今年観た映画

初冬の資生堂パーラー、頬を指す寒さにピリッと輝くネオン。
映画祭シーズンも過ぎ、28の企画のために今年観た映画を振り返る。観た映画をメモしていないけれど(手帳を辿ればリスト化できるはず…)、近年稀にみる鑑賞本数の少なさだったはず。その理由は、映画のサイトを運営するために映画を観る時間が削られる、というなんとも言えないパラドクスがあったにせよ、限られた時間、渾身の選択の結果、選んだ1本だからこその満足度の高さもあった。
しかし、年を重ねたせいなのか何なのか、重苦しい映画って年々、受け付けなくなってくるのね。自我を静かに見つめるような映画より、よくできたフィクションに救われる瞬間がたくさんあった。と言っても、まだ12月は始まったばかり。
気がつけば「グッドタイム」を逃していた。もはや栃木と沖縄でしかかかっていない。どうすればいいの…。
http://www.finefilms.co.jp/goodtime/
怖い絵展

お休みをとっていたので、夕方まであれこれ片付け、twitterで混雑状況を確認しながら18時前到着目指して上野まで散歩。大混雑の「怖い絵展」を観てきた。週末には入場に3時間待ちという人気。
月曜の中途半端な時間帯(主婦には遅く、勤め人には早い)を狙ったので、待ち時間10分ほどで入場。中は混んでいたけれど、絵を観られないほどではなかった。
恐怖を感じさせる絵を切り口に、宗教や歴史、風俗など、知っていた方が鑑賞の手助けになるキャプションがすべての絵につき、興味をそそるようなわかりやすくキャッチーなコピーも要所要所についている。
とても親切な展示で、だから人気なのだろうし、混雑した館内でキャプションをじっと読む人が大勢いるから、人の動きはゆっくりで滞留しがち。願わくば、ガラガラに空いた妖しい古城のような場所でのんびり観たいものだと思ったけれど、それなりに堪能。メインビジュアルになっている「レディ・ジェーン・グレイ
私が特に好きだったのは、最初の部屋にあった「ディアナとエンデュミオン」。女神ディアナが美しい羊飼いエンデュミオンに恋をし、死なせずに美しさを保つために永遠の眠りにつかせ、眠る羊飼いのもとを毎晩訪ね、抱きしめる、という絵。
美しい羊飼いと聞くと反射的にエリック・ロメール遺作「我が至上の愛 アストレとセラドン」を思い出すのだけれど、この映画、オノレ・デュルフェの小説「アストレ」を原作とし、パリの御婦人たちの間で大流行した物語というエピソードを公開時にあれこれ読んだ際のインプットで知ったので、そこから妄想が広がり、美しい羊飼い=退屈と富を持て余した優雅なマダムたちの崇拝と妄想の対象(性的妄想含む)という変なイメージがこびりついてしまい(史実はよく知りません)、美しい羊飼いというワードを見るだけで、往年のアイドルの姿を見たような、あなたですか、噂の男は!という気分になってしまうのは困ったものですね。
「ディアナとエンデュミオン」、怖いというより、ロマンティックな1枚だった。それから「死と乙女」をモチーフにした、骸骨と裸体の女が抱き合っているシンプルな素描のような作品があり、素敵だった。下の余白部分に髑髏の試し書きが残っているのを見逃さなかった。現実はつらいよコーナー(意訳)にあった若い美しい女が都会にやってきて→娼婦に→投獄→感化院→出所→梅毒→死という一連の物語の挿絵として使われた細かい描きこみのシリーズ、溝口の「西鶴一代女」みたいな生き抜くための選択肢が少ない時代の女の悲劇である。
混んでいて頭が朦朧としていたけれど、振り返ってみると恐怖や辛い現実というより、今日はロマンティックさを探したい気分だったのかもしれない。

帰り道、上野公園の秋。銀杏の絨毯に何故か自由の女神の胸像があり、ここもまた異界であった。上野公園、夜はちゃんとそれなりに暗いのが気に入っている。
怖い絵展、12/17まで。混雑状況は公式twitterでリサーチ推奨です。
エモーション

昨日、市川準監督特集で観た「大阪物語」は、ヒロイン(池脇千鶴!)の両親を沢田研二、田中裕子が演じていて職業は漫才師という物語だから、「親の仕事場」としてのなんばグランド花月が映る。いかにも舞台裏という名前が似合うあの雑多な舞台裏も、なんばグランド花月でロケしたんだろうか。ミヤコ蝶々も登場し、大阪の魅力はよくわからんへんけど、まぁ、うどんがおいしいことだけは確かやな。ってセリフがあって、大阪のこってりしたエリア出身だった祖母を自動的に思い出す。祖母は年越しに蕎麦を食べるのを嫌がり、一人だけ年越しうどんを食べる程度に大阪の女であった。
そんなエモーションを引きずったまま夜、M-1を観ていると、ジャルジャルの登場から退場までの一連の流れがどうしようもなく映画的で、「お前…よう今ボケれんなぁ」のひとことなんて、テレビをつけたつもりだったけれど、あれは犬童一心の書いたセリフで、これは市川準の映画かしらと思うほどに、「大阪物語」の続きだった。優勝できなかったけれど、明日、関西じゅうの学校の休み時間、みんなあのネタの真似、盛大にすると思う。
Best 番組of the year

