Hidden Figures

早稲田松竹、GW前半は『ドリーム』「女神の見えざる手』の2本立てで、朝から満席だった。
原題『Hidden Figures』は隠された人々…のような意味かな邦題はシンプルに『ドリーム』になったけれど、当初『ドリーム 私たちのアポロ計画』だったのが不評でシンプル化したのだったっけ。確かにアポロ計画の物語ではない…。60年代、黒人差別、女性差別を受けながら、NASAの躍進に力を尽くした実在の3人の女性たちの物語。
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
3人の女性を取り巻く夫、NASAの同僚、上司(ケビン・コスナー!久しぶりに観た)の差別→改心の描かれ方が、ややステレオタイプすぎるきらいがあったけれど、周囲の態度に変化をもたらし、平等に働く権利や家庭との両立を獲得していく過程が、彼女たちがあまりに優秀だからというシンプルかつ力強い理由によるもの、と描かれていたから、気持ちよく最後まで観られた。
60年代ファッションの忠実な再現も楽しい。この時代のファッション、スカートはひざ下、ネックレスはパールのみというこのNASAの職場のドレスコードほど厳しいと辛いけれど、働く女性にふさわしいきちんと感がある。働く女たちの装いのカジュアル化が進んで久しいけれど、気持ちがしゃんとしそうな装い、働くという行為そのものに似合って、見ていて清々しい。
そんな働く女たちを鼓舞するような音楽がまた素晴らしいね…と、エンドロールを眺めていたら、ハンス・ジマーの名前があったので…これはこれは御大のお仕事でしたか!と思った次第。
気ままなオブジェたち

あれもこれもと当初予定していたことの半分もできなかったけれど、天気もよく素敵なGWだった。5月5日こどもの日は、再びエルメスへ。5月のプログラムは『気ままなオブジェたち』と題された短編特集。エルメスの年間テーマに沿った映画上映、短編特集にこそプログラミングの粋が発揮されるように思う。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/716057/
・『午前の幽霊』ハンス・リヒター監督/1928年
ナチスによって音声版が破壊された短い映画。4月のプログラム『生きるべきか死ぬべきか』との連続性も感じられる1本目。当時の撮影技術をもって、映像で表現できることをありったけ試してみた!とのびのびした実験感覚が楽しい。これぐらいの時代の映画、帽子が小道具として出てくることが多くて、紳士にとって皮膚の一部のような日常の必需品だったのだなぁ。
・『事の次第』ペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイス監督/1987年
映画館より、美術館で流れるのが似合いそうなガラクタをドミノ倒しのように組み合わせたインスタレーション映像。けれど30分という時間も退屈しない。物ひとつひとつの特性を把握し、それぞれに何を加えれば(力、火、水など)物が動き、次の物へ力を加えるか、緻密な研究があったのだろうと思う。一回限りの実験としてほぼノーカットで撮られており、広大な工場跡のような場所で撮ったのかしら、と思うけれど、ひとつの物が次の物へと力を渡した後は、用済みとばかりふたたび映ることはないので、撮影現場を俯瞰で見たら、あちこちで何かが燃えたり水が漏れたり、なかなかの状況になっているのではないかしらん、と妄想しました。
・『ザ・ファースト・ラスト・ソング』ル・ジャンティ・ギャルソン/2002年
鍵盤を叩くたびにピアノの上のグラスが破壊されてゆく。山下洋輔が海辺で燃えるピアノを弾く映像を思い出した。
・『グッド・ラック・ミスターチャンス』ル・ジャンティ・ギャルソン/2004年
遊びの目的を達成できないトランプを製造する様子。良い子は真似しちゃいけません。悪質なyoutuberのはしり的映像。
・『燃えよプチ・ドラゴン』ブリュノ・コレ監督/2009年
男性の部屋にあるブルース・リーのゴム人形が、部屋にある様々なおもちゃや物と戦いを挑むが、天下のブルース・リーといえども物の進化には勝てない、ささやかでほろ苦い短編。小学生男子の妄想・おままごと・脳内をそのまま映像化したような無邪気なアホっぷり。こどもの日に観るのにふさわしい1本。ブリュノ・コレ監督の他の映像も観てみたい!
全部通して観ても1時間以内の手軽さ。5月、まだ予約可能な回もあり、エルメスで一度、映画を観てみたいという方にもおすすめです。
【本日更新】Cinema on the planet 007 Taipei Cinema Trip 後篇 台北電影散歩

