オリンピック

部屋のスクリーンの昼下がり。こんな、映画の主人公のような人生の人って本当にいるんだなぁ。時に現実はフィクションよりフィクショナルなのね。
ふと、2020年のオリンピック、記録映画は製作されるのだろうか、と思った。市川崑監督の「東京オリンピック」は、スポーツに関心の薄い私でも不思議と夢中で観てしまう映画だった。ああいう映画が、また生まれてくれないかな。
日本オリンピック委員会のサイトにある、市川崑監督インタビュー。興味深い。
https://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/interview/index.html
懐かし案件

2〜3年前に、ひさびさにゆっくり時間をとって京都に行った時の写真を偶然目にして、写っている立誠シネマは閉館したし、みなみ会館は3月に閉館するし、ぼやぼやしているうちに、この世は行けない場所ばかりになってしまうのね。
早稲田松竹の「ダンケルク」上映は35mmフィルムに傷がついてデジタルに切り替えるとお詫びが貼ってあった。フィルム版「ダンケルク」は日本に1本しかなかった、ということらしい。フィルムで映画が上映されていたことも、あっという間に懐かし案件になる。「インセプション」はフィルム上映のままとのこと。むしろそちら目当てだったので楽しみだな。
ラインナップに追加されていた「中国第6世代の作家たち」も、3月の楽しみに。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/schedule.html
オフィスから見える東京の景色が、日に日に春の気配を纏っている。冬服に飽き飽きしている。
あさがくるまえに

早稲田松竹で観た「あさがくるまえに」。カテル・キレヴェレという若き女性監督。
サイト(こちら)のあらすじより。
ル・アーヴル。夜明け前、ガールフレンドがまだまどろみの中にいるベッドを抜け出し、友人とサーフィンに出かけたシモン。しかし彼が再び彼女の元に戻ることはなかった。帰路、彼は交通事故に巻きこまれ、脳死と判定される。医師はシモンの両親に移植を待つ患者のために臓器の提供を求めるのだが…。
パリに住む音楽家のクレールは末期の心臓病である。生き延びるためには心臓移植しか選択肢はない。しかし彼女は、若くない自分が延命することの意味を自問自答している。そんな時、担当医からドナーが見つかったとの連絡が入る――。
最前列で観ていると、冒頭のサーフィンのシーンの迫力に圧倒された。あらすじを把握せずに観始めたけれど、この後に何らかの不幸があるのだろうな、と予言するような波の迫力。波と戯れる生の極みにあるシンプルに若い青年たちと猛々しく死を匂わせる波との強いコントラストがそのまま生と死のあわいを無言で表現していた。
物語そのものに心動くというより、タハール・ラヒムはじめ昨今のフランス俳優陣にさほど明るくない私でも、それなりに見覚えのある俳優が何人も出ているのに、彼らが群像劇の一部としてうまく周囲に馴染み、うまく気配を消しており、結果、失われようとする若い命や、彼の身体が動いていた頃の小さな恋の思い出など、映画のフレッシュな部分が際立って見えることに心動いた。心臓を移した後の身体なんて、肌もなめらかで彫刻のよう。こんなふうに若さを扱えるのは、監督自身の若さゆえなのだろうか。横たわる女性の目のクローズアップで映画が終わったことも、「あさがくるまえに」を印象深く記憶したことの理由のひとつとして、記録しておきたい。
https://www.reallylikefilms.com/asakuru
アヤちゃん

ユーロスペースで岡田茉莉子さんのトークを聞いたあと、ぼんやり歩きながら、これまで好きだった岡田茉莉子映画って何だっけ…と考えてみたら、小津「秋日和」のアヤちゃん!アヤちゃんが目の前にいたのに、頭がぼうっとしちゃった。アヤちゃん!寿司屋の娘アヤちゃん!モヘアのニットのアヤちゃん!
「秋日和」、とりわけ好きな映画でもなかったけれど、蓼科高原での映画祭で改めて観てみたら、やたら良かった。再発見。映画の魅力の大半を、潑刺として、ふとした隙に翳りを漂わせるアヤちゃんの魅力が占めていた。以来、アヤちゃんは小津映画の女たちの中で一番のお気に入りとなった。ヒロインのはずの司葉子のことはあまり覚えていない。東京駅を見下ろす場所に行くと、電車に向かって手を振ったアヤちゃんをいつも思い出す。
そして「さらば夏の光」が1968年の映画ということで、1968年の岡田茉莉子さんの他の映画って観たかなぁ、と調べてみると、大映映画「不信のとき」が同年だった。「さらば夏の光」では、少しずんぐりしているように見えた岡田茉莉子さんですが、「不信のとき」では普段どおりシャープで、映画スタア!という印象だったので、体型の微妙な変化というより、やっぱり「映画は大映」ということなのかもしれません。
トーク、聞き終わってしばらくしてからのほうが、じわじわ岡田茉莉子さま!という感慨がこみあげてきたのだった。
さらば夏の光

