こんなところにもスポーツが

昨日発見した、エルメスのサイトの、過去の上映プログラムとアレクサンドル・ティケニスのテキスト。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/
観たものも観られなかったものも、つらつらなぞってみると、最初にプログラミングの妙に唸ったのはスポーツ映画特集の、「こんなところにもスポーツが」の月だと思い出した。ジャック・タチのドキュメンタリー目当てに行ったら、そちらも良かったけれど、1本目にかかった「美しい身体 -女性とスポーツ」の物珍しさに夢中に。
http://www.maisonhermes.jp/ginza/le-studio/archives/524693/
家電の発達により、家事で身体を動かすことが減り、鈍った女性たちの身体を再び動かし、美しいボディラインを取り戻すためにスポーツを推奨する、フランス政府が依頼して?作られた映像。家電を使って家事をするマダムが、おもむろに家の中で体操を始めるシーンが冒頭にあったように思う。やがて体操は集団化し、マスゲームのような様相に変化していくのが目に面白く、また政府が絡んでいる事実も興味深すぎる。こんな映像、もっと観たいわ。そしてスポーツというエルメスの年間キーワードから、この映像を選んで組み合わせるセンス!
プログラム・ディレクターの方の文章を好きなのは、彼らがたくさん映画を観る人であるにもかかわらず、観れば観るほどまだ観ぬ膨大な映画の存在を知って打ちのめされ、それでも海の底から光る貝殻を拾ってその美しさを見せてくれるような、諦念と情熱と謙虚さの混じり合いが行間から漂うからかもしれません。
写真は北京で撮ったオリンピックスタジアム。鳥の巣と呼ばれている建造物。こんなところでもスポーツが。
血を吸うカメラ

土曜、エルメスで観た「血を吸うカメラ」、原題はPeeping Tomで「覗き魔」の意味らしい。1960年のイギリス映画、マイケル・パウエル監督。
メゾンエルメス、サイトでの紹介はこちら。受付でいただける美しいリーフレットで、いつも楽しみにしているアレクサンドル・ティケニス氏のテキストもwebで読めるようになっている!あらすじは以下。
圧倒的な恐怖の前で、人はどんな顔を見せるのか--。映画の撮影助手をしているマーク・ルイスは、一見、どこにでもいる平凡な青年。そんな彼が、恐るべき犯罪を次々と計画し実行していく。マークの亡き父は、人間の「恐怖」についての研究に生涯を捧げた学者で、幼いマークはその実験材料だった。やがて青年となったマークは、女性の断末魔の、恐怖におののく表情に途方もなく惹かれるようになり……。
時代に先んじて猟奇殺人犯の心理を描いた本作は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』と並び称されるサイコ・ホラーの金字塔。巨匠マイケル・パウエルの問題作にして傑作である。
古い映画ながら、視覚刺激の連続で見飽きなかった。物語はトラウマものと括ってしまうと味気ないけれど、幼少期に親から植え付けられた恐怖が、大人になった青年の身の上でも再現され、愛する人に出会ったがゆえに、自らの歪な欲望と、愛ゆえに生じた希望の間で葛藤する。あらすじにあるとおり、主人公の血を吸うカメラの餌食になり、恐怖におののく女の表情が度々登場し、マイケル・パウエル監督といえば最近「黒水仙」をDVDで観たばかりだったので、監督自身が気のふれた女の表情や叫び声を撮ることに欲望があって、主人公は監督自身の欲望のデフォルメなのではないか、と邪推した。
ファッショナブルな映画でもあるけれど、女たちの装いの華やかさより、主人公の端正な着こなしや後生大事に抱えるカメラを包んだ使い込んだ革の鞄を目で追った。そしてインテリア!主人公の部屋は狭い生活スペースとその奥にある秘密の広い部屋で構成されており、広い部屋は彼が撮った映像を現像、上映する場所。現像に使う薬品の入った瓶がずらりと棚に並び、スクリーン、フィルム映写機、そして名前の入ったディレクターズ・チェア!映画好きにとって夢のような部屋なのに、スクリーンで上映されるのが殺人映像というのが切ない。
カタカタと映写音に包まれ、撮った映像を確認する主人公を、スクリーンで眺める観客である私の二重構造、確かに彼は歪んだ覗き魔であるけれど、私もまた彼の欲望を時空を隔てた場所で興味深く眺める覗き魔。
この映画は、1960年のイギリスでは受け入れられず、マイケル・パウエル監督の権威は地に落ち、やがて映画界から追放されるに至ったのだとか。早すぎたということか。101分を存分に楽しんだ私は、失意のマイケルの肩に手を置き、大変やったな、私は好きやったで。と伝えたくなった。
過去の上映アーカイブ、アレクサンドル・ティケニス氏の文章つきでwebに揃ってるの発見。嬉しい!
銀ブラ

