BONCHI!
本日、日本と海の向こうのあちこちで飛び交うメールの中で話題にあがった「ぼんち」(市川崑監督)に関して、女優陣も見事ながら、私がとりわけ好きなのは、冒頭にある雷蔵さんの風呂あがりシーン。と思っていたけれど、ちらっと見てみたら雷蔵さんは裸なだけで風呂上がりではないのかな。ふわふわのパフで女中が身体に粉をはたいていく。ベビーパウダーを天花粉と呼んでいた大阪生まれの祖母を思い出す。てんかふん。
ぼんち、初めて観たのは、みなみ会館でした。
鳥
15時、仕事中ふと気配を感じて外を見たらオフィスのバルコニーにいたお客さん。
目が丸くてのんびり休んでてふっくらして毛もふさふさしててカラスって自覚なさそう。ペンギンの化身…?
ヒッチコック「鳥」の鳥たちとは対極の、のどかきわまりない鳥を観たので、 かえって鳥の凶暴性も再確認したくなり、「鳥」を観たくなったけれど、シネマヴェーラの特集ではかからないのね。映画館であまりかからない。
12/23〜 ヒッチコック特集
http://www.cinemavera.com/preview.php
ヒッチコック・ヒロインではとかくグレース・ケリーがもてはやされがちだけれど、私は「鳥」「マーニー」のティッピ・ヘドレンが好き。けれど、撮影中のエピソードを読むと、ほんと昨今話題のハリウッドでのハラスメントって昔から脈々と続く悪事だったんだなぁって哀しく思う。自分の好意に応えてくれないからって作り物と嘘をついて本物の鳥に女優を襲わせる監督…なんちゅうバード・ハラスメントやねん。憤怒!
秋のフレーム
電気を点ける前の会議室、眺めが絵画。東京は秋。終わろうとしているけれど。映画祭やら仕事やらで屋内ばかりにいるうちに、季節が進むスピードについていけなくなっておる。
秋、どう撮っても美しい季節だし、秋の映画ってたくさんあるでしょう。と思い出そうとしたけれど、パッと思いついたのはアニエス・ヴァルダ「幸福」のラストシーンだけであった。他にもっと秋の美しさを捉えた映画はたくさんあるだろうに、あの映画のあの場面のうすら怖さがその他の映画記憶を上書きした。
この芥子色のニットの秋!
映画祭が終われば落ち着いて文字が書けるかと思ったおったが、それは甘い考えというものだった。週末からペースを取り戻したい。
最高殊勲喫茶店
今年、デザイナーあずささんに連れて行っていただいて知った有楽町の喫茶店・ストーン。2度しか行っていないけれどお気に入りの店2017にランクイン。その名に違わず石の存在感が強い。祇園の喫茶「石」も好きだし、無骨かつ繊細な石のルックスと喫茶の組み合わせ、フェミニンな内装の場所が苦手な私にとっては至高である。
食器やカトラリー、内装も甘さが排除されていてかっこいいの。外に出るとクリスマスだからって飾られたリースもシンプルで、センスいいってこういうことよなぁ…と見惚れたの図。頭がヒマな時のお気に入り妄想・川口浩とアフターファイブにデートするならどこ?案件、ストーン、ぴったりじゃない(自問)?背広にコート姿のイカした浩が、チェッ遅いんだよキミ、って奥から不機嫌そうに出てきそう…。
史上最高の浩映画「最高殊勲夫人」は1960年の映画、ストーンは入居する有楽町ビルヂング開業に合わせて1966年創業と、映画の方が年上なのであった。
この日、ストーンの窓際は白髪混じりの紳士淑女に占拠され、貸切宴会場のような親密さと熱気に溢れていた。繋がりが見えづらい団体だったけれど、年齢が同じゾーンと推察、同窓会の帰りでは?と結論。そして男子はさっさと切り上げ帰って行くけれど、女子は居座り傾向にある。女子はいくつになってもお喋り好きなんだなぁ。浩も生きていれば81歳、あんな感じだったのかなぁ…妄想…。
ストーンのある有楽町ビルヂング、気になりながらも未踏の映画館・スバル座が入っている。観たい映画がかかったら行こうと思っているけれど、なかなか観たい映画がかからない。スバル座で遂に映画を観て、帰りにストーンで珈琲のコース、来年こそはッと拳を固めておるところである。
http://subaru-kougyou.jp/movies/
血を吸うカメラ
土曜、エルメスで観た「血を吸うカメラ」、原題はPeeping Tomで「覗き魔」の意味らしい。1960年のイギリス映画、マイケル・パウエル監督。
メゾンエルメス、サイトでの紹介はこちら。受付でいただける美しいリーフレットで、いつも楽しみにしているアレクサンドル・ティケニス氏のテキストもwebで読めるようになっている!あらすじは以下。
圧倒的な恐怖の前で、人はどんな顔を見せるのか--。映画の撮影助手をしているマーク・ルイスは、一見、どこにでもいる平凡な青年。そんな彼が、恐るべき犯罪を次々と計画し実行していく。マークの亡き父は、人間の「恐怖」についての研究に生涯を捧げた学者で、幼いマークはその実験材料だった。やがて青年となったマークは、女性の断末魔の、恐怖におののく表情に途方もなく惹かれるようになり……。
時代に先んじて猟奇殺人犯の心理を描いた本作は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』と並び称されるサイコ・ホラーの金字塔。巨匠マイケル・パウエルの問題作にして傑作である。
