時に淫夢を見がち、それは女性に多い傾向だと全身麻酔を2度経験した友人が言っていたのを思い出した。
それから『名探偵コナン』に登場する麻酔銃描写について麻酔科医に聞いてみた、というこの記事が最高に興味深かった。『麻酔科医ハナ』という漫画があることを知った、それは読んでみたい。
https://fuminners.jp/journal/entertainment/16146/
公開中の『女王陛下のお気に入り』が面白かったので、ヨルゴス・ランティモス監督の過去の映画も最高だったことをじわじわ思い出したついでに、『聖なる鹿殺し』の夫妻はどちらも医者で、全身麻酔プレイというブラックな笑いが仕込まれていたことを思い出した。ヨルゴス・ランティモス映画のいずれにも言えることだけれど、よく思いつくなぁ、そんな設定。
横道世之介
みづきさんからご連絡いただき、次回moonbow cinemaは3月2日、『横道世之介』。なんともチャーミングな映画で、何度も観たくなるけれど、意外と長い映画なので家だと集中力が続かない…と再見を見送っていた。上映は嬉しいですね。前田司郎さんの書かれるもののファンなのですが、この映画は高良健吾さんも今まで観た中でベストアクトだったし、なんといっても吉高由里子!この映画の吉高さんに恋しない人類っているのかな?ってぐらい最高の吉高映画です。
予約は2/23(土)からスタートとのことです。
https://moonbowcinema011.peatix.com/
チューニング
視聴環境を整え、意を決して自宅で『ROMA/ローマ』を観てみたの図。思っていたよりずっと静かな映画で、家で鑑賞するとどうしても注意力散漫になるので、体力気力じゅうぶんの日に再見してから何か書きたい。
アクションでもスペクタクルでもないけれど、叶うならばIMAXで観たいほどの美しい映画だった。私の周囲にはPCでこの映画を観ることを躊躇する結果、まだ観ていない人が何人もいるから、もしオスカーを多数受賞した暁には映画館で記念上映してくれたらヒットしそう。
こんなふうに映画館で上映されない映画がこれから増えることを考えると、自宅の視聴環境でしっかりどっしりした映画を観ることが普通、という未来に私の身体感覚のほうをチューニングしなければいけないのかもしれない。
https://www.netflix.com/jp/title/80240715
心残り
秋、新宿武蔵野館で『きみの鳥はうたえる』を観た時、すでに函館行きの手配を済ませていたので、ガイドブックを読むような気分で、彼らがどこで食事してどこで遊んでいるのか、店の名前をチェックしたりした。冒頭、佐知子が「いつもどのへんで飲んでるの?」と尋ねるセリフがあり、「僕」が「杉の子とか…」と答えたのを聞き逃さなかった。
その後、『きみの鳥はうたえる』を函館シネマアイリスで観たという札幌在住の友人に会ったので、おすすめの場所を聞いてみたら、即座に「杉の子」と教えてくれたので、これはもう行かねばならぬの筆頭!とgoogle mapにしっかり星をつけ楽しみにしていたのだが、
宿からも徒歩圏内で、どんな雪道でもたどり着ける…と向かってみたらなんと!冬季休業中だった。2/5から再開と書かれており、ちょうど2/5は朝、函館から札幌に移動する日だった。なんというタイミングのすれ違い。
旅行中、いかに効率よく行きたいところをを制覇するかを考えるの、わりと得意なほうだけれど、必ずこういった心残りが生まれもして、だからまた旅に出るんだなぁ。東京に戻ってすぐ、次は夏の函館に行かなければと思ったのは、「杉の子」に行ってみたいから。「海炭市叙景」の名前のついたカクテルを飲む予定。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~suginoko/
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