近代化

最近、映画を見逃すことが増えているので、絶対観ると決めた映画はオンライン予約し、他に何があろうと行かねばならぬって自分を追い詰めることにした。ずいぶん久しぶりのユーロスペース、オンライン予約ができるようになった。「この世界の片隅に」を上映してみて、どっと観客が押し寄せ、ミニシアターがいかに非近代的かを痛感したから…という理由を何かで読んだ。柔軟な対応!しかしサイトから、座席指定、クレジット決済してという一連の流れが、え?私、行くのユーロスペースよね?あのユーロよね?と戸惑いを生んだけれど、そのうち慣れて便利に使うだろう。
けれどTOHOシネマズにあるような、ずらっと発券機が並ぶクールな風景をイメージして行ったら、テーブルにぽんと2台発券機が並べてあるだけ。選挙の日、近所の体育館に行ったら仮設っぽく投票所がしつらえてある感じに似ており、シンプルなルックスにたいへん和みました。
「ロスト・イン・パリ」、夏の終わりに観るのにぴったりの映画!
郵便あれこれ

ここのところ、手紙を何通も書いた。残念ながら、手紙を添えて宅急便を送るというケースばかりで、切手を貼ることはなかった。手紙の楽しみの何割かは、切手を選んで貼ることにあると思う。最近、定形外さらに規格外の郵便料金がしれっと大幅値上がりし、重さ厚さのあるものは、宅急便の方が安いというケースも増えたように思う。切手を貼る機会が減って寂しい。ペンギン切手、貼りたくてウズウズしているのに。
郵便好きなので、映画を観ていて郵便局が登場すると、仕組み、切手、やりとり等、隅々までチェックする。最近だとアニエス・ヴァルダ「幸福」に印象的な郵便局シーンがあった。「幸福」は家族の物語でも、不倫の物語でもあり、家庭を持つ男の不倫相手が郵便局で働いている。ウキウキと郵便局にやってきた男が、電報用の用紙に、P T T P T TとリズミカルにP T Tを繰り返し書き、それは窓口にいる女へのラブレターで、P T Tから始まる単語を羅列した言葉遊び。アニエス・ヴァルダらしい凝った仕掛けで、よくこんなの思いついたね!と膝を打つP T Tを駆使した愛の言葉が綴られる。滑らかに単語を配置していく男は、郵便局に向かいながら、頭の中でいろんな単語をニヤニヤこねくりまわしたんだろうな…。
郵便局、電報、惹かれ合う男女…の設定で同時に思い出したのは、小津の「浮草」。旅芸人の一座にいる若尾文子が訪れた町で、郵便局で働く川口浩と出会う。浩に最も似合う職業は「たいして仕事はしていない御曹司」で決まりだけれど、郵便好き補正がかかって、素朴な郵便局員の浩もなかなか。電報用紙を受け取った若尾文子が「ソコマデキテクダサイ」と書き、浩に渡し、「宛名は?」と聞かれて「あんたや」って関西弁で…!これ、ベストオブ郵便局シーンじゃないだろうか。さらにベストオブあんたやシーンでもある。あんたや…あんたや…(練習)。
気をとりなおして。郵便好きな私は、日本郵便のサイトも定期的に覗き、切手の発行スケジュールを手帳にメモしたり、その他知らない郵便知識の修得に努めている。とりわけ好きなのが「お手紙文例集(レターなび)」!特に「プライベート」のカテゴリー、読み応えある。
http://www.post.japanpost.jp/navi/private/i-priv-a.html
「縁談・恋愛(往診、返信)文例一覧」なんてドラマの宝庫です。例えば「見合いの相手からの結婚の申し込み断り」。
お手紙拝見しました。あなたが私を思ってくださる気持ちとてもうれしいです。私のようなものをそこまで思ってくださって、本当にありがとうございます。
でも、ごめんなさい。あなたが思ってくださるようには、私はあなたのことを思えないのです。とても心の優しいすばらしい方だと思います。けれど、今は仕事がおもしろく、まだあなたとの結婚はどうしても考えられないのです。おそらくこの気持ちは、この先ずっとおつき合いを続けたとしても変わらないと思います。
私がもっと早い段階で結論を出していればよかったのかもしれません。許してください。もうお会いしないほうがいいと思います。
今まで本当にありがとう、そしてごめんなさい。
なんて汎用性の高い文例なの。あらゆるケースに適応できそう。このページ、日本のどこかで誰かが検索して探し出し、当該シチュエーションに至った時、この文例は参考にされているのだろうか。
あと、「忠告・助言 文例一覧」もなかなか味わい深い。
http://www.post.japanpost.jp/navi/private/i-priv-p.html
「妻に苦労をかける夫へ(夫に苦労をかける妻へ)」の文例。
○○にどうしても言いたいことがあってペンをとりました。
これまで○○はビジネスマンとしてよく頑張っていると、いつも感心してきました。弟ながら、お手本にしなくてはと思ってきたほどです。
ところが、聞くところによると最近は毎晩酒を飲んでの午前様だそうではありませんか。**さんはさんざん悩んだ末、思い余って私に相談されたのです。あなたはまぎれもなく**さんの夫で、●●くんのお父さんなのです。自分の立場をしっかり自覚して、大切な家族を泣かせるようなことを慎むべきではないでしょうか。
差し出がましいとは思いますが、あなたたち夫婦のことが心配なのです。何か悩みがあるなら相談にのりますから、いつでも連絡してください。
妻から夫に、夫から妻に直談判の手紙かと思えば、おそらく妻から相談された義弟が、夫(兄)に苦言を呈すというややこしい設定。21世紀、こんなのが「手紙で」「弟から」届いた日には、内容証明並みに恐ろしいかも。
はっ!こんなに長い日記を書くつもりはなかったのに、郵便のこととなると。そして現実逃避甚だしい。異国に行くたびに、その国の郵便局に行き、郵便局のサイトもチェックするけれど、こんな文例集は日本郵便のサイトでしか発見しておらず、日本郵便の個性と呼ばずして何と呼びましょう。こんなドラマティックな文面を考え、サイトにアップしている人がどこかにいるという事実だけで、郵便愛は深まる一方だし、同時に狂気もちょっと感じます。
Tampopo

