通ヴェーラ

通勤・通学・通ヴェーラ。4日連続でシネマヴェーラに通い、通ヴェーラ連続記録を軽やかに更新。ルビッチ・タッチ第2週、3日分を手帳に書き込み、制覇!と悦に入っていたものの、何かおかしい。小骨が喉に引っかかったような…。あれ、「極楽特急」を逃すところだった。多くの愛を集めようと調子に乗った結果、本命を逃すような気分ってこんなかしら。愚かだわ。知らんけど。
ルビッチ映画に登場する男たちの類型はありながら、微妙なキャラクターの差異を、モーリス・シュヴァリエ、メルヴィン・ダグラス、ハーバート・マーシャル…とルビッチ好みの俳優に割り当てるのが上手く、みんな魅力的だけれど、入れ替えは不可能。メルヴィン・ダグラスの演じる役はメルヴィン・ダグラスが最も似合うし、ハーバート・マーシャルも然り。
オー!ダーリン!ハーバート!久しぶりにスクリーンで会えて嬉しかった。「極楽特急」で見逃せないのは、最後、リリー(ミリアム・ホプキンス)と車の後部座席に座るガストン(ハーバート)の、わー、リリー怒ってる…怒らせちゃった…どうしよう…(困り顔)…あ!(ひらめき顔)と表情が変わる瞬間。困り顔がとってもキュートなので注視されたい(細かすぎて伝わらない説明)。
黄金週間

今年は東京で過ごす黄金週間。Cinema Studio 28 Tokyoの一部メンバーで、問屋がたくさんあって職人さんもいる東京東側へ。初めて行く場所ばかりで楽しい。東京で引っ越しするたび東へ東へ移動しているけれど、もはや東以外で暮らせる気がしない。早朝からサクサクと巡り、お昼でも…と時計を見たらまだ10時半!喫茶店もモーニングメニューで、モーニングを食べた。朝ごはんを二度食べた。秋葉原近く、岩本町のアカシア。
渋谷に移動し、ルビッチが始まるまでの間、ブックファースト渋谷文化村通り店をぶらぶらしていたら、唐突に閉店の告知が貼ってあってびっくりした。地下からアクセスできて、10時から開いてて、映画館に行く前にしょっちゅう立ち寄っていたけれど、同じ場所にヴィレッジヴァンガードがオープンしても行かないだろう。このところ、「慣れ親しんだ東京」が消えていくスピードは加速している。
シネマヴェーラのルビッチ特集、黄金週間のラインナップの黄金っぷりが眩しい。一部の映画は時折、禁断症状が出た頃にDVDで観ることもあるけれど、久しぶりにスクリーンで「ニノチカ」を観たら、ニノチカの放つ最後のセリフに、この物語の素晴らしさが濃縮されており、それによって今日は相手役のメルヴィン・ダグラスも、いつもより3割増しに魅力的に見えた。
回を重ねるごとに見えてくる魅力。興味はあるけれどルビッチを観たことがない人には、入門篇として「ニノチカ」をお勧めすることが多い。
天国は待ってくれる / メリー・ウィドウ

