得体の知れない
逃げ恥、カルテットと火曜22時にテレビの前に座る習慣がついたので、流れで「あなそれ」を観はじめ、最初は辛かったけれど、最後まで観てしまった。
最初に存分に観る者を苛立たせることも計算のうちだなんて、なかなか緻密な構成。仲里依紗ちゃんも良かったけれど、何より東出くん目当てで最後まで火曜を楽しみにできた。
俳優の印象って一度染み付いてしまうと離れないもので、香川照之を見かけると、顔芸はいつかな?って心が待機してしまう。俳優にとって不幸なことでもあると思う。その点、東出くんは得体が知れない。男前だけど絶妙に気持ち悪さもブレンドされ、快活とも知的とも断定できない。モデル出身なのにファッショナブルすぎないし、むしろ手足の長さが異様さを際立たせている。
去年観た「クリーピー」はそんな存在感がうまく活かされていて、1年経った今では、イメージを裏切らないキャラクターを演じていた香川照之や西島秀俊よりも、摑みどころのなさが薄気味悪い東出くん目当てでもう一度観たくなる。
この対談も映画を観たら是非どうぞ。黒沢清監督とは俳優の好みが近くてキャスティングがいつも楽しみ。監督は小柄な方だけれど、男性同士で並んでこんなに身長差があるのすら不気味…。
https://entertainmentstation.jp/33543
私の懸念は「あなそれ」以降、あんな役ばかりオファーされる俳優になってしまわないか、ということ。いつまでも得体の知れない東出くんでいてほしい。
メットガラ
5月に観たドキュメンタリー「メットガラ」。
ファッションの世界は華やかで、この映画でも提示されたように、ファッションそのものがビジネス?アート?等、様々なグレーな問いを含んでおり、映画になりやすい題材ということか、ファッション・ドキュメンタリーは量産されている印象だけれど、私は割と警戒している。だって面白いものが少ないんだもの。「いくつになっても女・現役!」みたいな、ファッション誌の見出しのような証言セリフが散りばめられ、3年後には聴くだけで恥ずかしくなりそうな音楽が流れて纏められてしまって、これだったらファッション誌を読めばいいのでは…映画じゃなくて、という気分に陥る。
「メットガラ」はメトロポリタン美術館服飾部門のキュレーター、アンドリュー・ボルトン、泣く子も黙るアナ・ウィンターが登場し、製作過程に密着するのは「China: Through the Looking Glass」、中国文化の服飾への影響がテーマの展覧会…これだけ素材が揃えば、そうそうつまらないのは作られまいて…と淡い期待を抱き観に行った。
けれど、なかなか壮大な素材殺しを観たわ、と、どんよりした気分で映画館を出ることに。
西欧諸国よりも中華圏に対して心の距離がより近い私は、中国の歴史や文化に対する彼らの敬意や理解のなさばかり強調され、おおいに苛立った。注意しなければならないのは、敬意や理解がなかったかどうかはわからないけれど、映画がそんな一面ばかり切り取ったように見えたということ。
メトロポリタン美術館の東洋美術部門も協力し、インスピレーション源となった美術品(仏像や壺)とファッションを同時に展示するのは、大きな美術館ならではの良さがあるとして、人民服と毛沢東の肖像、さらに仏像を同じ展示室内に並べたい…と、いいこと思いついちゃった!とばかりにウキウキ提案するアンドリュー・ボルトンの前で複雑な表情を浮かべるウォン・カーウァイ、その後、静かに再考を促すウォン・カーウァイ…等、ハラハラしながらも珍奇な場面を目撃するもの珍しさはあったとして、視察やデザイナー訪問のため訪れた北京で、中国の女性ジャーナリストから中国に対する理解不足を指摘される場面では(質問はうろ覚えだけれど、確か少し批難するような口調だった→北京で会見をすることは、古い中国を発信するというメッセージになりかねないが、それについてどう思うのか?だったかな)、ようやく観たいものがきた!