終日、目黒にいた土曜日。
目黒シネマで始まった市川準監督特集、4年目だそうです。今日は「大阪物語」「つぐみ」の2本立て。「つぐみ」の後には、牧瀬里穂さんのトークが!まだ今年は終わってないけれど、勇み足でBest 番組 of the year、謹んで贈呈。これ以上強い2本立てなんてあるかしら。
12/6(水)もこの2本立てとのことです。
http://www.okura-movie.co.jp/meguro_cinema/now_showing.html
「つぐみ」の余韻の中で登場した牧瀬さんも素敵で、しばらく浸っていたい。すぐに言葉にならない。
みなみ会館

京都みなみ会館、閉館のニュースにショックを受けている。
http://kyoto-minamikaikan.jp/archives/35413
初めてのカラックスも、初めてのジュリエット・ビノシュも、初めてのゴダールも、初めての活弁つき上映も、初めての市川雷蔵も、初めての大映映画も、全部みなみ会館で経験した。間違いなく自分の何割かが作られた場所。
2015年の春、京都に行って、夜に思い立って、みなみ会館で「恐怖分子」のリバイバルを観た時の写真。

右端の「カップルズ」、封切りの時にここで観たなぁ。マチュー・カソヴィッツ「憎しみ」と2本立てだった。学生のいいところは時間がたっぷりあることで、その前に「恋愛時代」を観ていた私が「カップルズ」を観たいとふらっと喋ったら、友達が、それ何、観る観るってついてきて一緒に観たのだった。みんな暇だから。「憎しみ」は観るの結構辛かったけれど、何の前知識がなくても「カップルズ」、めっちゃええ映画やったわぁぁって友達も興奮して、きゃいきゃい言いながら東寺界隈を歩いたのだった。


緞帳の上の刺繍や、

当たり前だけれど、トイレに向かう通路脇にソファが置かれているの、ソファ自体は変わっていたけれど(もっとベコベコのソファだった)、配置は変わってなくて、ずいぶん久しぶりだったけれど、体が上映前、上映後の動線をしっかり覚えていたのが可笑しい。
私が通っていた頃は、1階のパチンコ屋はまだ営業していて、静かな映画を観ていると、階下のパチンコのジャンジャンバリバリ音が漏れて響いていた。おおらかな時代…。
移転したとしても、もうこの景色じゃないんだなぁ。なんて考えていると、「ヤンヤン 夏の想い出」のラストシーンのように「僕も年をとった」って言いたい気分。我也老了。
秋のフレーム

電気を点ける前の会議室、眺めが絵画。東京は秋。終わろうとしているけれど。映画祭やら仕事やらで屋内ばかりにいるうちに、季節が進むスピードについていけなくなっておる。
秋、どう撮っても美しい季節だし、秋の映画ってたくさんあるでしょう。と思い出そうとしたけれど、パッと思いついたのはアニエス・ヴァルダ「幸福」のラストシーンだけであった。他にもっと秋の美しさを捉えた映画はたくさんあるだろうに、あの映画のあの場面のうすら怖さがその他の映画記憶を上書きした。
この芥子色のニットの秋!
映画祭が終われば落ち着いて文字が書けるかと思ったおったが、それは甘い考えというものだった。週末からペースを取り戻したい。
本棚

りえこさんからいただいた、LAでの台湾ニューシネマ特集のポストカードサイズのチラシが素敵で、本棚の中華圏ゾーンに飾る。北京や台北で買った本もいくつか。台湾ニューシネマのビジュアル、どの国、どの言語でもセピアがかったノスタルジックなデザインになる傾向にあるのが面白い。
ついでに、映画本が増えたので並べ替え。本好きの人には、本だけは治外法権的に増殖することを諦めまじりに許可する、という人も多いけれど、私は収容場所の上限をあらかじめ決め、溢れるものは処分していくタイプである。ごく稀に後悔するけれど、それよりも自分にとってフレッシュなものだけ選んで所有することの気持ち良さが勝る。
夏から続けている持ち物の整理、このところ気分が加速し、段ボール数箱単位で毎週部屋から物が消えてゆく。いま6合目あたり。年内には終わらないので、旧正月までに10合目に到達したいところ。
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