寿司屋の娘

朝型の私が遅い時間に始まるドラマを観ることは滅多にないけれど、『おっさんずラブ』最終回(最高だった!はるたんは私にとっても存在が罪)まで起きておくべく、原稿のために借り、返却期限の迫った小津『秋日和』のDVDを観た。
あぁ、『秋日和』の百合子(岡田茉莉子)の素晴らしさ、死ぬまでにあと何度観られるかしらん。
我が身のことのように家族を心配し、家族に心身の清潔さを求める態度を「ウェット」と形容し、幸せも人生も本人のもの、家族であっても口を挟むものではないと唱える百合子は、小津映画に押し寄せる近代化の波!を象徴する存在。平成も最後の初夏、間もなく昭和はひと昔前どころか、ふた昔前になろうとしており、他の小津映画はそろそろ観るのがしんどくなってきたけれど、『秋日和』が例外なのは、ひとえに百合子のおかげ。
窓辺で寿司を食べる百合子、寿司屋の娘。百合子の実家の寿司屋、東京の「場末」「ずいぶん遠い」ところにあるらしいけれど、どこの設定なのだろう。東京東側のほうが似合いそう。
memorandom.tokyo連載 One book,One movie 第3回

memorandom.tokyoで連載中の「One book, One movie」更新されました。
映画関連本も原作本も登場しない、映画と本のお話。第3回は「口紅と女」。口紅を塗る人も、もしくは塗らない人も、口紅を塗りながら、あるいは落としながら、お読みいただければ幸いです。
アーカイブはこちらから
http://www.memorandom.tokyo/archive
この春の口紅は、資生堂ルージュルージュピコ「花明かり」。小指の先ほどのミニサイズで、値段は半分という気軽さ。小さいことは良いこと!
クレオ気分

アニエス・ヴァルダから思い出したけれど、あちこちの病院であれこれ検査する時間を過ごし、存分にクレオ気分を味わった5月だった。
『5時から7時までのクレオ』(アニエス・ヴァルダ監督/1962年)のクレオの気分。クレオが、自分が癌かもしれないという恐怖に怯えながらパリの街を彷徨い、7時に検査結果を知るために医者のもとに行くまでの情緒不安定かつ多動な2時間の物語。そんな重病の疑いではない私でも、病院は憂鬱で緊張するもの。最後に見知らぬ兵士に心を開き、支えられるように病院に向かう、クレオの気持ちはうっすらわかる。
アニエス・ヴァルダの映画、街の美しさもグロテスクさも、ごろっと記録されていて、何度観ても飽きない。
明日から6月。
FFF

フランス映画祭、会場だけではなく、運営も変わったのか、週末にチケット発売されるのに、ギリギリまでスケジュールが発表されなかった。
横浜は遠いけれど、アニエス・ヴァルダが登壇するなら!と意気込んでいたけれど、来日キャンセルになったとのこと。5/30がお誕生日で、なんと90歳。5月、カンヌで抗議行動に参加してスピーチしたという記事を読んだけれど、フランス国内ならまだしも、日本は遠いよなぁ…。
http://www.webdice.jp/dice/detail/5624/
映画の公開(9月)を楽しみに。アニエスの肩に猫!
https://www.cinematoday.jp/news/N0101223
ということで、5〜6年ぶり?にフランス映画祭に行かない年になりそう。
惑星

