見立てSF

今年のカンヌのコンペティション、濱口監督のような新顔からゴダールのようなベテランまで揃っていて流れてくるニュースを読むのが楽しい。ゴダール、カンヌには登場しなかったけれど、Face Timeを使った遠隔会見に応じたというニュースにびっくり。87歳。もはや年齢を超越した存在か。
私のゴダール・ベストは『アルファヴィル』(1965年)で、何が好きってパリの街をディストピア未来都市・アルファヴィルに見立てる無謀さ、強引さがとてもキュートだから。ラジオ・フランスの建物はアルファヴィルの指令本部(だっけな?)に、プールは処刑場に見立てられる。粒子の荒いモノクロで撮ってもずいぶん無理があって、予算もCG技術もない中、一生懸命、現実を近未来にしてみました!というアナログな工夫が随所にある。同じ理由でトリュフォー『華氏451』(1966年)の合成バリバリ感も可愛くて好み。
古いSFを観る時、アルファヴィル的キュートさをつい探してしまいがちだけれど、『ブレードランナー』は、35年の時間差を感じさせない謎のタイムレスさがあって、どうしてだろ?って考えておる。
Friday Night Movies

金曜夕方、仕事をさささっと終わらせて早稲田松竹へ駆け込み。
平日に、合計5時間座り続けて映画を観るのはなかなかハードだったけれど、『ブレードランナー』新旧2本立てでかけてくれて心から感謝。世代的なものもあって、私は80年代の映画をほとんど観ていない。『ブレードランナー ファイナル・カット』を観たら、もうこれ1本で帰ってもいいのでは?レベルで満足し、続編を観るのが怖くなったけれど、『ブレードランナー2049』は、そんな杞憂を吹っ飛ばす映画だった。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/bladerunner.html
今年はあまり映画を観ていないけれど、今のところ2018年、最上の映画体験だったと思う。
南へ

GW、台北の原稿を書いて更新し、部屋の片付けに明け暮れていたら、旅の欲が高まった。熱が冷めないので、行きたい場所のこといろいろ調べはじめた。マイルの有効期限も迫っていることだし。
部屋の片付けと旅の欲が何の関係があるのかというと、ひたすら持ち物を処分しており、やっぱり自分は物質にはたいして興味がないから、お金は何かを買う、形あるものを手に入れるためではなく、旅のような記憶に残るけれど形には残らないものに使うほうが性格に合っている、と改めて思い知ったから。映画を好きなのも、道具の要る趣味ではないし、形に残らないからという理由もあると思う。
次は台南かな、と思っている。時間がとれるならフランスやポルトガル行きを妄想していたけれど、しばらく仕事が立て込んでいて長い休みは秋までは無理そうだから近場で。李安(アン・リー)も通ったという映画館に行ってみたいことと、去年観たドキュメンタリー『日曜日の散歩者』が素晴らしかったから。
Cannes 2018

カンヌ開幕、こんな時期だったっけ?と思えば、例年より前倒し開催されているらしい。
矢田部さんのブログ(こちら)を毎日楽しみにチェックする日々も開幕。今年の審査員、さりげなく好きな人ばかり。張震もいる!ケイト・ブランシェットとスコセッシが並んで開幕宣言だなんて豪華!カンヌ受賞作の公開を楽しみにし、いちはやく観るタイプではないけれど、映画祭は遠くで眺めても華やかで心が浮きたつものです。私は俄然、濱口監督新作のレビューや写真が待ち遠しいです。
写真は上野動物園。鳥類の銅像と空とビル。改めてしげしげ眺めると、怪獣映画みたい。
Cinema memo : 早稲田松竹

GWに行った早稲田松竹、これからのラインナップも目白押しな感じ。今年に入ってからあまり映画館に行けていないので、ありがたきことです。
見逃した『スリー・ビルボード』、せっかくなら『ファーゴ』も久々に観たいと思っておった。ありがたや。5/19〜25。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/threebillboards.html
その後、2週間に渡るホドロフスキー祭も贅沢。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/2018/jodorowsky2018.html
好きな映画館を好きな理由はそれぞれあるとして、立地やプログラミングも大事だけれど、前方で観る族としては、前方で観た時のスクリーンの距離こそ最重要事項。早稲田松竹、最前列で観てもスクリーンとの距離がしっかりあるから疲れなくて、その点だけで私の中の好感度うなぎのぼり。先日書いた日本映画テレビ技術協会の割引(こちら)もしっかり対象なので、2本立て900円で観ています。
女神の見えざる手

