ナヒード

 

2016年なら国際映画祭コンペティションでグランプリを獲った『ナヒード』について何も書いていなかったので、薄れゆく記憶の底から断片をさらってメモ。

 

イラン映画、どれを観ても粒ぞろいに面白く、文化のギャップも日本暮らしの私には目新しく、アスガル・ファルハーディーを筆頭に複雑に絡まった伏線がパズルのピースを埋めるように回収されてゆく見事な脚本、イラン映画というだけで鑑賞後の満足度はある程度は保証されている…という安心感。

 

けれど、何年か追いかけるうちに、やがてその質の高さに食傷気味になってきた。結婚前、自由恋愛は許されても、肉体関係を持つことは許されていない女性たち。詳しくないけれど、私が映画の中で出会った女性たちはすべからくそうだった。婚約中に他の男性と歩くだけで禁忌に触れるおそれがあり、気に病んだ女性が自殺する結末に至った時は、何がいけなかったのか理解できず、ひとしきり調べてみたこともあった。

 

イラン映画を観た後にモヤモヤした後味が残り始めたのは、そんな女性たちの選択肢の多くはない生き方が、物語を駆動させるための道具として便利に使われているように思えたからかもしれない。箱の中の美しい小鳥を緻密に観察はしても解放はしてくれない映画たち。

 

『ナヒード』が印象に残っているのは、あちこちにぶつかって傷をつくる女性の姿を、揺れる気持ちを揺れるままに描写し、巧く物語に回収しなかったからかもしれない。男だ女だという主語で語るものではないかもしれないけれど、女性監督が撮ったイラン映画を観たのは初めてだったはずで、私にはずいぶん新鮮だった。

 

『ナヒード』

http://nara-iff.jp/2016/films/internationalcompetition/niff4952.html

 

9月に開催される第5回なら国際映画祭で、『ナヒード』のアイダ・パナハンデ監督が奈良で撮った映画が上映されるようです。天理市で撮影。

http://nara-iff.jp/narative/narative-2018.html

 

 

 

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