昨日、髪を整えに銀座に出たついでに、シャネルで写真展、エルメスで映画を観て、かねまつ本店で靴を修理してもらいがてら出たばかりの銀座百点をもらう、パーフェクトな数時間の銀ブラを達成した。あれもこれも無料でほとんどお金を使わなかった。老舗の懐の深さと安定感にうっとり。
夏、手土産を買った和菓子屋で8月号をもらって以来、毎月1回は銀座でのんびりして、ついでに銀座百点をもらいたいものよ…と心に決めたけれど、9月号をもらい損ねているうちに10月号が出てしまった。
季節感ある表紙、読みものの充実、クラシカルな文字組、魅力はたくさんあるけれど、銀座百点は何より、その月、画廊や劇場で何が観られるか情報が載っていて、銀座のタウン誌として機能しているところが素敵だと思う。誰もがインターネットで何もかも調べるわけじゃないものね。

映画のページもちゃんとあって、その月、銀座有楽町日比谷界隈の映画館でかかるたくさんの映画からかの数本のチョイスも銀座百点らしさがある。有楽町スバル座、行ったことないので行きたいけれど、観たいものがかからないというジレンマ。隣のページはとらやの羊羹の広告。
銀座百点
DEPARDON TOKYO 1964-2016

銀座、シャネル4階ネクサスホールで、レイモン・ドゥパルドン写真展。フランスから初めてアジアにやってきた、若き気鋭の写真家が撮ったオリンピックに湧く1964年の東京。その後何度も来日を重ね、2016年の写真はカラー。オリンピックのエンブレムのような円をモチーフにした会場、撮った年代によって3種類の色で壁が塗られている。
http://chanelnexushall.jp/program/2017/depardon/
映画で時折、海外の監督が東京で撮った映像が混じると、普段目にしている街の風貌が途端にエキゾチックな未来都市の匂いを漂わせるのが、不思議で面白いな、と思う。「ヤンヤン 夏の想い出」で、丸の内のビルの夜の窓の灯りが並ぶシーンを目にするたびに、涙が出そうになるのはどういう心の作用なんだろう。それからオリンピック自体には興味がないけれど、オリンピックを撮った映画って面白いものがあって、市川崑はもちろん、クリス・マルケルが撮ったヘルシンキ・オリンピックについての映画も楽しんだ(エルメスで観た。こちら)。記録するために派遣されたはずが、作家の色気がどんどん出てしまって脇道に外れてしまう映像たち。
レイモン・ドゥパルドンの撮った東京、オリンピックも、そんな豊かさがあって好みだった。初めての街に来て、生まれたばかりの目で世界を捉え直しているような。

これは64年のものではないけれど、バスの運転席の後ろから覗いた東京。「東京物語」にこういうショットあったなぁ。

こちらは64年。人もさることながら、街が、当たり前だけれど60年代の映画で観るままの街が写っていて興奮。都電もあるし、ビルはまださほど高くなく、東京の空が広い。街ゆく人々の和服比率の高さ。
64年を観た後に、2016年を観ると、2020年のオリンピックもこうやって記録されたなら、2070年頃に開催される写真展では、現在最新のガジェットや車も、人々の服装やメイクも、わぁ!古い映画で観たまんま!って、2070年の観客は思うのだろうな。
レイモン・ドゥパルドン、現在ドキュメンタリー(こちら)も上映されている。

