あさがくるまえに

早稲田松竹で観た「あさがくるまえに」。カテル・キレヴェレという若き女性監督。
サイト(こちら)のあらすじより。
ル・アーヴル。夜明け前、ガールフレンドがまだまどろみの中にいるベッドを抜け出し、友人とサーフィンに出かけたシモン。しかし彼が再び彼女の元に戻ることはなかった。帰路、彼は交通事故に巻きこまれ、脳死と判定される。医師はシモンの両親に移植を待つ患者のために臓器の提供を求めるのだが…。
パリに住む音楽家のクレールは末期の心臓病である。生き延びるためには心臓移植しか選択肢はない。しかし彼女は、若くない自分が延命することの意味を自問自答している。そんな時、担当医からドナーが見つかったとの連絡が入る――。
最前列で観ていると、冒頭のサーフィンのシーンの迫力に圧倒された。あらすじを把握せずに観始めたけれど、この後に何らかの不幸があるのだろうな、と予言するような波の迫力。波と戯れる生の極みにあるシンプルに若い青年たちと猛々しく死を匂わせる波との強いコントラストがそのまま生と死のあわいを無言で表現していた。
物語そのものに心動くというより、タハール・ラヒムはじめ昨今のフランス俳優陣にさほど明るくない私でも、それなりに見覚えのある俳優が何人も出ているのに、彼らが群像劇の一部としてうまく周囲に馴染み、うまく気配を消しており、結果、失われようとする若い命や、彼の身体が動いていた頃の小さな恋の思い出など、映画のフレッシュな部分が際立って見えることに心動いた。心臓を移した後の身体なんて、肌もなめらかで彫刻のよう。こんなふうに若さを扱えるのは、監督自身の若さゆえなのだろうか。横たわる女性の目のクローズアップで映画が終わったことも、「あさがくるまえに」を印象深く記憶したことの理由のひとつとして、記録しておきたい。
https://www.reallylikefilms.com/asakuru
連休

連休、静養→回復に勤しんでいたせいか、to do listをほとんど消せておらぬが、来週はさほど仕事も立て込まないことが期待できるので、明日からの自分がんばれ。ノーザンライツ映画祭と早稲田松竹で計3本、映画を観た。
早稲田松竹、「あさがくるまえに」「グッド・タイム」の2本立ての後、夜は「Pola X」がかかるという、わー強いわー、3本続けて観た人は、どういう気持ちになればいいわけ?と問いたくなる番組。「Pola X」はパスしたけれど、2本立てどちらも素晴らしかった。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/nowshowing.html
特にようやく観たサフディ兄弟「グッド・タイム」、これはもう、映画館でこそ観るべき1本で大満足。アップリンクよりスクリーンの大きな早稲田松竹まで待って良かった。「コズモポリス」で観て以降、ロバート・パティンソン、気になる俳優だけれど、「グッド・タイム」の彼、最高じゃない?!ロバート史上最高スコア叩き出した!金メダルや(オリンピック期間らしいテンション)!
次はどんな映画に出るのかな、とつらつら考えていたら、間もなく始まるベルリン映画祭で、新作がかかるもよう。「ダムゼル(原題)/Damsel」、ミア・ワシコウスカとの共演で、なんと西部劇…あ、西部開拓時代とあるだけで、西部劇ではないのか。西部もの。写真の男はロバート・パティンソンだと思うのだけれど、肌の色も笑顔もなんだかイメージと違うし、「グッド・タイム」と同じ俳優とは思えない。俳優さんってすごいですねぇ。
https://www.cinematoday.jp/page/A0005836
情報摂取