登山のむくみは1週間ほどで抜け、東京は涼しく、むくみの解消と同時に夏が終わった気分でいる。台北から戻って以降、心が夏バテ気味だったけれど、この週末でずいぶん回復。今週何度かカレーを摂取したからだと思う。カレーは薬。カレーのおかげで、私のところで滞留していた28がらみのあれこれも、ようやく進められそう。センキュー、カレー。
去年、アメリカで「Tampopo 4K」、伊丹十三「タンポポ」4KリマスタがまずNYで上映され、その後LAでご覧になったりえこさんのインスタで知り、ポスターのビジュアルが素敵!とコメントしたら、カードをLAから送っていただいた。わー!この絵だけで、もう面白い映画に違いないってムード漂ってる!日本に4K画質で帰国しておくれよ…と思っていたら、日劇で一夜限りの上映があったと知ったけれど、情報を取れず。日劇の大きなスクリーンで久しぶりの「タンポポ」観たかったな…。小さい頃、テレビでよく放映されていた印象で、エロティックな表現があるからお茶の間で観るとちょっと気まずくて、たぶん映画館で観たことはない。
伊丹十三記念館の記念館便りを読んでいると、「タンポポ、ニューヨークへ行く」というドキュメンタリーも存在することを知った。
http://itami-kinenkan.jp/tayori/2017/02/
詳しくはこちら
http://www.tvu.co.jp/program/tampopo_201701/
わぁ、これは是非観たい。BSっぽいものに加入した経験がないけれど、そろそろ加入を検討すべきか。番組単位で有料で良いからweb配信で観られると一番助かるのだけれど。むくむくと興味が湧いてきて、かつてちょっとだけ歩いた伊丹道をまた歩き始めたところ。
手元からすりぬける

不注意というわけでもないのに、手元からすりぬけていく本ってありませんか。私にとっては伊丹十三の本がまさにそれで、エッセイもメイキング本もたくさん持っていたはずなのに、あずささんの原稿を読み、久しぶりに伊丹本を読んでみようかな…と探しても一冊もなくて愕然。様々な方法で手元からすりぬけて行ったように記憶しているけれど、印象深いのは「ヨーロッパ退屈日記」。ちょうど10年前の夏、そう、あの年の夏も涼しかった…(遠い目)…。ヘルシンキ中央駅から、

こんな電車に乗ってフィンランドの地方都市へ。物価が高く、電車代も高かったな。

こんな座席で移動がてら「ヨーロッパ退屈日記」を読んだり、ぼんやりしたりを繰り返し、駅に着き、気がつけば本を失くしていた。座席に置き忘れたのか、ペットボトルを捨てる時にゴミ箱に入れてしまったのか…。

ムーミンのパッケージに反応して、普段飲まない砂糖入りのものすごい色の甘ったるい飲み物を飲んだせいかもしれない。慣れないことはするものではない。けれど暇つぶし用に持参した「ヨーロッパ退屈日記」をヨーロッパで失くした、というエピソード、ちょっと気に入って、それから買い直していない。そろそろ再読しようかな。
それから古書店で状態の良いものを手に入れてホクホクしていた「フランス料理を私と」は、伊丹十三がフランス料理を作り客人をもてなす内容。蓮實重彦と岸恵子が客人で小津の話をする回があり、これは「会食のメンバーに加わりたくはないけれど、同じ店の会話の聞こえる席には存在して聞き耳をたてたい」シチュエーションランキング上位に入るキャスティング!再読したいけれど、人に貸したままになっている。手元にある方、これを読んだら、どうぞご返却されたし。
【本日更新】Cinema on the planet 005 松山旅行記・前編 伊丹十三記念館