ネクサスホールで開催される写真展、好みのものが多く、シャネルマークデザインのエレベーターのボタンを押すのも楽しい。

エレベーターに同乗するマドモワゼル。
写真展は、10/1(日)まで。間に合った。
猫が行方不明、つれづれ

昨日更新した、いこさん連載第4回「猫が行方不明」、
https://cinemastudio28.tokyo/happyhourfromkyoto_004
この京菓子、絶対好きな味だな、次の京都で買おうっと。と思っていたら、京都から便りが。撮影に使ったものを送ってくださいました。素早く夢が叶った!
テキストにある通り、ふわーんむにゅーん食感で、味はシナモンが効いていてエキゾチック。ちょっと異国の香りがして、こんなお菓子が京都の老舗にあるんだなぁ、と驚き。なんだこれ!って確かめつつ、ぺろっと何個も食べられそう。

「猫が行方不明」、映画はなかなか上映されないし、レンタルでもほとんど出回っていない?ので、久しく観ていない。観る方法がわからないので、シナリオ採録されたパンフレットを探して購入。引越しのシーンはなんとなく覚えていて、マットレスの箇所が記憶から抜け落ちていたけれど、運ぶシーン、ばっちり写真があった!これが噂のマットレス感!お菓子の表現ボキャブラリー、美味しい、きれい、サクサク、モチモチなどに「マットレスっぽい」が追加されました。

シナリオは、どの場面で何の音楽が流れているかもばっちり書かれていて、さすがにシナリオからは音は鳴らないから、映画観たいなぁ…と思っていたら、最近出入りしてる宇宙のデパートメントストアで格安でサントラを発見。日本版が作られなかったのかフランスのCDで、日本のサントラにありがちな、しがらみにより肝心なあの曲が入ってない、なんて悲しい事案も発生せず、気前よくあの曲もあの曲も入ってた!PCに取り込んで、物質(CD)は京都に送る。で、最近、毎日聴いてる。あの映画に登場する多様な人々のバックグラウンドのように、ジャンルごちゃまぜの楽しさがあって飽きない。
trailerに流れてるのオープニング曲だと思うけれど、このFood for Loveが、私は「猫が行方不明」の曲!ってテンション上がって好きだな。この動画はPV…?違うのかな。
いこさんブログにさらに「猫が行方不明」のレビューがあるので是非ご一読ください。
http://iqc195.blogspot.jp/2017/09/blog-post_92.html?m=0
最後にパリの住人の視点からテキストに意見をくれた、パリ在住の親友たまちゃん(生まれ育ちが京都で元バスティーユの住人って、今回のテキストに意見もらうのに最適!)、お世話になりました、ありがとう!
【本日更新】彼方からの(甘い)便り Happy Hour from Kyoto 第4回

熱いお茶と、ちょっと甘いもんが恋しい初秋。本日更新しました。
いこさん連載「彼方からの(甘い)便り Happy Hour from Kyoto」第4回はセドリック・クラピッシュ監督「猫が行方不明」!ある街の日常の一コマを切り取ったスケッチのような可愛い映画。ある街って…?
映画とそれに合う京菓子をご紹介いただくこの連載、今回はアイディアを聞き、京菓子のビジュアルを見た時、どうして「猫が行方不明」にこの京菓子なんだろう?って不思議でした。そして、読んで爆笑!予想もつかないアレが…確かに似てる!頭の中ってほんと自由だな!
映画の記憶って不思議で、筋書きはさっぱり忘れても主人公のワンピースの柄はくっきり覚えていたり、メインの音楽より別の場面にちょっとだけ流れたメロディーを覚えていたり。確かにそういうことって、ある!「猫が行方不明」は、そんな「ちょっと気になるささやかな引っかかり」に溢れた映画でした。
なかなか観ることが難しい映画ですが、未見の方も、まずは紹介された京菓子を食べてみて、ふーん、これがその…?!(もぐもぐ)って妄想してみるところから、映画の時間はもう始まってるんだと思います。
それではどうぞ、お楽しみください…!
女が身ひとつになるシリーズ

