Weekly28/ルビッチ予習復習/Weekly28ロゴ

 

ゴールデンウィーク!

 

ここのところ強烈な寒暖差・気圧差に身体をやられ気味で、今朝ようやく復調してきたところ。新緑の季節、楽しむ!

 

下の投稿でお知らせした横浜ジャック&ベティのイベントに向け、エルンスト・ルビッチ予習復習のため、Amazon Prime Videoで数本鑑賞。ゴロゴロ寝転びながらルビッチを観られるなんて便利な時代になったものですね!と令和の映画好きの特権を享受しながらも、やっぱりルビッチは映画館のスクリーンで観てこそ、独特のルビッチ・オーラを堪能できるものだなぁ、とも思いました。

 

けれど未知の監督だけれど、ちょっと観てみたいという方には気軽にトライできる配信サービスは有り難いもの。私が観た数本について、メモを残してみます。それぞれ、タイトルをクリックするとAmazonリンクに飛びます。

 

『極楽特急』(1932年)

互いのものを盗み合う泥棒仲間のガストンとリリーは、パリで化粧品会社を経営する女社長マリエットに取り入って彼女の財産を盗むが、ガストンに恋心を抱くマリエットは彼らの正体を知ったうえで逃がすのだった。

 

もし人生最後の映画を選べるなら『極楽特急』でお願いします、と長らく思ってます。オープニングに流れる主題歌はメロディも歌詞も素敵だから葬儀で流してほしいです(遺言)。うっとりする衣装、粋で軽快なコメディ、幸せなエンディング。ルビッチ俳優の中で最推しであるハーバート・マーシャルが主演であることもポイント高い。ハーバート・マーシャル、お顔だけ見ると彼より男前はたくさんいるだろうけれど、立ち居振舞いの美しさにおいて、これほどルビッチの世界に似合う人がいるでしょうか。『極楽特急』は2人の女性に挟まれ困り顔、下がり眉ハーバートをたっぷり堪能できる。

 

『天使』(1936年)

 

英国の外交官の妻マリアは、多忙の夫の目を盗んでパリに遊びに行き、魅力的な英国紳士アンソニーと知り合う。ところが、彼が夫の知り合いだったことから気まずい三角関係が始まるのだった。「生活の設計」に続く、ひとりの女と2人の男の奇妙な恋愛模様が見所。

 

マレーネ・ディートリッヒが唯一出演したルビッチ映画。先に『極楽特急』を見直してみてガストン(ハーバート・マーシャル)は素敵だけれど、女社長マリエット(ケイ・フランシス)の人物造形が隙だらけな点が気になり、泥棒が付け入るための隙と思えば違和感ないものの、旦那が遺した会社を継いだものの経営のことは何もわかりませーん!の態度のアホっぽさが若干引っかかり、その後『天使』を観るとディートリッヒ演じるマリアの格好いいこと!大人!惚れる!と人生最後の映画は『天使』かも?と翻意しそうになったものの、どこまでも大人の艶を感じさせる演出が最後まで続き、こんなの人生最後に観てしまうと、いつか『天使』のような大人になりたかったのに、憧れただけで自分の人生が終わってしまう…と打ち拉がれそうだから、やっぱり『極楽特急』に限るな、と心を戻した。

 

限りなく生活感のないディートリッヒ、他の監督の映画では孤高の女として描かれがちなところ、『天使』では、たくさんの可愛らしい表情を楽しむことができる。物語としてはディートリッヒを巡る男ふたり(夫/夫の古い友人)との三角関係だけれど、夫を演じるハーバート・マーシャルの優美さといったら『極楽特急』以上なものだから、ふたりのどっちを選ぶって?夫に決まってるでしょ!愚問ですね!以上!という気持ちになることだけが難点。

 

『生活の設計』(1932年)

 

列車の中で知り合った画家のジョージと劇作家のトム、広告代理店に勤務する美人ジルダは、お互いに性的感情は抱かぬという紳士協定に従って同居生活に入るのだが…。コミカルな三角関係がルビッチ得意の洗練されたユーモアと共に展開する。

 

男性ふたり、女性ひとりの三角関係の設定が後にヌーベル・ヴァーグにも影響を与えたと言われている映画で、例えばゴダール『女は女である』やトリュフォー『突然炎のごとく』が該当するのかな。揺れる関係の力学という点では確かにそうかもしれないけれど、『生活の設計』のジルダという女は、アンナ・カリーナやジャンヌ・モローが演じた彼女たちより、ずっと以前に誕生していた、ずっと先進的な女ではなかろうか。「紳士協定」のキラーワードを都合よく使いこなし、自分で決めた掟をあっさり破る感情に素直な女。芸術の母でありたいと男を煽り、結果として確かに芸術の母になる女。何も要求しないのに、すべてを手に入れる女。それでいてコケティッシュで憎めない女。絶世の美女!運命の女!というムードのないミリアム・ホプキンスが演じるからこそ、ジルダという女の軽やかさが際立っている。

 

ジルダがあまりにモダーンな女で、「紳士協定」の重要要素である「ノー・セックス!」のセリフが何度か登場するので、未婚の女が発する言葉として1932年にはあまりに過激ではないか?と思ったけれど、ハリウッドのヘイズ・コードができたのは1934年だから、この映画はギリギリセーフだったのかな。

 

他にも数本観たけれど、長くなりそうなので、ひとまずこのあたりで。ルビッチらしさを堪能できる3本として、ルビッチ未見の皆さまにもおすすめです。

 

ジャック&ベティでの上映、詳細はこちら

https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3150/

 


 

 

diaryを毎日更新することは現在なかなか難しいけれど、せめて週に一度は記録がてら書こう!の意気込みのもと、昨年からWeelky28と称しながらも、なかなかの気まぐれな頻度の更新っぷりだけれど、デザイナー・あずささんにお願いしていたWeekly28のロゴが完成し、めちゃくちゃ可愛いので、このロゴを使いたくて更新頻度が増えそうです。映画館にいるペンギンズ…!!

 

今年に入ってから観たものの書いていない映画についても、振り返って記録していこうと思っています。

 

5月は、『TAR/ター』が楽しみ…!

https://gaga.ne.jp/TAR/

 

 

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Mariko
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