Cinema memo : 1月

新年に浮かれてたのが、ほんのちょっと前だなんて信じられないぐらい1月、なかなか慌ただしい。
されども観ねば、の映画メモ追加。
年末、地元であったので行ってみた映画と短歌にまつわるトークが滅法面白く、その際に紹介された映画『ひかりの歌』。ウユーロスペースで、2/1まで。
最近、渋谷から歩いてユーロスペースに向かうことが苦手になったので、歩行距離は長くなるけれど、代々木公園で降り、渋谷の奥から向かうことにしている。同じ場所にたどり着くのに、道中の気分がまるで違う。
一昨年、山形国際ドキュメンタリー映画祭で、山形県酒田市にあったグリーンハウスという映画館にまつわる証言集『世界一と言われた映画館』を観て以来、酒田市に興味を持っており、酒田の名物バーにまつわる、こちらのドキュメンタリーも観たい。ポレポレ東中野にて。
庄内空港で降りると、街に向かうバスは2種類あり、ひとつは酒田行き、ひとつは鶴岡行き。去年は鶴岡行きに乗ったので、今年は酒田行きに乗りたい。
アイ・フィール・プリティ!

ューマントラストシネマ有楽町で。ここでかかる映画、見逃すと新宿界隈まで追いかけるか、名画座にかかるのを待つかになってしまうので、気になる映画は上映回数の多いうちにさっさと観ておきたい。今年の抱負。
『アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング』
邦題とピンクが目に眩しいポスターだけで敬遠する人も多そうな映画だけれど、これがなかなか面白い。ふくよかな体型の女性が、その体型がゆえに自分に自信が持てずにいたけれど、強く頭を打ったことがきっかけで魔法がかかった状態になり、自分を絶世の美女と思い込む…という筋書き。
冴えないけれど実は美しい原石が誰かとの出会いにより磨かれて花開くとか、別の女優をキャスティングして同じ役がまったく違う見た目になるとか、同じ女優でもファットスーツや特殊メイクで見た目操作→素の状態に戻して印象を変えるなどの手法で、生まれ変わったキラキラの私!を演出する映画はたくさんあれど、『アイ・フィール・プリティ!』は見た目はまったく変化せず、頭を打った衝撃で彼女の内なる自己肯定スイッチが盛大に押され、昨日までと1mmも変わらない容姿の自分がにわかに煌めきはじめる、というユニークさ。あなたはあなたのままですでに素敵である、他人にならなくても、のメッセージを伝える映画は多々あれど、これほどわかりやすく視覚化した映画ってあっただろうか。意外な役どころのミシェル・ウィリアムズもあわせて楽しめる。
タイトルもシンプルにして秀逸。名画座にかかった折には『オーシャンズ8』の併映にすると、女性は肩で風切る気分で映画館を出られること間違いなし。
リヒター|クールベ

1/20で終わる美術展に駆け込みシリーズ。ムンクとは別の日に、改めて上野へ。国立西洋美術館の常設内での展示「リヒター|クールベ」が目当て。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2018richter.html
ゲルハルト・リヒターの自宅のダイニング・ルームには、クールベの風景画が飾られていて、それと隣りあう部屋に、リヒターの自作《シルス・マリア》がある――。
かたや、19世紀なかばに「生きている芸術(アール・ヴィヴァン)」を標榜してレアリスムを創始し、近代絵画史のとば口を切り拓いたギュスターヴ・クールベ(1819-1877年)。またかたや、1960年代に資本主義リアリズムの旗手のひとりとして頭角を現して以降、つねに現代美術の最前線に立ちつづけてきたゲルハルト・リヒター(1932年-)。まったく無関係かにも思える、それら新旧ふたりの画家の絵画を、後者の自宅の様子を模すようにして、美術館のなかで出逢わせてみます。
近代絵画史の「はじまり」に立っていたクールベと、その「終わり」に立ってきたリヒター。後者は前者の絵画を、どのように見つめてきたでしょうか。現代画家のまなざしを介して、国立西洋美術館が所蔵する過去の絵画を、すこし違ったふうに見つめ直すきっかけとなったら幸いです。
クールベは風景画、リヒターの「シルス・マリア」はピントの合わない写真のようなリヒターらしい画風の風景画、もう1点は抽象画。クールベとリヒター、同じ時代に生きていたなら気が合ったんじゃないかなぁ。それとも同じ時代に生きていたとしてもやっぱり、ダイニングに絵を飾るぐらいの距離感が望ましいのだろうか。展示はクールベ1点、リヒター2点、合計3点のみ。けれどこれが、なんとも味わい深い展示で、常設のちいさな一角でしばらく痺れて動けなかった。3点だけれど過不足なく、余白も香る編集力。
この展示を観たかったのは、オリヴィエ・アサイヤスの映画(こちら。邦題は『アクトレス〜女たちの舞台〜』)を観て以来、シルス・マリアという場所に興味を抱いたから。行ってみたい。