本日更新しました。
映画にまつわる場所をめぐるリレー連載「Cinema on the planet」第7回は、私の台北旅行記。後篇は台北電影散歩。
旅の目的「台北電影節(映画祭)のメイン会場・中山堂で映画を観る」を早々に果たした後は、思いつきで街をうろうろ。映画祭のこと以外は何も調べてこなかったのが逆に功を奏したのか、興味関心にどこまでも忠実な行動の記録になりました。振り返ってみて、すべからく旅はこうでありたいな、と。写真豊富ですので、多くはスライド式で掲載しています。どの写真も、ぜひご覧になってくださいね。
夜市に台湾料理、ガイドブックに載りそうな観光名所も何ひとつ出てこない、ある映画好きの台北散歩、お楽しみいただければ幸いです。
http://www.cinemastudio28.tokyo
前篇「台北電影節(台北映画祭)」はこちら
http://cinemastudio28.tokyo/cinemaontheplanet_007_part1
台湾、人気の観光地なので頻繁に行く方も多いかと思います。登場する場所は28mapにマークしていますので、お役に立てば嬉しいです。
Cinema Studio 28 Tokyo Map (google my map)
PATERSON

ずいぶん前にギンレイホールで。『ベイビー・ドライバー』の併映は『PATERSON』だった。2本観た後、どんな気分になればいんだろう、という2本立てだったし、私は絶対『PATERSON』→『ベイビー・ドライバー』の順で観たほうが良さそう、という予想は当たった。どちらもいい映画だけれど、順番逆で観るのは辛そう。
ニュージャージー州パターソンに暮らすバス運転手のパターソン。毎朝、妻にキスをして始まり、いつも通り仕事に向かい、心に浮かぶ詩をノートに書きとめる。帰宅後は妻と夕食を取り、愛犬と夜の散歩に出かける… 一見代わり映えのない日常をジム・ジャームッシュ監督がユーモラスに映し出した7日間の物語! ジム・ジャームッシュ監督4年ぶりの最新作。
パターソン、妻、犬の場面が大半を占める中、パターソンの妻にばかり気をとられた。世の中の人々をパターソンタイプ、妻タイプに強引に二分するなら、確実に自分は妻タイプに該当するから。パターソンタイプの人々に、あの妻のように、そのノート、世の中に出しちゃいなさいよ?もっとおおらかに自己表現して生きるべきよ?って、ぐいぐい言っちゃってるはず。自覚していても、画面でどーんと見せられると、内省的な気分になるもの。この世にはパターソンのような、自分だけのノートに静かに書き留めるような言葉の愛し方があるのだということを、改めて思い知ったのである。
私はこうやって人目に触れるところに言葉を書くことは続けられるけれど、どこにも出さない自分だけの感情を静かに誰にも見えない場所に書き留めておくことにはさっぱり向かず、何度かトライしては挫折している。きっと詩も書けない。小津監督の日記のような、誰に会った何を食べたという事実を淡々と記録する種類の日記にも憧れがあって、トライしたけれど無理だった。世界とおおっぴらに自分を共有したい欲望もないけれど、とにかく「自分だけの」ということに向かない。パターソンの妻もそうなんじゃないかなぁ。突拍子もないことばかりどんどん実行に移しているように見えるあの妻も、彼女の中では筋道の通った思考と行動の因果関係があり、その一部始終が丸ごと人目に触れることに衒いがない。わかる、わかるわぁ。
興味深いのはタイプの違うふたりでも、一緒に暮らしていけるということで、愛ゆえに、ということなのでしょうが、パターソンが時折、唇の端に苦虫を噛み潰した表情をたたえることが気になりましたね。末永く幸せであってほしい。
BABY DRIVER

観た映画をちゃんと記録する2018年。ずいぶん前だけれど、ギンレイホールで観た『ベイビー・ドライバー』。
映画について前知識はなかったけれど、エドガー・ライトという監督名、知ってる気がするなぁ…と記憶をたどってみると『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』の監督だった!なんだかものすごいタイトルだけれど、あの映画面白かった!と俄然楽しみに。
http://www.bd-dvd.sonypictures.jp/babydriver/
天才的ドライビング・センスが買われ、強盗団の“逃がし屋”として働くベイビー。音楽を聴くことで、その才能が覚醒し、クレイジーなドライバーとして活躍してきたが、ウエイトレスのデボラと恋に落ちると… 幅広い年代から選ばれた楽曲と映像が完全にシンクロする爽快カー・アクション!
そうなの、そうなの。音とカメラワークと演技、緻密に全部シンクロしてるって事実に、最初は面食らってちょっと気恥ずかしくなったんだけれど、慣れるとリズムが気持ちよくて踊りながら観たくなった。映画館で、できれば爆音で観るべき1本。
音楽のことばかり語りたくなるけれども、とても褒められた仕事なんてもんじゃないいかがわしい仕事に就くベイビーが、ちょこちょこ登場する「この子はいろんな事情で今こんな仕事してるけどナ、ほんまはめっちゃ心根の優しい子なんやで」エピソードがラストで畳み掛けられる見事さこそ、鑑賞後の多幸感の素だったと思う。もはや保護者の気分で鑑賞。
銀座