年明けから使っていた手帳が大きくて、文庫サイズに買い換え。持ち物のサイズを意識的に小さくしているせいで、小さなショルダーバッグだけで通勤可能になり、移動中は文庫本を読むようになった。就業時間を1時間前倒したせいで、電車がまだ混んでおらず、本を広げる隙間ができたせいもある。三島『宴のあと』を返却し、借りた上田岳弘『私の恋人』を読み始める。文庫本を次から次へと読むなんて、通学時間が長すぎて読書するしかなかった高校生の頃みたい。
初めて読む作家で、デビュー作が『太陽・惑星』のタイトルで刊行されているらしく、『私の恋人』を気に入ったらそちらも読む(けれど文庫化はされていない…)。インタビューを読んむと、『太陽』『惑星』の二編で、『惑星』は、タルコフスキー『惑星ソラリス』から着想を得て、「惑星ソラリスの内面描写」を試みた、とのこと。惑星の気持ち。もはや風の歌を聴け、どころではない。
https://www.sinkan.jp/special/interview/bestsellers64.html
ふぁぁ、面白いなぁ。世の中にはいろんな妄想と創作があるのね。
紫陽花が存在感を増す歩道。東京も近々、梅雨入りするだろう。
宴のあと

青山ブックセンター本店の文庫の棚に、昔から変わらない装幀で三島が並んでいるのを発見し、懐かしくなった。その時は他の本を買い、やっぱり気になって後で図書館から借りた未読の『宴のあと』。政治絡みの物語のせいか、三島を熱心に読んでいた中学生の頃はパスしたのだった。その頃、法律の授業でプライバシーの侵害裁判については学んだ。
久しぶりの三島の、面白さに唖然としながら一気に読了。土曜、PTAの映画『ファントム・スレッド』を観て思ったことは、『宴のあと』に似ているなぁ、と。
『宴のあと』、都知事選に出馬する夫とその妻の物語で、理想主義に燃えながら大衆の心を掴むことには長けていない夫と、現実をしっかり捉え動き回っていないと死ぬ種類の生物である妻。妻は料亭経営者で選挙資金もどかんと準備し豪快に立ち回る。あきらかに政治家に向いているのは妻なんである。『ファントム・スレッド』の自らの静謐な美の世界を頑なに保たんとする仕立屋の夫と、難攻不落の相手を前にしても自らの愛の作法を曲げようとしない妻。映画と小説、癖の強い者ばかりの二組の夫婦の物語に、週末は熱狂し、ぐったりもした。
http://www.shinchosha.co.jp/book/105016/
『宴のあと』は映画的描写の連続する小説で、当然映画化も検討されながら、裁判の影響で流れたらしい。監督は成瀬巳喜男、主演は森雅之、山本富士子が予定されていたらしいけれど、私の中ではイメージが違って、いかにも増村保造&若尾文子コンビが本領発揮しそうな物語だと思った。読む大映映画。夫役は山村聰っぽいイメージかな。若尾文子、私生活でも後に夫が都知事選に立候補することだし。
各章のタイトルも見事で、様々な「宴のあと」が登場し、最後は「宴の前」で終わる。とりわけ美しいのは第十六章「洋蘭・オレンジ・寝台」、こういう関連のない名詞が並ぶタイトルに弱い。ロケ撮影された映画のように東京のあちこちが描写され、上野精養軒、資生堂パーラー、銀座千疋屋など、現存する老舗が登場するのも楽しい。
それにしても、三島は恐るべき観察者で、絶対にこんな人と食事したくないわ。何から何まで観察されて、小説のネタにされそう。
週末

この週末は『ファントム・スレッド』、久々に公開日に新作を観た。to do listを書き出して、コツコツ消していくことに歓びを感じるタイプなので、公開日に観るの、自分の中の観るべきリストが速攻で消せて気持ち良いな。
衣装が美しく、ダニエル・デイ・ルイスがこの1本で俳優業を引退すると宣言、オートクチュールの仕立屋の物語、という程度にしか前知識がなかった。事前情報もそれぐらいしかなかったのではないかと思うけれど、観終わってみると、想像を超えた着地に驚き、そしてうっとりした。
もう少し寝かせてから感想を書きます。写真はシネスイッチ銀座入り口のディスプレイ。
シネスイッチ銀座の立派なところは、金曜がレディースデーで、950円で観られること。新作がかかる劇場でこれは破格値だと思う。オンライン予約できないところが不便だけれど、6日前から窓口でチケットが買える。
http://www.cineswitch.com/index.htm
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