GW、早稲田松竹で『ドリーム』の併映は『女神の見えざる手』。原題は『Miss Sloane』だったと思うと、こちらの邦題はなかなか成功しているように思う。ポスターなどビジュアルだけでは正直、惹かれる要素は少ないものの、どこかの映画館で予告篇を観たら面白そうな映画!と俄然興味が湧いたので、Miss Sloaneは静止画より動画のほうが魅力的に見えるタイプの女性なのかも。
ジェシカ・チャスティン、『ゼロ・ダーク・サーティー』といい、仕事するのに男も女もあるかい!的役柄に今、世界一ハマる女優では。『プラダを着た悪魔』のような可愛子ちゃんのお仕事ものじゃなくて、もっとシリアスで周囲に曲者ばかり従えるタイプの職業の。サンローランのスーツと11cmハイヒールで完璧に武装して働き方改革なんてどこ吹く風とばかりに昼も夜も削って働くのがまた似合う。
ジェシカ・チャスティンだけで観る理由としてじゅうぶんだけれど、観終わってみると、脚本家って誰なんだろうってリサーチしたくなる感じ。ジョナサン・ペレラ?知らないし、wikiにも出てこないと思えば、この映画が初脚本なのだとか!サイトのProduction noteが興味深く、
もともとイギリスの弁護士だったジョナサン・ペレラが、初めて描いた映画の脚本。それが『女神の見えざる手』である。弁護士を辞め、韓国の小学校で英語を教えていたペレラは、映画学校などには通わず、手に入った脚本を片っ端から読んだという。「120ページの脚本であれば、前半60ページを読みどう物語を終わらせるべきか自分で考えて続きを書く。そして夜中に後半の60ページを読んで比較する。そうやって勉強した」と彼は振り返る。
ペレラが『女神の見えざる手』の着想を得たのは、BBCのニュースで、不正行為で逮捕された男性ロビイストのインタビューだった。「ロビイストの仕事は政治と諜報活動が合わさったものだ。彼らがどうやって影響力を行使するのか。合法ぎりぎりのラインで、どんなストーリーが生まれるのかに興味があふれた」とペレラ。
書き上げた脚本はフィルムネーション・エンターテインメントに送られ、同社の共同社長、ベン・ブラウニングを驚嘆させる。「スリラー、ドラマ、政治の要素があり、強烈なヒロインを通して政治の知られざる舞台裏をスピーディに描いている。脚本が届いてから1年で映画が完成した。私が知る限り、こんな例はハリウッドで初めてだ」とブラウニングが語るように、脚本家のサクセス・ストーリーが実現したのだ。
前半だけ読んで後半を自分で書く、こんな脚本の勉強方法があるのか…!ジョナサン・ペレラが考案して黙々と実行したのだろうか。こんな努力ができるだけで、すでに才能あったとも言える。ロビイストという耳慣れない職業について、映画の冒頭では説明されすぎず、ミス・スローンの特殊な性格を強調するばかりで、ロビイストという職業を理解しないと物語を追いかけられないはずなのに大丈夫だろうかと一瞬不安になったけれど、展開に引き込まれているうちにロビイストについても、ミス・スローンがその中でも手段を選ばない強引さがあるにせよ、とりわけ有能という点についても、すっかり理解できていた。ジョナサン・ペレラ!
最後の法廷シーンが圧巻で、ミス・スローンにとって隠しておきたい私生活の秘密を共有すべき相手が登場した時の、遅かれ早かれ暴かれることだから、という肝の据わったセリフが好きだった。ロビイスト活動の一環として仕込んだことが思わぬ顛末を招く反面、信じられないはずの人物が案外信じられたり、ミス・スローンの能力をもってしてコントロールできること、できないこと、それらがミス・スローンにもたらす明暗。あぁ、面白かったな。ジョナサン・ペレラ(立ち上がって拍手)!
興奮してGW中に会った人々に、映画とジョナサン・ペレラの脚本学習方法を暑苦しく語った私であった。
Hidden Figures

早稲田松竹、GW前半は『ドリーム』「女神の見えざる手』の2本立てで、朝から満席だった。
原題『Hidden Figures』は隠された人々…のような意味かな邦題はシンプルに『ドリーム』になったけれど、当初『ドリーム 私たちのアポロ計画』だったのが不評でシンプル化したのだったっけ。確かにアポロ計画の物語ではない…。60年代、黒人差別、女性差別を受けながら、NASAの躍進に力を尽くした実在の3人の女性たちの物語。
http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/
3人の女性を取り巻く夫、NASAの同僚、上司(ケビン・コスナー!久しぶりに観た)の差別→改心の描かれ方が、ややステレオタイプすぎるきらいがあったけれど、周囲の態度に変化をもたらし、平等に働く権利や家庭との両立を獲得していく過程が、彼女たちがあまりに優秀だからというシンプルかつ力強い理由によるもの、と描かれていたから、気持ちよく最後まで観られた。
60年代ファッションの忠実な再現も楽しい。この時代のファッション、スカートはひざ下、ネックレスはパールのみというこのNASAの職場のドレスコードほど厳しいと辛いけれど、働く女性にふさわしいきちんと感がある。働く女たちの装いのカジュアル化が進んで久しいけれど、気持ちがしゃんとしそうな装い、働くという行為そのものに似合って、見ていて清々しい。
そんな働く女たちを鼓舞するような音楽がまた素晴らしいね…と、エンドロールを眺めていたら、ハンス・ジマーの名前があったので…これはこれは御大のお仕事でしたか!と思った次第。
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