どんどん斬り込んで!と一瞬興奮したものの、たいして納得できる答えがなかった上に(答えたけれど、映画はそれを使わなかったのかもしれない…と疑うほどに、私はこの監督を1mmも信用していない)、カメラはジャーナリストが去った後の「彼女は1930年代(だっけな?)を生きているのよ」とイヤミを言うアナ・ウィンターの発言と軽い嘲笑の表情を捉え、この不快感は何だろう。監督はファッションは歴史にインスピレーションを得ながらも同時に過去を否定し「新しいこと」を更新していく…ことを示したいのかもしれないけれど、見せ方が上手くないせいかファッションの軽薄な一面だけが必要以上に強調されてしまっているように思えた。
しかし考えてみれば、これは「China: Through the Looking Glass」の準備過程であると同時に、セレブリティが集結し展覧会のオープニングを彩る「メットガラ」のドキュメンタリーなのだから、一夜限りの「メットガラ」の華やかさが映れば良いのかな、と、やけくそ気味に気を取り直す。この年のメットガラ、よく覚えている。中国を代表する女優たちがずらりと並ぶ写真、絢爛豪華で見惚れた。特にファン・ビンビン(范氷々)!「傾国の美女」という表現はこの人のために使うべきでは?という浮世離れした美しさで圧倒された。映画にはもはや期待しないから、動くファン・ビンビンをスクリーンで観られたらそれで良い…と待ち構えていたら…最後まで登場しなかった…!ファン・ビンビンだけではない、中国の女優は一人も、一秒も登場せず、存在自体が黙殺されていた。席順決めに困った結果、会場の隅に追いやられたクロエ・セヴェニーが、ひとりぼっちなのー!と騒ぐ、呆れるほどどうでもいい場面に数秒使うのであれば、中国女優を映しておくれよ…。こんな年の「メットガラ」をテーマに選んだにもかかわらず、もしかして監督、中国、お嫌いでしょうか?メットガラでのファン・ビンビンはこちら。コン・リーのドレスも美しい!彼女たちが映されず、ディズニー魔女のようなギャグのような帽子?をかぶったサラ・ジェシカ・パーカーが映されたことに、断固抗議したい。
映画はつまらなかったけれど、展覧会は中国を黙殺して成立するはずもなく、きっと素晴らしかったのだろうな。アンドリュー・ボルトンは「キングスマン」に登場しそうな英国紳士でフォトジェニックだし、オートクチュールも、それを着たアメリカのセレブリティも登場するから、そちらに興味があれば目の保養にもなる。中国に心の距離の近い私の興味を満たしてくれなかっただけで。
ふと、フレデリック・ワイズマンならどう撮っただろうかと妄想してみる。「チチカット・フォリーズ」「臨死」「DV」「軍事演習」「動物園」…といった、その時々のアメリカを記録したフィルモグラフィに加わる「メットガラ」!淡々と現実を捉えながらも、鋭さが滲み、ファッションや米中関係に関する問いを提示し続け、この上なく面白いドキュメンタリーになったのではないだろうか。
You Are the Apple of My Eye
梅雨入りしたはいいものの、梅雨らしさを発揮していたのは昨日ぐらいで、明日は30度以上らしいし、来週にも雨マークひとつもなく、勇み足でモジモジしてる梅雨の姿が目に浮かぶようです。
西川美和本を読み終えたので、台湾がらみの本にブックカバーをかけて読み始めた。
私的台湾映画特集は「飲食男女」の後、台湾で大ヒットしたと聞いたので、「あの頃、君を追いかけた」をDVDで観た。英題は、You Are the Apple of My Eyeだそうで、可愛らしいですね。学生時代、モテまくっていた女子と、彼女をめぐる男子たちのその時とそれからの物語。原題「那些年,我們一起追的女孩」は「あの頃、僕たちが一緒に追いかけた女の子」だから、なかなか良い邦題。
http://www.u-picc.com/anokoro/