シネマヴェーラ渋谷での、ルビッチ・タッチⅡの記録。初日は「天国は待ってくれる」「メリー・ウィドウ」の2本から特集スタート。
・天国は待ってくれる(Heaven can wait/1943)
「地獄行きを覚悟したヘンリーは、閻魔大王の前で女性遍歴を繰り返した生涯を懺悔するが…。男女の心理の機微を洗練されたユーモアと心温まるストーリーで描き、観る者すべてを幸福にせずにはおかないルビッチ最晩年の傑作。テクニカラーの美しさを今こそ堪能されたい!」
フィルモグラフィーの中で、私が唯一観たカラー作品がこれで、初見では情報量の多さを頭が受け止めきれず消化不良に。ルビッチ、どの映画も省略が効いており、扉の開閉、階段の昇降、視線の移動…で物語の展開を察知する必要があり、台詞で何でも説明してくれる親切な映画の対極にあって、1秒たりとも気が抜けない。体調を整え、濃い珈琲で身体を目覚めさせ、お気に入りの観やすい座席を確保し臨まなければならない。
「天国は待ってくれる」を初見で受け止めきれなかったのは、いつもながらのルビッチの情報量の多さに加え、初めてのルビッチ・カラー映画だったから。モノクロであれば衣装の色の情報量を処理する必要は少ないけれど、カラーならば、瞳はブルー、椅子は、絨毯は、壁紙は、衣装は…と処理すべき情報量が格段に増える。そしてモノクロなら、自分好みの色に塗り絵しながら楽しむところ、カラーなら、え?そのブラウス、そんな色?など、自分好みでない色だった時の感情処理にもたつき、肝心の物語が見えなくなった。
ということで二度目の今回、ようやく心に余裕を持ちながら鑑賞することに成功。好色でありながら、妻を愛して生きた男の一代記。夫婦のいざこざや、恋愛のもつれ(主に三角関係)を描くことの多いルビッチには珍しく、一人の男の人生を出生から最期まで大河ドラマのように描いている。そのため珍しく主人公の祖父、両親、やがて妻と出会い、息子が生まれ…と家族が描かれ、男が育った家庭環境から何を受け継ぎ、それがまた息子に脈々と受け継がれていく…好色なところなど…と、血縁が描かれているのが興味深いところ。
適度に余所見もしながらも、一人の女を生涯愛し、存分に人生を謳歌した男が、罪の意識を抱えながら閻魔大王の前に立つ。男が回顧する欲深き、けれどそれがゆえに芳醇な人生を味わいながら眺めていたから、閻魔大王の審判の言葉に不思議と納得するというもの。見終わった後、じわじわと「天国は待ってくれる」というタイトルの優しさが染みてくる。
オープニングタイトルが刺繍ふうでとても素敵なので、最初から気を抜かずに前のめりで堪能すること。
・メリー・ウィドウ(Merry Widow/1934)
「パリに暮らす小公国の大富豪未亡人・ソニア。遺産目当ての外国人と再婚されたら一大事と、公国の大使は一計を講じ…。有名なオペレッタの映画化作品で、大使館の盛大なダンスシーンや工夫を凝らした映像の面白さなど見どころ満載。」
初見。有名な物語だけれど、メリー・ウィドウに触れたのも初めて。メリー・ウィドウ・デビューがルビッチで幸せ。ジャネット・マクドナルドってこれまで何かで観たことあるかしら。ちょっと誰かに似ている…でも誰か思い出せない…という顔立ち、そして歌が上手!相手役のモーリス・シュヴァリエは味のある歌唱(決して万人が上手!とは思わなさそうな)なので、バランスの良いコンビと言えるかもしれない。人生で初めて目撃したモーリス・シュヴァリエが「昼下がりの情事」のオードリー・ヘップバーンのパパ役だったので、ルビッチの映画で若きモーリス・シュヴァリエを観た時、誰にもで若い時代はあるのだね…という変な感慨に陥った。誰にでも若い時代はあるのだね感慨シリーズ、東の佐分利信、西のモーリス・シュヴァリエで決まり!
そして彼の人生について何も知らなかったけれど、改めてwikiなど読んでみると、無知ですみませんでした!と平謝りしたくなるほどのフランスの国民的スターだった。「メリー・ウィドウ」の中でも、パリのマキシムでマキシム・ガールズと遊ぶぞ!と、うきうき踊り子の名前を連呼する歌があるけれど、あの歌を地でいく実人生だった。
喪の装いに身を包んだジャネット・マクドナルドが、黒い服、黒い帽子、黒い靴、黒い犬(!)に囲まれ静かな生活を送る中、恋の芽生えを感じた途端、部屋中の黒が色を帯び…と言ってもモノクロなので黒が白に変わるだけだけれど、きっと実際はパステルカラーのはず!…犬まで白くなるのには爆笑しながらも、恋が色を連れてくる、そのシンプルな美しさに胸がいっぱいになった。ベッドサイドに置かれた分厚く大きな日記帳に、書く文字が日増しに恋する女のそれに変化していくこと(この場面のグラフィカルな美しさ!)。そしてジャネット・マクドナルドの衣装、30年代・西洋女性の十二単と呼びたくなるような、薄紙に紙と紙と紙を重ねてリボンをキュッとかけたお菓子のパッケージのような甘やかさがあって、着替えるたびに目が釘付け。天井高10メートルはあろうかという瀟洒な建物、2人で踊っていたはずが、満場の男女を総動員しての大演舞に繋がる場面の華やかさ!
パリのマキシム、フレンチ・カンカンを見せるような店だったのだなぁ。常連客はお気に入りの踊り子を指名し、2階の個室で親密になる…というシステム。そんな歴史があったとは…と驚いたけれど、どこまで史実に忠実なのか、調べてみたくなった。
opening of Die Puppe