3点だけ鑑賞してさっと帰ってもよかったけれど、西洋美術館の常設を観るのが初めてだったので、ぐるっと回遊してみることに。美術に興味を持って勉強していた時期があったけれど(博物館学芸員免許も保有)、当時の興味は写真や現代美術にあったので、西洋美術館の存在は長らくスルーしていた。こんな豪華なコレクションを散歩がてら行ける距離で、ル・コルビュジエの建築で、500円で観られるなんて、お金の意味がよくわからないな。
映画好きとしては、父ルノワール(ピエール=オーギュスト・ルノワール)の「木かげ」という作品は、そのまま子ルノワール(映画監督ジャン・ルノワール)の『ピクニック』の舞台になりそうな木かげっぷりで、父と子、血は争えぬ…!とニヤニヤする楽しみもあった。
父ルノワールの「木かげ」
http://collection.nmwa.go.jp/P.1959-0183.html
ホン・サンス監督はアメリカで美術の勉強をしていた人と記憶しているけれど、以前、監督の講義を聴講した際、セザンヌに影響を受けたという言葉があり、以来セザンヌの絵を観るたびに反射的にホン・サンスのことを考える。
こちらの講義
「シカゴの大学に美術館があり、そこで初めてセザンヌの絵を観たときに衝撃を受けました。“もうこれだけあればいい、ほかに何も要らない”、そういうふうに思ったんです」
http://unzip.jp/pickup/jiyugaoka2/
西洋美術館の常設、週末は時間延長、無料観覧日も毎月あると知った。夕食後の散歩がてら通い詰めそう。
http://www.nmwa.go.jp/jp/visit/index.html
ムンク展

1/20で終了になる美術展が多く、心が慌ただしい。スケジュールの隙間を確認しながら、映画の予定をバチバチ決めていくのも判断力を要するけれど、美術展は開館時間と混雑度とのせめぎ合いで、映画とは別の要確認要素がある。
東京都美術館、ムンク展へ。
入場は30分待ちだったけれど、無事に入ってみるとさほど混雑も気にならず、案外ゆったり鑑賞できた。展示構成のシンプルさ、作品のサイズ、展示室の規模によるものだろうか。
なんとなく「叫び」の画風から神経質で気難しい人なのでは、と思っていたけれど、50代を超えたあたりで田舎の土地を手に入れ隠遁生活に入るものの、それまでの人生で出会った人たちを描いた絵を家のあちこちに大切に飾るなんて、なんだか可愛らしい人だな、と思った。創作生活のために孤独であるべし、と生涯独身だったそうで、ムンクのことを好きだった女性たちは大変だっただろうけれど(実際、事件も発生)、数年に一度アトリエを訪ねてのんびり話すような距離感の友達でいるぶんには、面白い人だったのでは…と勝手な妄想。

「叫び」は名作を観られた達成度はあったけれど、好きだったのは、北欧の夏の海辺を描いた作品群。
「夏の夜、人魚」
https://munch2018.jp/gallery/#&gid=1&pid=10
my bestは「二人、孤独な人たち」
https://munch2018.jp/gallery/#&gid=1&pid=19
ふたりなのに孤独、男女の間には距離があって、けれど同じ方向を見ている、その背中を描く。
私の北欧イメージは一度だけ行ったフィンランドの夏、ベルイマン(スウェーデン)の映画群、ムンク(ノルウェー)でつくられており、それぞれの国はよく知ると違いがあるのでしょうが、寒く涼しい場所の色数の少ない景色と人々、どれもどこか共通項があるように思う。いつか真冬の北欧、オスロのムンク美術館に行ってみたい。
*ベルイマンにまつわるエピソードで好きなのは、『ある結婚の風景』、私は再編集された映画版を観たけれど、もともとはスウェーデンの国営放送で放映されたテレビドラマで、視聴率が非常に高く、放映時間には街から人が消え、放映後に離婚率が上昇したらしいというもの。夫婦ドロドロ修羅場作品なので、あれをこぞって熱心に観るスウェーデンの人々って…と思った。
オリムピック

大河ドラマ『いだてん』、楽しみでGoogleカレンダー、毎週日曜20時に「いだてん観る」って繰り返し設定。
志ん生パートで映る東京、日本橋に浅草、落語と東京東側の住人としてはご当地ものとして楽しい。タイトル映像で使われている東京の街並みの絵を描かれている山口晃さん、近所にお住まいのようで、私が時々行くケーキ屋がお気に入りらしい(記事)。
写真は去年11月頃、体調が回復したのが嬉しくて、仕事帰りに新宿まで歩いて映画を観に行った時。建設中のオリンピックスタジアムの脇を通過。
1週間の作業予定表。