部屋の片付けに弾みがついてきて、片付けハイの状態にある。あっさり手放せるものとそうじゃないものの境界線はどこにあるのか、まだ説明はうまくつかない。映画に関するものも、賞味期限が過ぎたものは手放しているけれど、本も資料も何年ぶりかに触ってみると、それを大事に手に入れた時の自分も同時に思い出し、懐かしくも面倒。そういう種類の湿り気、苦手なのよね。
「スタージェス祭」のパンフレットは捨てない組。1994年に渋谷で特集上映(と言っても3本)された時のパンフレットで、3本分のシナリオも採録されて豪華。もちろん上映には行っておらず(そもそも東京に住んでいない時期)、古本屋かオークションで手に入れたもの。このクラシック上映は監督別にシリーズ化していたようで、大切にしているルビッチのものもこのシリーズ。パンフレットのデザインがいいね、と思ったらコズフィッシュが手がけていた。
プレストン・スタージェスはハリウッドのコメディ監督。スクリューボールコメディの名手と呼ばれている人。ルビッチほどでないにせよ大好きな監督で、シネマヴェーラなどでクラシック特集があった際は、ラインナップにまずスタージェスの名前を探す感じ。このパンフレット、片付け祭の合間に手に取るにふさわしく、3本のうち1本「パームビーチストーリー」は、女が身ひとつになるシリーズの系譜なんである。
「パームビーチストーリー」はいくつか邦題がある映画で「結婚5年目」と呼ばれていたりもする。名の通り、結婚5年目の夫婦が倦怠期に陥り、もうイヤ!と妻が身ひとつで家を飛び出し、やがてまた戻るまでの珍道中。この映画の清々しいところは、まさしく身ひとつである点で、お金も持たずにとりあえず駅に向かって走り、改札では周囲のおじさま方に色目を使って入場、そのまま電車に乗っちゃう。銃を乱射する過激なおじさま集団と触れ合ったり(電車と銃はスタージェスの常連アイテム)、御曹司に見初められ贅沢三昧を味わったり、片付け本によくある、新しい何かに出会いたければ、何かを捨てなければならないのです的セオリーを王道でいく展開だけれど、この妻は美貌と愛嬌で難事をくぐりぬけながらも、モノにはさっぱり執着なさそうなのが最高。スタージェスの女たち、みんなカラッと陽性でかっこいいの。

片付けの息抜きにパラパラ開いてみたら、中野翠さんのエッセイがあり、スタージェスの魅力がしっかり書かれていて同意しきり。
プレストン・スタージェスのどこが一番凄いかというと、タメを利かせないところである。ものすごく凝ったセリフや卓抜なギャグがギッシリと詰まっているのだが、セリフとセリフの間の余白や空白はギリギリに切り詰められているし、”思い入れたっぷり”みたいな場面は極力排除されている。タメを利かさずに、ひたすら先を急ぐ。しんみりしたり、ほのぼのしたり、うっとりしたりしているヒマもなく、どんどんどんどん先へ進んでしまう。(中略)こういうタメを利かさないコメディというのは、嫌いな人は嫌いだし、好きな人は好きである(当たり前のようだけど)。私は、こういうコメディのほうが、何か、下世話な道徳性とスッパリ手を切っているようで、爽快痛快に感じてしまう。コメディというのはテンプラのようなもので、カラッとしているほど上等だと思う。説教や人生訓といった不純物の多い油で揚げちゃあ、ダメなのよ。
そうなのよ!あー、言いたいこと書いてくれててスッキリした。そして明日のお昼は、会社の人たちとテンプラ食べに行く約束なの思い出した。初めて行く店だけれど、カラッと上等なテンプラならいいなぁ。
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