日曜午後の映画。ユーロスペースで、毎年この季節に開催される北欧映画の映画祭「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル」、1週間と会期が短く、いつも逃してしまうので今回初めて行った。北欧映画だけではなく、毎年1本、北欧に関連する日本映画を上映することにしているらしく、今年は「さらば夏の光」がかかった。1968年、吉田喜重監督。
http://tnlf.jp/movie#saraba_natsu
日本航空がヨーロッパ10都市ほどに同時就航した年で、その記念映画として撮られた1本。当時、映画の予算は通常4〜5000万円のところ、1000万円の低予算で撮る必要があり、キャストは4名、セリフは全部アフレコで、ロケは1週間。主演は岡田茉莉子。衣装は森英恵のオートクチュールだけれど、脚本が事前に出来上がっていないので、訪問するヨーロッパの街のイメージで仕立ててもらい、ヘアメイクも衣装担当も同行しないため、岡田茉莉子自身がアイロンをかけて準備し、髪結いは東京で習ったのを自分で再現、メイクも自分で。即興的に脚本が出来上がり、毎晩、翌日の撮影分がキャストに渡され、すぐ覚えては撮られ…を繰り返す過酷な日々だったとのこと。
文系研究者がパリに渡り、偶然、女と知り合う。女は人妻で、その後ヨーロッパの各地で出会い、ともに時間を過ごしながら、男が探し求めるカテドラルについての会話を交わす。やがて、女は長崎で終戦を迎え、何もかも捨ててヨーロッパに渡ったことが明らかになる。岡田茉莉子がよろめきながらも自立した女を演じる。経済的にはどう自立しているのか不明だけれど、家具のバイヤーという設定なので、それで生活を成立させているのだろうか。吉田喜重作品らしく観念的なセリフ、モノローグが続き、途中しばし意識が飛んだ。吉田喜重と侯孝賢は私にとって睡眠薬のような映画を撮る人で、必ず眠ってしまう。絵画のような構図は他の日本の監督であまりお目にかからないトーンで、ヨーロッパの香りがしたのは、ヨーロッパで撮られたという単純な理由だけではないと思う。観ると必ず眠るし、退屈もするけれど、それでも観てしまう魅力はある。
森英恵の衣装をくるくる着替える岡田茉莉子。撮られ方のせいか、一部の衣装のシルエットのせいか、少し身体がずんぐりして見えたけれど、美しい。シュミーズの上にコートだけ羽織って街を歩く、よろめいた末に奇行に走ったかと観ているこちらが緊張する場面もある。
吉田喜重&岡田茉莉子夫妻によるトークが上映後にあった。古い日本映画の女優陣、若尾文子、岸恵子、浅丘ルリ子…いろんな人のトークを聞くチャンスがあったけれど、もうじゅうぶん贅沢な時間を味わいせいせいした気分になりつつ、他に誰かお話を聞いてみたい人って、まだいるかしら?と考えた時、岡田茉莉子がいるではないか!と気づき、機会を伺っていた。
「さらば夏の光」は50年前の映画。目の前にいた現在の岡田茉莉子は85歳。背筋がすっと伸びて凛として、キリッとした特徴的なフェイスラインもそのまま。美しさとは若さのことではないのだな、と思いました。場内は満席、立ち見も出ていて、半世紀前の映画を観にきてくださってありがとうございました、と言った後に少し涙ぐんでおられた。モンサンミッシェルの場面では、女の薬指のダイヤの指輪がキラリと光っていたけれど、その指輪を別の街で紛失したことに気づき、結局見つからなかったらしい。ラストはイタリアで、街中でタクシーに向かって手をあげる岡田茉莉子のショットで終わるけれど、離れた位置にある望遠カメラで撮られていたため、映画の撮影とは気づかない通行人が多く、イタリア男たちに声をかけられまくり撮影が難航したとか。
吉田喜重監督は、自身の映画はテーマ性が強く、フィルモグラフィも3つの時代に区分される。まず松竹の監督時代は青春映画を撮った。次に女性を描く映画を撮った。その後は政治の映画を撮った。「さらば夏の光」は女性を描く映画期に撮ったもので、上の世代の映画監督は男尊女卑思想が強かったけれど、それに対する反発があり、とにかく女性を強く、自立した存在として描こうと思ったとのこと。「さらば夏の光」でも、女は自らの意思で日本を離れ、帰るつもりはない。男と出会い、夫と分かれるが、やがて男とも別れる。男に依存する人生ではなく、男がいないと生きられない女ではない。女はすべてを自分で決めていた。
このお話を隣で聞いていらっしゃる岡田茉莉子さんの佇まい、マオカラーのジャケットの監督、岡田茉莉子さんは黒ずくめで、お好きだというヨウジヤマモトかしら、という装い。同い年のお二人は、同志のような結びつきで長い時間を過ごしてきたのかな、と想像した。大女優と監督というより、本郷や御茶ノ水、神保町あたりでデートしてそうな雰囲気なの。