残暑お見舞い申し上げます。本日更新しました。
「映画にまつわる場所」を巡るリレー連載Cinema on the planet第5回は、グラフィックデザイナー川畑あずささんの松山旅行記。前編は伊丹十三記念館をたっぷりご案内いただきます。
映画をきっかけに知り、エッセイを読み、マルチな活動に触れ、会いたい気持ちが高まって、ついについにはるばる会いに行った大好きな”おじさん”!あずささんのワクワク、ドキドキが伝わってくる大充実の内容です。記念館の素晴らしい建築も”イタミスト”の中村好文さんによるもの。「好き」のエネルギーって改めて、強くて尊いのですね。伊丹作品を総復習して、私も早く行かなきゃ。世界中の伊丹ファンにもこの記事片手に松山に向かってもらえたら嬉しいなぁ。
取材にご協力いただきました伊丹十三記念館の皆さまに御礼申し上げます。
*企画展は2017年5月時点のもの。収蔵庫ツアーは毎年、開館記念日の頃に開催されます。写真は許可を得て撮影していますので、これから訪問される方はご注意くださいね。最新情報は記念館サイトをチェック!
それではどうぞ、お楽しみください!
「幸福」と装い

映画と服飾について、私が読んだ限り一番の名著は秦早穂子さんの「スクリーン・モードと女優たち」(1973年/文化出版局)で決まり。ヌーヴェルヴァーグを日本に紹介した人だから、映画と服飾の切り口で書かれた文章でよく登場しがちな映画に加え、秦さんならではの視点から映画がピックアップされており、アニエス・ヴァルダ「幸福」も見開き2ページで取り上げられているのが最高。
そうそう「幸福」、装いが印象に残る映画だった。秦さんの文章は、シニカルな展開の隙間に”しあわせ”とは何か?の問いをこれでもかと投げつける物語とは裏腹に、労働者階級の市井の人々の暮らしとさりげない装いが一瞬の美しさを見せる3つのシーンを解説しながら、
“しあわせ”とはなんなのだ。それではすでに理屈になってしまう。前にあげた暮らしと装いのからんだ、三つのシーンをとりあげたほうがその答は、漠然とではあるが逆に出てくるのではないだろうか。”しあわせ”は、理づめで追求しても姿をみせてくれない。アニエス・ヴァルダのいいたかったこともそこにある。
と結ばれているけれど、公開時も現在も、上映のたびに物議を醸すであろうこの映画の、登場人物の暮らしと装いこそ、”しあわせ”の恐ろしく暗い面を映し出しているようで、私は彼らの装いが怖かった。愛人同士だった頃にはそれぞれの装いをしているのに、家族の形を纏い始めた途端、徐々に郊外のショッピングモールに並ぶ、そこに行けば家族みんなの洋服が同時に揃うような量産型カジュアルブランドの広告のように、家族のメンバーが他の家族の装いとも完璧にバランスを取る配慮を見せながら、作り物の幸福感を演出すべく変化していく。
シニカルさがタイトルにも装いにもあらわれた見応えのある映画。なかなか上映されないので、久しぶりに映画館で観られてホッとしている。「幸福」には他にも好きな(と言っていいのか)場面が山ほどあって、思いついたらまた書きます。
http://www.zaziefilms.com/demy-varda/
cinema memo : ELLE

近所の夜の動物シリーズ。飴細工屋のウィンドウにいたペンギン。肌寒くって長袖のパジャマを引っ張り出した。膝下の痛みむくみは今日も完全には治らず。
観たい映画リストを見終わらないうちに(山に登ったりしているからだけれど…)、秋の足音が聞こえてくる…。ずいぶん先だと思っていた「ELLE」の公開が来週だなんて。
観る前に読むのが正しいのか知らないけれど、こちらの監督インタビューが読み応えあり、朝の電車で半分まで読んだ。書き出しの「湊かなえ原作映画に代表される、ほぼ全ての日本のサスペンス映画に見られる犯人は過去の出来事にトラウマを抱えていたというオチからは全く無縁の、ただそこに彼女( ELLE )の物語が展開するという怪作です」の一文で映画にますます興味が湧いておる。
http://www.webdice.jp/dice/detail/5456/
去年、早稲田松竹で「ディストラクション・ベイビーズ」と「ヒメアノ〜ル」のハイカロリーな2本立てを観た時、主人公の悲しい過去が物語の途中で何度もチラチラ提示され、彼の暴力にはそれに至る理由があると匂わされ、面白いけれど「ヒメアノ〜ル」はさほど好みではないな、と思ったことを思い出した。その点「ディストラクション・ベイビーズ」は、土からにょきっと生えてきたような理由なき暴力が描かれ、湿り気のなさが好みだった。日本映画に珍しいといえば珍しいのかもしれない。
「ELLE」、俄然楽しみだなぁ。
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