GW初日。今年はGW前に旅行に行ったので、GWは東京で。数寄屋橋交差点の早朝。空は青々としておった。
なんだか身体が疲れてる…?と不審に思ったけれど、考えてみれば屋久島で25kmトレッキングの後、あらゆる交通手段で長距離移動した数日後なのだった。しかしまぁ喉元過ぎればなんちゃらとか言いますけれども、ほんまに過ぎたことは忘れていくんですねぇ…。

東京ミッドタウン日比谷にはまだ足を踏み入れていない。通りにあった地図にも、表示されていなかった。これから更新されるのかな。帰りに寄ってみようかな?と出来心が芽生えたものの、ごうごうとした人の波が明らかにミッドタウンに向かっていて、混んだ場所嫌いとしては当分無理では…と、すごすごメトロに乗った。

銀座、メゾンエルメス4月の上映はエルンスト・ルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/703706/
おそらく二桁回数は観ていると思うけれど、今回は過去最高に集中して観た。昨今の永田町方面のゴタゴタにさすがにニュースを追う気力すら奪われているけれど、国会中継って音を消して眺めてみれば、クラシカルな内装の室内に仕立ての良いスーツの大人が集まって、ちょっと映画みたいっていつも思う。現実は耳を疑う茶番が繰り広げられているけれど、音量を上げると、実は『生きるべきか死ぬべきか』のような粋な物語が演じられているのです!という世界線を妄想…って、現実逃避も甚だしいですね。
ベルリン生まれのルビッチはナチスによってドイツ市民権を剥奪されている、と思えば、笑いに巧みに内包された哀しみがじんわり弾け、セリフのひとつひとつも染みてくる。嫌味も反抗もエレガントに、しかし確実に急所は狙って、こんなふうに振る舞える自分にいつかなれるだろうか、と観るたびに考える。
しかし、ルビッチ映画があればもう世界は充足し、他の映画は要らないのでは?と観るたびに思ってしまうのは、よろしくない傾向。
シェイプ・オブ・ウォーター

観た映画は遅くなっても全部記録しようと決めた2018年、『シェイプ・オブ・ウォーター』は公開日(3/1)夜に観た。
この3月はなかなか壮絶で、記憶がもはや薄いけれど、月のはじめにこの映画を観たことは、よき思い出として私の心をあたため続けた(…この雑な英文和訳のような文章よ…)。3月1日の東京、強い雨が降って止んだ後の日比谷の街は冬の埃がさっと払われたようにみずみずしく、春の予兆に満ちていた。
シャンテの前方の席で、私は今、とても素敵なものを観ている!と思いながら眺めた。ずっと読みたかった絵本をようやく手にしてめくったような。めくる速度も早すぎず遅すぎずちょうど。そんなことは滅多にあるものではない。
主人公の女性が暮らすアパートは昨今観た映画の中の建物のうち、とりわけ住んでみたいと思った。ほとんどお客さんが入っていないガラガラの名画座の上の部屋!大家さんは映画館の館主でもあって、チケットブースに家賃を払いに行くと、無料券をあげるからどうか映画を観に来てくれ!って懇願される。
そんな部屋に暮らす女性は、女優のように見目麗しいわけではないけれど、仕草や身体のラインに艶やかさがあって、ただ単純に彼女の人生にその相手がまだ登場していないだけで、恋に落ちる準備はいつだってできている、という女性のように見受けられた。相手が人でも、幽霊でも、映画の中の俳優でも、怪物でも、モンスターでも。そして目の前に現れた”彼”は、造形的に美しく、もう相手として十分ではないか、この人だよ、と納得できる引力があった。恋をした女性が、みるみるうちに艶やかさが増していく、微細な変化も見逃せない。
おそらく最新技術がふんだんに投入され、気の遠くなるような時間をかけて作られたのだろうけれど、描かれるのが、アパートの階下で上映されるような、映画の創世記からとっくに存在していたクラシカルな愛の物語、という点がとりわけ好みだった。こんな、ずいぶん手の込んだ遠回りを辿りながら、あらすじだけ抜き書けばたった一行で終わりそうなシンプルな映画が生まれることが贅沢だと思った。私の好きな種類の遠回り感、存分に味わった。
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
名画座にまわった時に、また観ると思う。
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