TIFF2018/三人の夫

 

東京国際映画祭で観た映画メモ。コンペからフルーツ・チャン(陳果)監督『三人の夫』。映画祭で観る映画は事前情報が少ないので、短い作品紹介文と小さな写真で判断するけれど、この映画は写真の女優の表情が気になって、監督名を確認するとフルーツ・チャンだったので、!!!とチケットを予約した。

 

 

しかし写真しか見ていなかったので、あらすじを把握していなくて…。始まる直前に、どういう話だっけ?と確認し、どうやら濃厚そう…と身構えていたら、どうやらどころか非常に濃厚だった。ただ座って観ただけでどっぷりエネルギー消費し、つまらないわけではないのに101分がずいぶん長く感じられた。

 

https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP14

 

ムイは常人離れした性欲に苦しんでいる。 父親はムイを年老いた漁師に嫁がせ、ふたりの男は彼女に客を取らせて金を稼ぎ、一石二鳥を得る。彼女と驚くようなセックスを体験した青年がすっかり恋してしまい、やがて3人目の“夫”となる。しかし彼だけではムイを満足させることは出来ず、結局、客を取らせ続けることになるが…。

 

映画の70%は裸で喘ぎ声なので、誰にでも薦められやしないし、好き嫌いも分かれそう。日本で公開されたとして成人指定で、ひっそり単館の特集でかかるのだろうな。フルーツ・チャンも「これはヒットするような映画ではないから、予算をかけずに短期間で撮った」と潔く言い放っていた。

 

タイトルどおり三人の夫が登場し、三人ともどこかが欠落した存在で、フルーツ・チャンの他の映画同様、景色も匂いも街がごろっと映っているから、三人はそれぞれ香港という街を巡る何某のメタファーと深読みできなくもないけれど、そんなことに思考が至る以前に、映像の刺激が強すぎて、ただ眺めているだけでワクワクした。

 

何よりも、ムイという女性。舟に暮らし客をとるムイは神話に登場する水生動物のようなルックスで、遠くから眺めるとつるりと滑らかそうに見えるのに、近づくと肌がごつごつ硬いことに気づくような、イルカやトドのような肌の質感を持つ女。あまりに体当たりの、潔い脱ぎっぷりに、クロエ・マーヤンという女優のことはよく知らないけれど、ポルノが本職なのかしら、と思ったほど。ドテッとした身体をつくるために体重をぐっと増やして撮影に臨んだらしい。自らをそんな身体に変化させ、脱ぎっぷりが良いというだけではなく、身体のあんな場所やこんな場所まであけっぴろげにカメラの前で開いてみせる。女優の魅力と脱ぎっぷりの良さは比例しないと思うけれど、この映画のクロエ・マーヤンは、もうなんだんかそんな肝の据わり方をまざまざと見せていただいてありがとうありがとうと、裸体に向かって拝みたくなる人だった。

 

クロエ・マーヤンについてしか書いていないけれど、私にとってはクロエ・マーヤン1000%の映画なのだった。

 

観終わると、フルーツ・チャンを囲んでのトークセッションが1時間もあった。

 

 

右端がフルーツ・チャン監督。中央がクロエ・マーヤン。体重を18kgも増やして戻したそうで、どうやって戻したんですか!って会場にいた人々は聞きたかったであろう。映画の中ではほぼセリフがなく喘ぎ、呻くだけだったので、ティーチインでようやくクロエ・マーヤンが話す姿を観ることができた。挨拶でいきなり京劇の一節を歌ってくれてサービス精神満点。いろんな深読みが語られるのを制するように、フルーツ・チャンが、これはシンプルな映画なんだ!種明かしをするのではなく、ただ観てくれればいいんだよ!と話したのが印象的だった。Don’t think, feeeeeeel!!!

 

 

撮影方法についての質問から話が流れ、監督自身のエピソードとして「若い監督に、映画を撮ったから観てくれと頼まれたから観たことがある。意見や感想を求められたけど、映画というのは監督がこうしたいと思って撮った、そして出来上がった、それだけなんだよ」と、きっぱり語ったのが清々しく、なにしろ『三人の夫』を観た直後だっただけに印象に残っている。

 

それから、フルーツ・チャンは質問に最初は北京語で答えようとするけれど、途中で「やばい!俺、こんな複雑な話できるほど北京語、上手じゃないわ」ってアチャー!の表情を浮かべた後に広東語に切り替える、というのを、いちいち繰り返していたのがキュートだった。