俳優陣もみんなフレッシュで(特に主演の2人、キュート!)甘酸っぱい青春もの。台湾の学生生活のあれこれも覗き見ることができた…けれど、いかんせん普段観ている映画のトーンとかけ離れ過ぎており、2017年・映画爽やかさ許容量を1本で満たしてしまった。映画のせいではない、私の都合である。
返却して別の台湾映画を借りてみたけれど、そっちはどうかしら。適度にほろ苦く不条理なのを期待。
クリステンメガネ
どういうわけか、今年の5月はとりわけ美しかった。こんな季節に死にたいと思うほどに。5月が去り、梅雨入り間近の東京は蒸し暑く、今日のおやつは、茹でたトウモロコシ、麦茶添え。もはや夏。
「パーソナル・ショッパー」を観て以来、ぽーっとクリステン・スチュワートを記憶の中で反芻する。あのモダーンな身体に30年代の衣装は不似合いな気がして、「カフェ・ソサエティ」は観に行く気にならない。熱が去った後に観ようかな。
日々、目を使うことしかしていないのでしょうがないことだけれど、最近また視力が落ちた気がして、家でかけているメガネを新調すべく、あれこれリサーチ。クリステン熱のせいか、気がつけば「シルス・マリア(アクトレス〜女たちの舞台)」でクリステンがかけていたような…と、画像検索してしまっている。
これ!クリステンだから似合うというわけでもなさそうな、オーソドックスなメガネだから私にも似合うかしら。ここ数年、スクリーンで出会ったメガネ女優の中で、この映画のクリステンが最も印象的だったのは、メガネをかけることによってオーラを封じこめていたからだろうか。気恥ずかしくて美容室でも誰かの写真を持って行ってこんなふうに…と言ったことがないけれど、メガネは頻繁に買うものでもないし、ここはひとつ勇気を出して、こんなメガネが欲しいんですけれど…って言ってみようかな。
動くメガネ・クリステン!
Heptapod B
映画の日。”ばかうけ”に似ていることで話題(社長さんがウキウキしていてキュート。監督のアンサーもキュート!)の「メッセージ」。伝わりづらいけれど、うちのシャンデリア用電球の形状にも似ている。
感想を言葉にするのが難しいけれど、とても美しいものを観た感慨で胸がいっぱい。
昨日、映画音楽についてのエッセイを読んだせいか、愚鈍な私の耳にも届く、この映画の音楽の魅力!どう要求すればあんな音楽が出来上がるのだろう。音楽はヨハン・ヨハンソン。
特にこの「Heptapod B 」が耳に残り、帰り道、頭の中で、のーののののののののの、と鳴り響いていた。聖歌のようにも聴こえる。
blue/orange
ルビッチ特集を観て以来、久しぶりに映画館へ。何気にバタバタしており、仕事帰りに映画を観る時間がない。六本木ヒルズに行くと必ず撮る東京タワー。薄いブルーとオレンジ、夕暮れの東京。
オリヴェエ・アサイヤス「パーソナル・ショッパー」、観に行けないうちに、、上映館も六本木だけ、1日1回だけになっていた。そのせいか場内満席。これまで観たオリヴェエ・アサイヤスで最も好きかもしれない。賛否両論なのだろうな。今晩はクリステンの魅力を噛みしめる。
観終わって外に出ると、東京タワーは、行きとは違う色調ながらブルー、オレンジ。何故この色?と思ったら、土曜の夜は基本的にこの色なのだとか。東京タワーのサイトなんて、初めて見た。
https://www.tokyotower.co.jp/lightup/index.php
カンヌ、コンペ作品は軒並み評価が低く、突出してこれぞ、という映画はなかったらしい…と、流れてくるニュースやレビューをチラチラ見る。批評家の点数を集計したものを見てみたら、
http://cannes-rurban.rhcloud.com/2017