ずいぶん前、吉田喜重監督のトークは聞いたことがあり、その時に買ったと思われるパンフレット。2008年だったのかな。「エロス+虐殺」がパリで上映された時、ポスターの前で撮られた写真が表紙。上映されたと思わしき映画館LA PAGODEは、ボンマルシェの近くにある、東洋寺院を改装したエキゾチックな映画館。「エロス+虐殺」、LA PAGODEでかかるのが似合う。

その時にいただいたサイン。岡田茉莉子さんのページの余白に書いていただいたの、今見ると良い記念だった。
連休

連休、静養→回復に勤しんでいたせいか、to do listをほとんど消せておらぬが、来週はさほど仕事も立て込まないことが期待できるので、明日からの自分がんばれ。ノーザンライツ映画祭と早稲田松竹で計3本、映画を観た。
早稲田松竹、「あさがくるまえに」「グッド・タイム」の2本立ての後、夜は「Pola X」がかかるという、わー強いわー、3本続けて観た人は、どういう気持ちになればいいわけ?と問いたくなる番組。「Pola X」はパスしたけれど、2本立てどちらも素晴らしかった。
http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/nowshowing.html
特にようやく観たサフディ兄弟「グッド・タイム」、これはもう、映画館でこそ観るべき1本で大満足。アップリンクよりスクリーンの大きな早稲田松竹まで待って良かった。「コズモポリス」で観て以降、ロバート・パティンソン、気になる俳優だけれど、「グッド・タイム」の彼、最高じゃない?!ロバート史上最高スコア叩き出した!金メダルや(オリンピック期間らしいテンション)!
次はどんな映画に出るのかな、とつらつら考えていたら、間もなく始まるベルリン映画祭で、新作がかかるもよう。「ダムゼル(原題)/Damsel」、ミア・ワシコウスカとの共演で、なんと西部劇…あ、西部開拓時代とあるだけで、西部劇ではないのか。西部もの。写真の男はロバート・パティンソンだと思うのだけれど、肌の色も笑顔もなんだかイメージと違うし、「グッド・タイム」と同じ俳優とは思えない。俳優さんってすごいですねぇ。
https://www.cinematoday.jp/page/A0005836
近未来の賛美歌

目が覚めて最初に読んだニュースが、ヨハン・ヨハンソンの訃報を伝えるものだったので、とても哀しい気持ちで日曜を過ごした。日本橋で映画「メッセージ」を観た夜を忘れない。壁いっぱいがスクリーンの上映室に静かに映し出される墨絵のように美しく奇妙な言語。解読する人々。ヨハン・ヨハンソンの音楽。大音量で聴いた「Heptapod B」は、間違いなく2017年、映画館で耳にした最も美しい音楽だった。近未来の賛美歌みたい。
音楽に疎い私が、それでも音楽監督の名前だけで確実に観に行く、という重要人物は2人いて、ヨハン・ヨハンソンはその1人だった。もう1人、ミカ・レヴィ、どうか長生きしておくれよ…。
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