好み

『白夜』、ヴィスコンティ版とブレッソン版がずいぶん違ったので、どちらも観て原作も読んでそうな人と話したいな、とイタリア人の友人にメール。あなたはブレッソン派だと思うけれどイタリア出身だからヴィスコンティ贔屓かもしれないね、と送ったら、どちらも観て原作も読んだけれど、遠い過去のことでどれが好きと即答できない、再見&再読するね、と返事がきた。
さらに「昨夜はミゾグチの The 47 Ronin を観た。日本の歴史について予習が必要だったけれど、頑張って集中して最後まで観た。4時間あった。君はあの映画が長いって知ってるだろうけれど…」と書いてあって、シネフィル青年の体力&気力を尊敬。溝口も時代劇もさほど好きではない私は『元禄忠臣蔵』(1941年)、この先の人生で観ることはなさそう。私はもうきっと好きかどうかわからなさそうな長い映画を観ることはないかもしれない、と思った2018年夏である。
日本に行きたいけれど夏の暑さと湿度が殺人的で躊躇する、と書かれており読んだ勢いで涼しい場所に友人たちと共同で別荘を買うことを思い立ち、物件検索を始め、勢いで買えそうな値段の軽井沢の物件を発見して妄想している。音楽家もいるから、さながら『カルテット』の世界。酷暑の妄想は私をずいぶん遠くまで連れて行くなぁ。
暑さ

東京、久しぶりに、無防備に外に出ると命の危険に晒される暑さが続いている。
ここ数年、最も暑かった瞬間は、3年前の夏、北京の午後だった。朝から映画館で映画を観て、観終わってお昼を食べ、前門(天安門広場の南)にいたので、あろうことか天安門広場を横断しようと無防備な決断をしてしまった。北京で一番好きな場所だから。その日の北京が40度で、太陽が高い位置にある午後2時、遮るものが何もない、歩いても歩いても毛沢東の肖像画は近くならないほど広い場所にいることを、歩き始めてから気がついた。体感温度は40度後半だったと思う。ここ数年、最も死に近づいた瞬間だった。
グリルの上で焼かれる野菜の気分ってこんなんかしら、と思ったあの日に比べれば、現在の東京はまだマシと思えるのだから、何事も相対化なのかもしれない。
この日に観たのは、陳凱歌(チェン・カイコー)の『道士下山』だった。日本で公開されてもきっと観ないけれど、中国の映画館で観るとやたら面白く感じる、という部類の映画だった。ワイヤーアクションばりばりのカンフー映画。
中国最大の超大作が大コケし、3日で公開停止したニュース(こちら)を読んで、あ、ちょっと観たいなぁ、中国の無闇に金ピカでギラギラしたシネコンで、と思いました。
香り

この夏は東京から出ない予定なので、頭の片隅に引っかかっている、東京で行きたいと思って行っていない場所をリストアップしてみたら、半分以上「食べてみたいかき氷リスト」だった。
ということで山の上ホテル、コーヒーパーラーヒルトップ。水出しコーヒー蜜、中にはラムレーズンのアイス。大人の味だった。

ヴィスコンティ『白夜』、DVD付属のリーフレットを読んでいたら、小さなリーフレットの1ページを割いて、ヴィスコンティのプロフィール、フィルモグラフィを紹介するページの前半は無難な内容だけれど、後半はバイセクシャルだったヴィスコンティと噂のあった男たちの名前を羅列し、「香水はイギリスで140年以上の歴史を持つペンハリガンのハマムブーケを愛用していたという。」で締めくくる唐突感ある着地。限られた文字数にオフィシャルなプロフィールからプライベート紹介までギュッと混じった少し暴力的な密度があって、くらくらした。
ヴィスコンティの姿はもう写真で見るしかないけれど、「愛用の香水」を知ることは、肉体が消えても存在を立体的に感じられる、まさに残り香のようで面白い人物紹介だな、と思った。
https://www.penhaligons.com/hammam-bouquet/
白夜