very good new films、見事にコンペ以外の部門や特別上映、そして最高得点はツインピークス!アニエス・ヴァルダの新作もきになるし、”The Florida Project” (Sean Baker)は、一昨年の東京国際映画祭で観た「タンジェリン」の監督の新作。当時書いた感想はこちら。「タンジェリン」は全篇iPhoneで撮影されたことで話題だったけれど、映画の骨格がまず先にあって、世界観を成立させるために珍しくも新しい撮影方法が選ばれた印象で、監督の次回作を観てみたいな、と思っていたので配給を期待。
Safdie brothers
カンヌのコンペに入っている、アメリカのサフディ兄弟(ベニー・サフディ&ジョシュ・サフディ)、2014年の東京国際映画祭でグランプリを獲っている。東京国際はチケット発売と同時に、グランプリ作品上映のチケットも買えて、コンペの中から何を観るのか直前までわからない博打っぽさも楽しく真っ先に予約することにしている。「神様なんかくそくらえ」はそのようにして観て、サフディ兄弟の名前も覚えることとなった。写真右の2人が監督。兄弟で監督するってどんな気分なのでしょう。
「神様なんかくそくらえ」は、その後、公開もされた。原題は「Heaven knows what」
この映画は賛否両論だったようで、映画そのものとしては私は好きではないけれど、背景を知ると興味深いという種類の感想を抱いた。以下は当時書いたメモ。
—————-
主演女優(写真の女優、アリエル・ホームズ)はもともと女優ではなく、監督が街で見かけて映画に出てもらおうと食事したら、彼女の当時の生活のほうがよほど映画的で、そちらが映画になった、という一本。主演女優が体験を書いて、監督が映画に仕立て、女優は自分自身を演じた。彼女はホームレスでドラッグ中毒で暗い暗い恋をしていた。
何年か前のフランス映画「わたしたちの宣戦布告」もそんな映画で、カップルに生まれた子供が重い病気で、それを乗り越えた日々をカップル自身が演じ、女性のほうが監督している。日本映画でフィクションだったら、病気を乗り越え家族の絆は強くなりましたって耳触りのいい歌でも流れて終わりそうなところが、あのフランスのカップルは乗り越えたけれど、別れてしまうあたり、現実だなぁ…と思ったものだ。そしてこの2人には、物語にして自分を演じることがセラピーだったのかな、とも思った。
「神様なんかくそくらえ」は、どうしようもない日常が、キツい出来事すら呑み込んで永遠に続いていくことを示唆するような物語で、でも演じた彼女は女優として東京の映画館で目の前にいたから、物語にすることであの日々から抜け出したのだろう、と推測した。
映画をつくる、自分を演じる、歌にする…など、これなら自分にもできるかな、という方法を選択し、自分に起きた出来事を物語にして、過去のものにしていく。日記を書く、文章を書くこととも同じかな、と思った。
—————-
サフディ兄弟の新作「GOOD TIME」はカンヌで公開された。日本でも配給されるようで、楽しみ。ロバート・パティンソン!「トワイライト」シリーズを観ていないので、アイドル的人気がどうだったかは知る由もないけれど、クローネンバーグ「コズモポリス」の主演が彼で、あの映画と、あの映画の中のロバート・パティンソンがとても良かった!!!けれど、周りの誰も観ておらず話し相手がいない…。「GOOD TIME」を観ていないので何とも、だけれど、作品選びの上手い人なのでは…。
http://www.festival-cannes.com/en/films/good-time
映画祭のテンションでしか観ない映画というのはあるもので、毎年、時間の隙を見つけてランダムに観ているアメリカのインディーズ映画はまさにそれで、どれも音楽の使い方がとても上手いのが印象的です。
矢田部氏の日記によると。
http://www.cinemacafe.net/article/2017/05/26/49714.html
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