『いだてん』タイトルバック、市川崑監督『東京オリンピック』の未使用映像が使われているらしい。
#いだてん のタイトルバックでは市川崑監督による公式記録映画『東京オリンピック』のために撮影されたフィルムのうち、映画本編では使用されなかった部分を今回初めて4K化して使用しています。中盤「1964 TOKYO」とテロップされている部分と、終盤の東京大会の開会式の部分がそれにあたります。
— 大河ドラマ「いだてん」 (@nhk_td_idaten) 2019年1月10日
風船を空に放つ映像、きっとこれだな、と思いながら観た。
公式サイトの、
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
時系列入り混じる構成を説明する目的だろうけれど、年表ページが素晴らしくて興奮。歴史映画の公式サイトも、すべからくこんな年表をつけてほしい。パンフレットも誰かが書いたコラムをひとつ省くかわりに、年表があったら買うかもしれない。歴史映画を観ていまいち理解できなかった場合、メモ書き程度の簡単な自作年表を作って後から整理することもある。私は年表を欲するタイプです。
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/history/
映画ポスター モダン都市風景の誕生

散歩がてら観た展示。湯島界隈、アーツ千代田3331にて。映画資料収集家・御園京平氏のコレクションが旧蔵していた「みそのコレクション」より、1910年〜30年代の映画ポスターを展示する「映画ポスター モダン都市風景の誕生」の展示へ。
https://www.nfaj.go.jp/exhibition/chiyoda2018/#section1-1
現在のように映画情報に気軽にアクセスできるわけではなかっただろう当時の映画ポスターは、そのものが貴重なメディアであって、俳優や監督の豪華さ、製作費の贅沢さをこれでもかとすみずみまでアピールする情報量の多さで、展示数は多くはないながら、1枚じっくり眺めるだけで未見の映画への期待値がむくむく高まる。会場に流れていた現存しない古い映画館の荘厳な宮殿のような内装。清水宏『家庭日記』でこの時代の映画館が映る場面があって、内装に見惚れたことを思い出した。
映画ポスターはカラフルだけれど、映画自体はモノクロだから、ポスターに使われる様々な色は、資料に基づいて描かれたのか、デザイナーや画家の想像した色なのか、ということを、あまり事実に迫らずにぼんやり妄想するのが好き。モノクロ映画の愉しみのひとつは、塗り絵しながら鑑賞できることで、あの素敵なドレスは何色なんだろう…口紅の色は…と、自分好みに着色。例えばルビッチ『生きるべきか死ぬべきか』でキャロル・ロンバードが着る裾にファーがあしらわれた印象的なドレスは、私の中ではシルバーグレーかアイスブルーと決めつけて観ているけれど、当時の映画ポスター画像を見ると、赤〜オレンジで描かれていることが多く、思てたんとちゃう!と心がざわつく。というのも、ただ私が寒色好きで、好きな映画は好きな色に溢れていてほしいという勝手な願望によるものだけれど。
そんな情報量の多いポスター群の中で、ひときわモダーンだったのは清水宏『彼と彼女と少年達』のシンプルでグラフィカルなポスター。新人・上原謙と書かれているのにも驚く。1935年の映画だから初々しい上原謙なのだろうけれど、誰にでも新人と呼ばれる時代があったのだな。
RIVER

空気は冷たいけれど、光に春が混じりはじめている。など思いながら皇居のお濠あたりを歩いていると、イヤフォンからtofubeats『RIVER』が流れてきた。
Spotifyによると2018年、私がよく聴いた曲ランキング第3位は『RIVER』らしいけれど、映画『寝ても覚めても』の主題歌に決まった、と公開前に情報が流れてきた後、映画を楽しみに確かに何度も聴いたけれど、映画を観てからはあまり聴いていない。
『寝ても覚めても』の本編が終わり暗転した後、すぐに『RIVER』が流れてくると、私による私のための私だけの余韻に私の気の済むまで浸っていたいのに、隣にいるシュッとしたメガネ男子(架空)が観たばかりの映画の主旨・戦略・要点・自論を理路整然と語り始めてしまって興ざめするような、ちょっと黙っててくれないかなぁって気分になりませんか。って誰に話しかけてるのかわからないけれど、私は少しそんな気分になった。
こちらのインタビューを教えてもらって読んでみたところ、
https://www.pola.co.jp/we/digital/tofubeats01/
ああ、「国語の問題は文章の中に絶対答えが書いてあるねんから、絶対100点とれるんや」思想で作られた主題歌に、「それはあなたの答えであって、私のではない」って抵抗したくなるよね、と少し腑に落ちた。
しかし年明けにテアトル新宿で3度目の『寝ても覚めても』を観ると、これまでより『RIVER』への抵抗が薄れていたのは、それまでヒロイン・朝子さんの気持ちで観ていたけれど、3度目ともなると俯瞰で物語を捉えるようになって、朝子の行動も周囲の反応も、♪きっと目に映るすべてのことはメッセージ〜♪って思えたからかもしれない。同じ映画を何度観るのは楽しいこと。自分も変化するから。
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