借りては返し返しては借り、定期的に通っている図書館のサイト、返却日確認や予約のため、最もアクセス頻度の高いサイトかもしれない。新着DVDのお知らせをクリックしてみると、ヴィスコンティ『白夜』があったので借りた。ジップロックで貸し出される文京区スタイル。
5年ほど前、『白夜』のリバイバル上映をユーロスペースに観に行くと話したら、ヴィスコンティの?と言った人がいた。私が観に行くのはブレッソン『白夜』だったけれど、ドストエフスキー原作のささやかな物語は、ブレッソンより前にヴィスコンティも映画化していたと知ったのはその時で、ヴィスコンティ版を観る術がわからず、図書館のおかげでこの度めでたく機会があった。
原作のあらすじは、
サンクトペテルブルクに引っ越して以来友人が一人もできず夢想的で非常に孤独な生活を送る青年が、白夜のある晩に橋のたもとで一人の少女の出会う。不器用な青年は少女に恋心を抱き、逢瀬の度に気持ちは高まる。しかし少女の婚約者が現れその想いはあえなく散ってしまう。
wikiで調べてみると、ヴィスコンティやブレッソン以外に様々な国で映画化されているらしい(こちら)。登場人物も少なく、どんな街でも舞台となり得る物語だから納得だけれど、インドで何度も映画化されているのが不思議。最後は全員で歌って踊ったりするのかな…。
ドストエフスキーの原作にも手を出してみようとしたものの、主人公の男があまりに多弁で辟易とし、数ページで挫折した。ひとたび男が話し始めると、文庫数ページにわたって一人語りが続く。その語りの長さが彼の孤独の深さを表しているものの、多弁な男に苦手意識が強いもので、この男の口をピシャッと閉じて物語のエキスだけ抽出したブレッソンはさすがだなぁ…と敬服。先に観たブレッソン版の印象が強烈だったせいか、ヴィスコンティ版はさほど好みではなかった。
映画の設定はブレッソン版のほうが年齢も含め原作に近いと思う。ヴィスコンティ版は、当時30代に差し掛かっていたマストロヤンニに合わせてということか、うだつがあがらないサラリーマン設定。女性に縁がないわけではないが、転勤の多い仕事のせいで否応無しに引越し続きで、深まる仲も深まらず、継続した関係を求めても手に入れられないサラリーマン残酷物語。「甘い生活」でブレイクする数年前のマストロヤンニはややふっくらしてシャープさに欠けるもののやっぱり美形で、マストロヤンニが「女性とうまくいかなくて」とボヤいても、全身から放たれる隠しきれないナチュラル・ボーン・モテ男オーラに、ご冗談でしょう?と思ってしまって、斜めからツッコミながら観ることとなった。
イタリア/フランスというお国柄の違いというより、ヴィスコンティ/ブレッソンの作風の違いということか、ブレッソン版のなかなか相手に触れませんし迂闊に言葉もかけられません、という禁欲ムードに慣れてしまうと、ヴィスコンティ版のマストロヤンニは、べたべた相手に触り、よく喋り、居酒屋で管を巻く中年男のようであった…。
けれど、さすがにヴィスコンティ映画の美しさはたっぷり携えており、ヴィスコンティのわりには規模が小さい、小品…と思えば、ロケではなくチネチッタにつくられた巨大セットで撮られたそう。運河も橋も人工。撮影はジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽はニーノ・ロータ。フェリーニ映画でもお馴染み・イタリア映画の至宝と呼ぶべきスタッフの安定のお仕事。とりわけ雪のシーン!ホン・サンス『それから』を観たばかりの目には、モノクロの画面に雪が降ると、どうしてこんなに美しいのだろう?と思わずにいられない。

ヴィスコンティ版。これ全部セット!
【本日更新】moonbow journey 008 『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』

本日更新しました。
映画のストーリーにあわせて上映場所を変えてゆく、移動式映画館moonbow cinemaの着想から今日に至るまでを追う連載「moonbow journey」、第8回は『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』。
バンクシーのドキュメンタリーの上映会場となったのは、渋谷のこんな外観の雑居ビル。ビル内部の写真を拝見すると、こんな場所でまさか上映会が開かれているなんて、秘密の会合みたい…と思いました。何年暮らしても未踏の場所ばかりの東京で、moonbow cinema体験、小さな旅のようです。
『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』、私は未見なのですが、「暑さを吹き飛ばすような痛快な作品」とあらば、今年の東京の猛暑にもぴったりかもしれません。amazon videoにあるのも発見した!(こちら)
それではどうぞ、お楽しみください!
魅惑の目次

部屋の片付けが気が済むレベルに到達するまで、新しいものをなるべく買わないようにしており、特に本は増やしていないけれど、定期的に図書館に通っているせいか、まったく困らない。美しい本を所有する歓びも知っているつもりだけれど、身軽でいたい願望のほうが上回る、ということでしょうか。
気になっていた『ハッピーアワー論』、予約していたのが早速まわってきたので借りる。この魅惑の目次だけで、読むべき理由として十分すぎる。
http://www.hatorishoten.co.jp/items/11150485
きのこ映画

『ファントム・スレッド』を観て、『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』も観ると、その映画の小道具、物語のスパイスとしての優秀さに、思わず「きのこ…きのこよ…」と観客は感嘆の溜息をつくであろう。
熊楠先生も現代を生きていたなら、きのこ映画研究をされたに違いない。どうかな。
世のきのこ好きは、ソフト化されたなら2本立てで、きのこ映画祭を催すと良い。きのこオムレツやきのこソテーをつまみながら。
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