日劇が閉まって哀しい気持ちでいたのに、平日が始まってみると慌ただしさに哀しみも紛れ、少しずつ日暮れが遅くなってきていることを喜び、新しい季節に新しい映画館が生まれることを楽しみにしている自分がいるのだから、流れる時間は人を変えるもの、薄情なものですね。
花椿最新号の表紙はソノヤ・ミズノ。「ラ・ラ・ランド」でも素敵だったけれど、断然「エキス・マキナ」が素晴らしかった。あの意志の強そうな身体をひっさげて、変な映画にどんどん出てほしい!
花椿、毎号とても楽しみにしていて先週もらったけれど、テーブルの上に置いたまま1週間開かなかった。さっき4分の1ほど眺めてみて、残りはいつ読むかなぁ。貪り読むわけではないけれど、花椿のことは好き。最近、情報摂取の頻度や速度についてぼんやり考えてみて、私と花椿の距離感ぐらい、マイペース、つかず離れずの距離で「新しく素敵なこと」には接していきたいな、と思う。たくさんの情報を熱心にチェックして自分だけのとっておきを探して見つけることや、どんどん更新されるものを待ってました!と受け取りに行くのは、もう自分の生活には馴染まない。
ずいぶん前、夜中までやることが溢れていた頃、日付が変わる直前に滑り込みで日記を更新していたある日、見知らぬ方からメールをいただいて、彼女も当時の私と同じぐらい夜が長く、何かを制作している間に日付が変わり、あ、日記、更新されてるかな?って私のサイトをチェックしてみて、されていると、わぁ!という気分で珈琲を淹れ、飲みながら読みます。と書かれていた。私にとって書くことが日課で、彼女にとって読むことが日課。自分の書くものが、誰かの時間の区切りになっているとは思いもよらず、不思議だし、嬉しく思いました。お会いすることはなかったけれど、時折、彼女はどうしているんだろう、もう生活も変わったかな?と、ぼんやり考えます。
28はペンギンの歩行のようにのんびりしたスピードで更新されるサイトだけれど、私と花椿のように、マイペース、つかず離れずの距離で楽しんでもらえたら嬉しいな、と2018年初頭は思っておる次第です。
物語る人々

銀座和光の最新ウィンドウ。色がどんどん変わって、赤になったり青になったり。ここで写真を撮るとガラスに反射した交差点界隈のビルや光が映り込むの、胸がキュッとする。
テーマは「情」。赤は女心、青は男心、だそうです。
https://www.wako.co.jp/display/
小栗さんが連載「One movie, One book」で取り上げていた千野帽子さんの著書「人はなぜ物語を求めるのか」。人はなぜ物語るのか?は、ぼんやり考え事する時のネタとして私の脳内によく登場するトピックなので興味深く読了。私は物語そのものより、「物語り方」とか「物語る角度」とか「物語を成立させるための構造」などに興味があるタイプだと思う。エモーショナルな性格ではないし、そもそも他者にすごく興味があるわけではないので、「感情移入して泣く」とか、そんな気分にまったくならないし、さっぱりよくわからないのに、これだけ物語に触れ続けているのは、そもそも物語って何…という方面に興味があるのかな、と。
以前、何かで読んだことに、人が朝起きて1日を終えるまでに目にしたものをすべて言葉にすると文庫本24冊分になる、という説があるらしく、なんという言葉の海!そんな中から何を拾って順序を組み立て言葉を選ぶか、という作業、例えば「日記を書く」という行為においても、さりげなく「物語ること」は成立している。さらに書く文字数には限りがあるので(毎日、文庫本24冊分を書く人はいない)、いかに総括して書く能力に優れていたとしても、零れ落ちる分量のほうが圧倒的に多く、SNSが発達して人の物語る頻度や道具が増え、同時に「よく知りもしないくせに」的諍いが絶えないのも、必然と感じる。
ここ数年、映画を観るうち、これはいったいどういう心理なのだろう?と、解せない部分も多いながら、その「物語りたい欲」や「物語る手法」に興味が湧いたのは、監督が自分自身に起きたことを、自分自身が演じ、映画に仕立て上げた映画を何本か観たこと。
例えば、ヴァレリー・ドンゼッリ「わたしたちの宣戦布告」。
http://www.outsideintokyo.jp/j/interview/donzelli&elkaim/index.html
監督が恋に落ち、子供が生まれ、子供の病気を乗り越えるけれど、二人は別れてしまう、という一連の流れを、監督自身と元夫、つまりこの現実の当事者が演じる映画。
サラ・ポーリー「物語る私たち」は、兄弟の中で自分だけ父親に似ていない、と言われていたサラ・ポーリー自身が、華やかだった母親の人生を追ううち、出生の秘密に辿り着くドキュメンタリー。
監督自身ではないけれど、別の映画の企画のために演じてくれそうな女性に会ったら、彼女自身の恋のエピソードが強烈で、そちらをその女性主演で撮ることにした、というサフディ兄弟の「神様なんかくそくらえ」。
http://realsound.jp/movie/2015/12/post-631.html
こういった映画を生み出す心理って「再現することによって乗り越える」欲…ということなのかな?と考えると、映画をつくる、自分を演じる、など、数多の表現方法の中から、これなら自分にもできるかな?という方法を選択し、自分に起きた出来事を物語にして、過去のものにしていく、手の込んだタフさに圧倒されると同時に、偶然かもしれないけれど、たまたま興味を持ったこれらの映画が、女性監督、女優自身、女の物語であること、を、ぼんやり考え続けている。
スーパーブルーブラッドムーン