古い映画ながら、視覚刺激の連続で見飽きなかった。物語はトラウマものと括ってしまうと味気ないけれど、幼少期に親から植え付けられた恐怖が、大人になった青年の身の上でも再現され、愛する人に出会ったがゆえに、自らの歪な欲望と、愛ゆえに生じた希望の間で葛藤する。あらすじにあるとおり、主人公の血を吸うカメラの餌食になり、恐怖におののく女の表情が度々登場し、マイケル・パウエル監督といえば最近「黒水仙」をDVDで観たばかりだったので、監督自身が気のふれた女の表情や叫び声を撮ることに欲望があって、主人公は監督自身の欲望のデフォルメなのではないか、と邪推した。
ファッショナブルな映画でもあるけれど、女たちの装いの華やかさより、主人公の端正な着こなしや後生大事に抱えるカメラを包んだ使い込んだ革の鞄を目で追った。そしてインテリア!主人公の部屋は狭い生活スペースとその奥にある秘密の広い部屋で構成されており、広い部屋は彼が撮った映像を現像、上映する場所。現像に使う薬品の入った瓶がずらりと棚に並び、スクリーン、フィルム映写機、そして名前の入ったディレクターズ・チェア!映画好きにとって夢のような部屋なのに、スクリーンで上映されるのが殺人映像というのが切ない。
カタカタと映写音に包まれ、撮った映像を確認する主人公を、スクリーンで眺める観客である私の二重構造、確かに彼は歪んだ覗き魔であるけれど、私もまた彼の欲望を時空を隔てた場所で興味深く眺める覗き魔。
この映画は、1960年のイギリスでは受け入れられず、マイケル・パウエル監督の権威は地に落ち、やがて映画界から追放されるに至ったのだとか。早すぎたということか。101分を存分に楽しんだ私は、失意のマイケルの肩に手を置き、大変やったな、私は好きやったで。と伝えたくなった。
過去の上映アーカイブ、アレクサンドル・ティケニス氏の文章つきでwebに揃ってるの発見。嬉しい!
幸福
今週はとにかく、夏の疲れをとることを最優先ミッションとしており、火曜にして徐々に身体が軽くなってきた。夏の間に観た映画の所感メモ。
アニエス・ヴァルダ&ジャック・ドゥミ特集から、アニエス・ヴァルダ「幸福」。絵に描いたように幸福な夫婦、夫が愛人を作り、悲劇を招く。オープニングとラストが、妻が入れ替わっただけの同じショットで戦慄が走る。彼にとっての妻とは、切れた電池を入れ替えるような、取り替え可能な存在なのか…という物語のタイトルが「幸福」。アニエス…怖いよ…。
不倫がきっかけで何らかの関係が破綻してゆく物語は、映画において一大ジャンルを築いており、現実世界で誰が誰とどうこう…に、ちっとも興味がないので、フィクションにおいてはなおさら、物語として面白いかどうかだけが関心事項で、登場人物たちがどんな性格を持ち、どんな振る舞いで、どんなオチに至るのかを昆虫観察のように眺めてしまうけれど、とかく「脇が甘い」「口が軽い」は不倫における二大禁じ手なのではないかと思う。と書いて、ハッ!それって不倫に限らず、すべての人間関係においてですね!と思った…けれど、このまま書き続けるとして、「脇が甘い」ゆえに悲劇を招く例はトリュフォー「柔らかい肌」など。一方、「口が軽い」ゆえに悲劇を招く代表例が、この「幸福」だと思う。
とにかく!この夫が!何も考えてない、シンプルでアホな男で、彼にとって不倫とは難易度の高い行為なのに、なにぶんシンプルでアホだから、これは俺には難しい!って気づきもしないで、やすやすと手を出し、一番知られてはいけない相手にニコニコペラペラと喋り、何の罪のない人が何故か悲劇的展開に至る。そんな男を物見遊山気分で観てみたい方には、鑑賞をおすすめいたします。
久しぶりに観てみた今回、ハッとしたのは、愛人が郵便局で働いていて、夫が初めて彼女を誘い、外で会うカフェのシーン。小さなテーブルを囲み、お互いがお互いを見ている。ショットが素早く切り替わり、夫の視線、愛人の視線をせわしなく往復する。はじまりは視界は広くカフェの風景の中にいるあなた、を捉え、隣の席の客や、ちょっとしたインテリアにピントが合う瞬間がある。時折、近くにある「誘惑」の文字が意味ありげに捉えられ挿入される。そんなショットを重ねながら、徐々に、目の前にいるあなたにだけ、くっきりピントが合っていく。はぁ!このシーン、とてもかっこよくて痺れた。その他大勢であったはずのあなた、どういうわけかあなたばかり目で追ってしまうの、なんて恋のはじまりを、こんなふうに撮った映画が他にあっただろうか。
ヒリヒリする筋書きながら、物語を成立させるための要素がいちいち面白くて目が離せず、アニエス・ヴァルダの映画の中で、私は特に好き。
http://www.zaziefilms.com/demy-varda/
Week End
北海道土産のアスパラカントリークッキー、ほんのりチーズ味。お酒にも合いそうなほどよい塩気が美味しかった。千秋庵のお菓子、どれもパッケージデザインがいい。「スキー板を履いた熊が鮭を背負う姿」がレリーフになったお菓子の名前が「山親爺」って、なんちゅうセンス。
ジャンヌ・モローに続き、ミレーヌ・ダルクが亡くなったそうで、ニュースを読んで、フィルモグラフィもチェックした。画面に登場すると、何を着ても似合う身体ばかり目で追ってしまう人だった。ゴダール「ウィークエンド」が記憶に残っているけれど、強烈な渋滞シーンばかり思い出し、ミレーユ・ダルクの欠片は記憶のどこに。
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