ルビッチ・タッチ第2週。ドイツ時代のサイレントで、比較的よくかかる3本「男になったら」「牡蠣の王女」「花嫁人形」はどれもオッシ・オズヴァルダという女優が主演。「花嫁人形」のみ、これまで何度も見逃し続けてきて、永遠に縁がないのでは…と、しおしおしていたけれど、今回ようやく縁があった。1919年の映画。
東の牧瀬里穂、西のオッシ・オズヴァルダと並び称したくなるほどの溌剌っぷり、オッシ嬢は狂気を漂わせるほどの弾けっぷりなのだけれど、「花嫁人形」開始数分、ルビッチ本人が登場し、ミニチュアのセットを組み立てていく。最後に男女の人形を家の中に入れ、ズームしてルビッチは画面の外に消え、人形が人間に変化して動き始める…という、なんともキュートで凝ったプロローグ。
ルビッチは俳優出身なので、初期のものは自分が出演しているものもあるけれど、これまで観たことはなかった。初めて観た動くルビッチ。生まれつきの造形の美しさより、立ち居振る舞いや言葉遣いの綺麗な人に惹かれがちで、ルビッチ映画はそんな俳優にたくさん出会えるのも好きな理由。マイダーリン、ハーバート・マーシャルも、モーリス・シュヴァリエも、立ち居振る舞いが流れるようで、かつ作為を感じさせない素晴らしさがあるけれど、単に顔立ちだけ取り出すと、彼らより美しい俳優はたくさんいると思う。
ミニチュアセットを組み立てるルビッチの動きも、優雅で色気もあって見惚れた。27歳のルビッチ、若くて細い…!倒れそうな壁を慌てて立てようとする仕草など茶目っ気もあってハッとする。こんな手つきで作った映画ならば粋で洒脱になりましょう。
帰宅してyoutubeで見つけ、冒頭ばかりリピートして何度も観てしまう。
念願の「花嫁人形」を観たことにより、今回のベスト番組を組み直し。
5/1 「街角 桃色の店」 →「ニノチカ」
5/2 「花嫁人形」→「極楽特急」
スケジュールが限られているなら、私ならこの2日は死守してこの順番で観る…!
帰路

近江屋洋菓子店本郷店、閉店の前日(木曜)、営業時間終了10分前に滑りこみ、最後にあの建物の中に入ることができた。たくさんのお客さんと、ガラガラのショーケース。持ち帰るできるものは苺のショートケーキだけで、それを購入することにし、振り返ると冷凍ケースにアイスがいくつか入っていたので、アイスなら日持ちもするからいくつか買った。ケーキは食べ、アイスは冷凍庫に保管。

帰路、いつものように東大キャンパスを抜ける。夜はさらに重厚で、先日観たルビッチ「メリイ・ウィドウ」のセットなのかロケなのか天井高10メートルはありそうな場所で撮られておりうっとりしたけれど、東大でもルビッチ、撮れそう。デコラティブな柱の陰からモーリス・シュヴァリエが歌いながら出てきそう…。
ルビッチ第1週のメモを書けていないまま、明日から第2週が始まる…!何故か逃し続けている「花嫁人形」をようやく観られそう。ちょっと怖いもの見たさの気分あり。
http://www.cinemavera.com/schedule.php
pink pop!

花椿 夏号、テーマはpink pop!青山ブックセンター本店でもらった。内容の充実度と、無料という事実のギャップ。企業広報誌とはいえ…資生堂ありがとう!通学時間が長かったから(往復5時間/毎日)、雑誌を読んで読んで読む思春期だったけれど、最近は、たまに期待して買っても結局は広告の束でげんなり。有料の雑誌がどんどんつまらなくなって、花椿が際立つって、2017年っぽい。
http://hanatsubaki.shiseidogroup.jp/magazine/309
どこもかしこもピンクで、ピンクに因んだ映画も紹介されている。ロシュフォールの恋人たち、パリの恋人、プリティ・イン・ピンク…。私にとって、印象的な映画のピンクって何かな…と思い巡らしてみると、あった。
mac book air theater!

「ぼんち」!市川崑監督。ぽん太(若尾文子)が、ぼんち(市川雷蔵)の家を訪問する場面。真上から撮られた日本家屋に、パッと咲くピンクの番傘。

二号さんの本宅伺いという儀式のような。小脇に抱えた風呂敷もピンク。包まれていたのは…

下駄。歩きやすい下駄から、塗りの下駄に店先で履き替え、装いを整える。どちらも鼻緒はピンク!
大好きな「ぼんち」でもこの場面、特に好きで、女たるもの、ピンクの番傘パッと咲かせて生きていくべきであるな!と、観るたびに思う。おばあさまからの「粗相のない結構なご挨拶でおました」と厳格ながらも満足げな口調の台詞で場面がきちんと締まるのも好き。
1990年、東京の煌めき

仕事帰り、神保町シアターにて「東京上空いらっしゃいませ」を観る。99席のうち、30分前に到着したら62番だった。もしや、と思っていたら満席になり、入れなかった人もいるみたい。ソフト化されていないので、名画座にかかるたびに満席になっている。
人生最後の日に観たい映画3本立てを去年、ふと考えてみて、1本目がこの映画だった。人生が終わるなら「死の予習」として観るのにぴったりだと思った。それは同時に生の復習でもあって、生の煌めきをざぶざぶと咽びながら浴びることでもある。
とにもかくにも牧瀬里穂!1990年という年の、東京の煌めきが丸ごと、1人の少女に降り注いでいる。これまでどれだけ映画を観たのか数えてないけれど、こんなにキラキラしたヒロインって他にいたかしら。しかも、煌めきの理由が、彼女が死んでしまったからだなんて。
他にも書きたいことは山ほどあるけれど、今日のところはここまで。明日も明後日も神保町シアターでかかります。座席の確保はお早めに!スケジュールはこちら。
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