22時前、御茶ノ水を歩いていたら、聖橋あたりに人がわやわやと集まっていた。みんな上空を見つめているので、真似して見上げてみたら、皆既月食の夜だった。スーパーブルーブラッドムーン。iPhoneカメラの限界を感じる1枚です。梅干しみたい…。
そんな時間に聖橋にいたのは、アテネフランセでハンガリー映画「心と体と」上映&マスタークラスに参加する、贅沢な時間を過ごしたから。
http://eigabigakkou.com/news/info/8857/
講師:イルディコー・エニェディ(『心と体と』監督/ハンガリー)
大九明子(『勝手にふるえてろ』監督)
司会:矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)
めちゃくちゃ豪華。最近、作家やコラムニストが映画のトークで登壇することが多いけれど、面白かったためしがないので基本、避けている。映画の作り手2人を中心に、矢田部さんの素晴らしい司会で進行される約90分。夢と鹿の登場する映画「心と体と」も期待以上で、そして「勝手にふるえてろ」の大九監督が対談相手に選ばれるのも納得のキャスティング。映画の感想は追って書きます。公開は4月。
しばらくかかりきりになっていた仕事をなんとかリリースでき、1月も終わり、月食も観て、節目感の強い1日。
鹿と眠り

眠そうな鹿。お正月、奈良公園。
ブダペスト郊外の食肉処理場で代理職員として働く若い女性マーリアは、コミュニケーションが苦手で職場になじめずにいた。片手が不自由な上司の中年男性エンドレはマーリアのことを何かと気にかけていたが、うまく噛み合わない。そんな不器用な2人が、偶然にも同じ夢を見たことから急接近していく。
オスカー外国語映画賞にもノミネートされていたハンガリー映画「心と体と」、あらすじを読んでいたら、どうにも私好みで俄然楽しみに。この、同じ夢というのが「鹿の夢」らしくって、ビジュアルを眺めていると、鹿のモチーフが使われている。
http://www.senlis.co.jp/kokoroto-karadato/
以上、これから観る映画メモ。
明日は冬休みを1日消化。運転免許更新の手続きをさっと済ませられれば、キェシロフスキを観に行くつもり。クシシュトフ・キェシロフスキ。早口言葉のような名前。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/kieslowski2018.html
あ、この間、この上映についてお話したのだけれど、私ずっとキシェロフスキって言っていたし、名前を長らくずっと勘違いして覚えていた。謹んで訂正いたします、あの時のあなた。キェシロフスキ、キェシロフスキ、キェシロフスキ。
真冬の水道管

部屋、水道管の不具合でキッチンエリアまわりの床を剥がし、補強して復元する工事が必要となった。5日ほどかかるらしい。以前あった1ヶ月ほどかかった耐震補強工事の時ほど対象エリアが広くないので、別の場所に避難が必要なほどではないらしく安心した。どさくさ紛れに家賃を下げる交渉を試み、成功した(ちゃっかりしてる!)。それにしても身の回りの壊れっぷりにもほどがある。これは吉兆のはず、と己を諭すしかない。デルフィーヌのトランプ、私の水道管。
明日は低温注意報らしい。地上を歩く時間が1日10分未満なので、普段どおりで良いかと思っているけれど、どうだろう。水道管の膨張に気をつけるべし、と読んだけれど、工事待ちの身としては、これ以上何を?という気分。
気がつけば1月も終盤、オスカーノミネートが終わっていた。観ることを楽しみにしているのは「ファントム・スレッド」と「フロリダ・プロジェクト」です。いずれも東京では5月公開。外国語映画ではハンガリーの「心と体と」。「フロリダ・プロジェクト」は監督の前作「タンジェリン」を偶然映画祭で観て、iPhoneで撮られた映画という物珍しさを上回る、映画そのものの良さがあった。撮りたいものがまずあって、プロの俳優ではない被写体を緊張させないために、大袈裟な装置ではない、iPhoneがカメラとして選択された、という真っ当な判断を映画から感じ取れた。「フロリダ・プロジェクト」のスチルを目にするたび、暖かそうでいいなぁ…と真冬の東京から羨ましく思っている。
タンジェリン
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